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楽しい昼休み♪

作者の力量不足で設定や説明がかなりガバカバな部分があると思います。



読んでいて楽しくなるような文章が書けるよう日々模索しています。

よろしくお願いいたします。

 キーンコーンカーンコーン。


 ほとんどの生徒が待ち望んでいるであろう授業の終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響く。


「じゃあ今日はここまで。次までに宿題をやっとくように」

「起立。ありがとうございました」


 4時限目が終わり皆が昼休みに入ろうとした時、体操服姿の熱田が黒板を叩く音が響いた。


「D組に試合(ゲーム)を申し込もうっ!」


 教室にいる皆が黒板の方に注目する。

 熱田の周りには先ほど熱田と一緒に火の玉に吹き飛ばされていたやつらもいる。熱田ほどではないが火の玉を受けたためか所々制服が破けている。


「何でー?」


 鞄から弁当を取り出しながら理由を聞く大江さん。無視をして弁当を食べればいいのに……大江さんは優しいな。


「D組に俺たちの制服の弁償してもらうためだ」

「あほくさ。そんなことで月1の貴重な試合の申請を使うのはあり得ないわ」


 E組学級委員長の栄生さんが聞いて損したと言わんばかりとため息を吐く。

 今のやり取りの中で恐らく普通の高校ではあまり聞き覚えのない単語が出てきたことだろう。


 《私立九象麻(くぞま)高等学校》。この高校は変な校則や制度がある学校だ。

 その中でもこの試合(ゲーム)という制度は九象麻高校の一番の目玉制度だろう。

 試合は各クラスが月に一回だけ使えるクラス同士の対決制度である。

 勝負条件・方法などをクラス代表で相談して決め合い、お互いに納得したら暴力・魔法何でもありで戦うのだ。審判は生徒からお願いをして先生にやっていただく。

 魔族の部分を全面に出して戦える唯一の機会なので大半の生徒はテンションが上がるイベントだ。小学生でいう遠足みたいなのもだ。

 今回の場合は俺たちE組がD組に熱田たちの制服の弁償を条件に試合を申し込もうとしている。

 普段なら何でも面白そうと言って乗ってきてくれるノリの良いE組のみんなだが、熱田の試合提案に女子全員が乗る気ではない。


「何でだよっ! クラスの仲間の制服が焼かれて辱しめを受けたんだぞ」


 青春を謳歌しているD組のカップルを妬んで特攻するのは勝手だが、それだけであそこまで制服をボロボロにするのは可哀想な気がしないでもない。


「…………確かにそこだけ切り取るとD組に試合申請を行っても良いかもしれないわ」


 栄生さんはご飯を食べようとしていた箸を置く。


「でもあなたたちD組の荒木さんの臀部を撫で回したのでしょ」


 これが今回の熱田の試合提案に女子が乗る気でない理由だ。

 もし仮に今、栄生さんが言ったことが事実ならこいつらは最低じゃないか。他クラスの女子の臀部を触るわ、廊下でパンツを晒すわって。

 こんなクズ野郎たちは火の玉を受けて当然だ。治療してしまったことを後悔する。


「撫で回してないっ!」


 栄生さんの発言に熱田が強く否定する。


「あんまりだっ!」

「ストップ風評被害」

「そんなセコいことするわけないないだろう」

「馬鹿にするなーっ!」


 熱田の否定を皮切りに周りの被害者たちも反論する。


「あらそうなの。私の聞いた話だとD組のあるカップルに対して藁人形を見せ脅した後、たまたまその場に居合わせた荒木さんを騙しまくって一人2回は撫で回してたと聞いたわ。それに激怒した半田くんに丸焼きにされたって。これは嘘なのね?」

