ひとごろしの恋人
※こいびとのために頑張るふたりのはなし
※人が軽々と死ぬ
※作者の二次アカウントで勢いのまま投げた一次SSの加筆修正版
あの日、扉を開けた時に見えたのは、しーくんを殴ろうとする父さんだった。
瞬きをした次の時には、しーくんが血まみれのバットを持っていた。
「はるちゃん」
途方にくれたように私を呼ぶしーくんの後ろでは桜が咲き始めていた。
それが父に関する1番鮮明な思い出。
しーくんはあの時から壊れたまま私を大事にしてくれている。私としーくんは共犯者で仲間で恋人になっていた。
──思い出の親を毒親だとラベリングできたのはいつ頃だっただろう。いつもお金がほしい私の父と父を雇ってしーくんをいたぶらせてたしーくんのお父さん。それを見て一緒に笑ってたしーくんのお母さん。私を盾にしてれば父に殴られないことを学習していた母。
もうみんないないけど。
私の父が死んだあと、しーくんは吹っ切れたようにあとの3人を殺した。中学生のときだった。
そ の3つの死体を私のところに持ってきて父の死体と一緒に2人で解体した。髪の毛は溶けないからって全部バリカンで刈った。羽毛布団の中に詰めたらただの古い布団のごみで出せた。それから肉や臓器の部分は溶かしたり、骨を砕いたりしているうちに春休みが終わった。一人で過ごすことが多かった私たちは幸い、お金の在り処も使い方も知っていたから高校生にはすんなり慣れたのはラッキーだったねと笑い合う冬。
高校生になったら危ないところでアルバイトもするようになった。しーくんが人を簡単に殺すようになったのもこの頃だ。いや逆か。人を簡単に殺せるから危ない仕事ができるようになった。
そこまで開き直った切っ掛けは私。
男の子のしーくんはともかく、流行りのおしゃれをするような余裕もなく最低限清潔にすることしかできなかった私は真面目ちゃんぶってるということでイジメの標的になっていた。もっともその首謀者の女の子は直ぐに行方不明になったし、それがしーくんだってわかったけど。
それを聞いてから尋ねると案の定、しーくんのお部屋にはゴルフバッグに詰め込まれた女の子がいた。
「はるちゃんに酷いことをするやつをみーんな殺したら、幸せになれるかな」
「じゃあ私はしーくんにひどいことするやつをみんな殺すね、それで幸せになれるよ」
くふくふ笑って手をつなぐ。
あの日父を殺したのは私だった。
その感触に恐怖してめまいがして、取り落とした凶器をしーくんが拾ってそのままほかの三人を殺した。
私たちはもしかすると、お互い以外を殺して安心するような性質になってしまったのかもしれない。
そんな私の目にだって、今日も、あの時も、月はきれいだ。
しーくんが隣にいてくれるなら、ずっと、きれいだ。
いつかしーくんは逮捕されそうになって、離れ離れになりたくないからはるちゃんに凶器をつきつける。しーくんがいないと生きていける気がしないはるちゃんは受け入れて、苦しくないように毒を飲んで死ぬ。
向日葵が憐れむように俯く季節。二人は幸せなキスをして心中。