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Vol.9 【正月】

季節とか年数とか飛び飛びでお送りしています。

今回は娘の水菜緒ちゃん視点でお正月シーンです。

喫茶店はまだ開店1年~2年目といった所です。

1月1日。

おはようございます。水菜緒です。

今日は朝から家族みんなで近所の神社に初詣に来ています。

喫茶店を始めてから、みんなでお出かけってほとんどないから、今日はとっても素敵な一日です。

うちの近所の神社は、特別有名って訳でもないので、テレビで放送されているような人混みとは無縁です。

お陰でゆっくりと歩けるし、お父さんお母さんと手を繋いで歩いても大丈夫です。


「水菜緒も大きくなったとはいえ、まだまだ甘えん坊だね」

「いいの。お父さんもお母さんも大好きなんだから」

「ええ。お母さんも水菜緒の事が大好きよ」


そう言って笑いかけてくれるお母さん。

お父さんも優しく頭を撫でてくれます。

そしてお賽銭。

用意していた5円玉をぎゅっと握ってからお賽銭箱に入れます。

テレビとかだと良く投げ入れてるけど、神様だってカンカンジャラジャラうるさくされると嫌かなって思うの。

お父さんも「感謝を込めて、差し上げる気持ちで優しくお渡しするんだよ」って教えてくれた。


ことんっ。

パンっパンっ。


(今年も家族みんなが元気に笑顔で幸せに暮らせますように。

テストで一番が取れますように。

あとは、お年玉がいっぱい貰えますように)


隣をちらっと見ると、ちょうどお父さんも顔をあげた所だった。

お父さんは神様に何をお願いしていたんだろう。

帰り道で聞いてみようかな。


「ねぇ、お父さん。お父さんは神様に何をお願いしたの?」


そう聞くと、ぽんぽんって頭を撫でてくれました。


「私は神様にお願いはしていないよ」

「ふぇ?今日って神様にお願いをする日じゃないの?」

「ああ。それも悪くないね。

でも私がお願いしたいこと、お母さんや水奈緒が元気で居られますようにっていうのは、ふたりがお願いしているだろう?

だから私は、去年一年間無事に過ごせた事の感謝と、今年一年の誓いを神様にお伝えしていたんだよ」

「誓い?」

「そうだよ。例えば、家族を毎日笑顔にすることや、喫茶店を繁盛させることだね。

それらは私の力で何とかするもので、神様におんぶにだっこで叶えて貰うのは違うと思うんだ。

神様だってお願いに来た人全員を背負うのは大変だろうしね」


そう言って笑うお父さんを見ると、自分のお願い事がすごいちっぽけな事に思えてきた。

あんなお願いするんじゃなかったかな。

はぁ~、と俯く私の頭をお母さんがやさしく撫でてくれた。


「水菜緒。水菜緒は、いっぱいいっぱい神様にお願いしちゃっていいのよ」

「え、いいの?だって」

「大丈夫よ。だって、私もお父さんも水菜緒に頼りにしてもらえたら嬉しいもの。

神様だって笑顔で聞いてくださっているわ」

「うん♪」



そうして家に帰って、居間に集合。お母さんがお茶を準備してくれるので手伝います。

手伝いながらも私はうきうきそわそわしています。

そう、何を隠そう、初詣から帰ってきたらお年玉タイムなんです。

今年は幾らもらえるんだろう。

そう思っていた所にお父さんからの一言が降りかかりました。


「水菜緒。お楽しみの所、悪いのだけど、今年のお年玉はありません」

「ええぇ~~!!」


そんなぁ。

神様にあんなお願いをしたから罰が当たったの?

あーでも、喫茶店もまだまだ大変みたいだから仕方ないのかも。

うん、しょうがないよね。お父さんいつも頑張ってるし、わがまま言っちゃダメだよね。

って、あれ?いつもにこにこしてるお父さんがちょっぴり真面目な顔をしてる?


「さて水菜緒。お年玉の代わりではないけれど、これを受け取って貰えるかい?」


差し出されたのは、お年玉の可愛い袋ではなく、よくお手紙が入っているような茶封筒。

表には「蓮川 水菜緒様」って筆ペンで書いてある。

受け取って封を切って中身を確認する。


「あっ」


これって、1万円札!?

それが2枚も入ってる。どういうこと??


「お父さん、これは何?」

「水菜緒は去年1年間、喫茶店を一生懸命手伝ってくれただろう。

だからその分のお給料だよ」

「お給料……」

「本当はね、もっと高額でも良いんじゃないかって思っていたんだ。

でも、あまり大金を渡しても困るだろうってことで、残りはお母さん銀行に預けてあるから」

「お給料……」


封筒を持つ手が震えちゃう。

だって、お給料って大人の人が働いて手に入れるもので、だからつまり、私、お父さんの役に立てた?

気が付けばお父さんにぎゅっとしがみ付いていた。

そんな私を、お父さんはまた優しく撫でてくれる。


「去年は水菜緒のお陰でとっても助かったよ。ありがとう」

「うんっ、うん!私、もっともっと頑張るね」


そう言う私をお父さんとお母さんがやさしく抱きしめてくれた。


ちょっと幼い感じになってしまいました。

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