「ああそれは嘘だ」


 栄生さんの話を熱田ははっきりと否定すると、拳を胸の前に持ってきて教室中に聞こえる大きな声を発した。


「俺たちは荒木のお尻は撫で回してねえ。揉みし抱いたんだっ!」

「死ね」


 この場にいる女子全員の気持ちを栄生さんがシンプルに二文字で表現してくれた。

 クラスの男子でさえ熱田たちは何でこんな堂々としているのだと若干引いている。


「というわけであなたたちの試合提案はボツになったわ」

「そ、そんなぁ」


 完全に孤立してしまった犯罪者予備軍(熱田たち)。話が終わり教室にいつもの明るい昼休みが戻る。

 さてと俺も早くご飯を食べようかな。今日の弁当はコンビニのおにぎりだー。

 鞄からおにぎりを取り出そうとしたその時、この楽しい昼休みの雰囲気を切り裂くかのように扉が勢い良く開けられた。


「失礼するっ!」

「誰だよそんな勢……って半田とあ、荒木っ!」


 昼休みの訪問客を見て慌てる熱田たち。訪問客は今話題の中心人物であるD組の半田くんと荒木さんだ。

 半田くんはD組の委員長で正義感が強く熱い生徒で熱田たちの制服を燃やした張本人だ。

 荒木さんは副委員長で普段から眼鏡をかけておりほんわかした雰囲気を持つ女子だ。


「栄生はいるか?」

「ここにいるけど何かしら?」

「単刀直入に言う。俺たちD組はお前たちE組に試合を申し込むっ!」

「や、止めようよ半田くん。私何にもされてないよ」


 頭に血が上っている様子の半田くんを必死に止めている荒木さんだが、半田くんは止まる気配がない。


「いいや荒木。こいつらはな、荒木のお尻をよってたかっていやらしく触ったんだ」


 黒板前にいる熱田たちを指差す半田くん。熱田たちは突然の指を差され動揺している。


「ち、違うよ。熱田くんたちは私のお尻に虫が付いてたから取ってくれてたんだよ」

「12回もピンポイントに荒木のお尻だけに虫が付くわけないだろっ! 12回なんて…………そんな…………」


 怒りなのかそれとも羨ましいのかわからないが半田くんは拳をわなわなと震わせている。


「と、とにかくっ! 俺たちD組は荒木へのセクハラに対する慰謝料を要求する」

「な、なんだとっ!」


 なんだとじゃないだろう。12回も集団でセクハラしたら普通は警察だぞ。

 むしろ慰謝料で済ませようとしてくれている半田くんに感謝すべきだと思うが、熱田側は納得いかないらしい。


「慰謝料って大袈裟だろ。俺たちはただお尻を揉んだだけで」

「黙れ。それ以上口を開くな。燃やすぞ」


 怖すぎる脅しだな。一学生が使う言葉じゃないぞ。


「半田くん。そんなに強く言うのは……」

「荒木にセクハラしたことは許されることではない。だがしてしまったお前たちの気持ちは理解できないわけではない」


 ん? 何か嫌な予感がするな。止めてくれ半田くん、それ以上口を開かないでくれ。


「E組には荒木のように素晴らしい女子がいないからな」


 俺の予感は見事に的中し、半田くんの発言でクラスの空気が変わった。主に女子側の。

 教室にいた女子生徒のご飯を食べていた箸が一斉に止まる。


「それはどういう意味かな?」


 普段なら雑談飛び交う楽しい昼休みはここにはない。

 いつもは見るだけで元気になる効能があると噂の大江さんの笑顔も今は見ていると胃痛がするほど怖い。


「事実だろう。E組にいるのは荒木より頭が悪い・顔が悪い・性格が悪いの三拍子が揃った女子だけなんだから」

「は、半田くんっ。それは言い過ぎだよ」

「何でだ? 事実だろう」


 半田くん、これ以上火に油を注ぐのは止めるんだ。

 君たちは別のクラスだからいいと思うが、これからあと昼休み明けに2時間一緒の教室で授業を受ける俺たちE組男子の気持ちも察してくれ。


「…………わかったわ受けましょう」

「さすが栄生だ。話が早いな」


 半田くんたちが来てから何も言わず傍観していた我らがE組委員長の栄生さんが口を開いた。


「E組が勝ったらそこにいる6人の制服弁償、D組が勝ったら荒木さんたちへの慰謝料として6カ月間学食を奢ってあげる。…………この条件でいいなら受けるわ」

「わかった。じゃあ勝敗方法は“全滅戦”、勝負は3日後の放課後で良いか?」

「み、三日後っていくら何でも早すぎるだろっ!」

「うるさいぞ熱田。俺はE組の代表の栄生に聞いてるんだ」

「ええ何も問題ないわ」


 こちらが介入する暇もなく、委員長同士の間でトントン拍子で決まっていってしまった。


「じゃあ3日後。それまでに荒木への慰謝料を用意しておいてくれよ」


 そう言い残し半田くんは自分のクラスへと帰って行った。半田くんが帰った後、荒木さんもこちらに申し訳なさそうにお辞儀をして帰っていった。

 まるで嵐のようにやって来て、去っていった半田くんたち。うちを散らかすだけ散らかして帰っていきやがった。


「なあ栄生。どうしていきなりD組との試合を引き受けたんだよ?」


 さっきまで虫けらを見るような目で熱田たちを蔑んでいたのに何故急に試合を引き受けてくれたのかを疑問に感じたようだ。


「なに言ってるの? 同じ仲間の制服が燃やされたのよ。この試合を引き受けるのは当然のことでしょ」

「そうよそうよ」

「だって私たちE組の仲間じゃない」


 試合に乗る気ではなかった女子たちも半田くんの「E組の女子はブスしかいない」発言に心境が変化したようだ。

 たぶんだが熱田たちの制服なんてどうでも良いに違いない。自分たちをナチュラルに侮辱した天然畜生の半田くんを試合で一泡吹かせてやりたいのだろう。

 しかしそんなことを察することもできない熱田は皆の仲間という言葉がよほど嬉しかったのか少し目が潤んでいる。


「みんな…………ありがとう。よっしゃ今回はの試合必ずーー」

「待て。申し訳ないが俺は今回の試合には反対だ。今回は明らかにこっちが悪だろ」


 何水差してんだよっていう目で見てくる熱田だが無視をしていく。

 今回のD組はセクハラ犯達を燃やしただけだ。

 対してE組(うち)は純真無垢な女子生徒を騙してセクハラをし、さらに廊下で登校する生徒に下着を露出するセクハラを重ねた。

 改めて考えてみるとやはり今回はE組(うち)が悪い。試合ではなく、菓子折りをもって謝罪にいくのがベストだろう。


「そうだよね。私もさっきは半田の言葉にムッとなっちゃったけど、考えてみたらやっぱり悪いのは熱田たちだよ」


 どうやら大江さんも反対(こっち)側らしい。さすが大江さん、E組で数少ない常識人だ。


「そんなことないわ」


 大江さんの意見を一蹴する栄生さん。


「そんなことある。こっちは痴漢、D組はそれに対する正当防衛だ」

「こっちも器物破損と侮辱罪をされているわ。ほらD組の方が罪数が多いから悪いわね」

「…………………………確かに」


 あまりにも簡単に納得してしまった大江さん。大江さんは常識人なのだか頭が弱いのだ。

 仕方がない。ここは俺だけでも意見を貫き通すぞ。


「栄生さんだってさっきまで試合はやらないって言ってたじゃないか」

「確かに言ったわ。でもそれは過去の私。人は常に意見を変える生き物よ。あなたは意見を変えたことがないの?」

「それは…………ないことはないけど」

「それと一緒よ。今の私は単純に半田くんをぶっ飛ばしたいだけだから」

「ぶっ飛ばすのも時には必要だと思うが、今回はぶっ飛ばすより菓子折りを持って謝罪が正解だ」

「…………そう」


 ゆっくりと席から立ち上がると俺の方へ足早に歩いてくる。………………ヤバい。

 逃げようと動き始めた時には時すでに遅し。気づけば教室壁際の俺の席にたどり着かれてしまった。


「協力してくれるわよね()()()()


 栄生さんが笑顔でポンっと俺の肩に手を置く。


「お、お願いされても同じだ。今回の俺は悪には屈し痛、いたたたっ。ちょっ肩もげ、肩がもげる」


 肩に置かれている栄生の手の握力が上がっていく。このままいったら肩の一部分が取れてしまう。

 だがこんなことで折れる神宮寺(じんぐうじ)千尋(ちひろ)ではない。


「ぼ、暴力反対」

「この状態でも屈しないのはさすがね」


 そう言うと栄生さんは肩から手を離し、壁の方へと身体を向けた。

 俺の勝ちか? そう思ったのも一瞬の夢であった。

 勢い良く栄生さんが右手を壁に向かって突き出すと、ドンッと大きな音が聞こえ俺の近くの壁に綺麗な手形の穴が空いた。

 これは壁ドン…………なのか? いや、俺の知っている壁ドンにこんな殺傷力はない。

 壁に穴を空けた犯人が目の前で微笑みながら、右手を開いたり閉じたりしている。


「前から気になっていたのだけれど、治癒魔法ってどこまで治療できるのかしら。…………試してみてもいい?」

「前言撤回します。E組のために馬車馬のように働かさせていただきます」

「その言葉を待ってたわ副委員長。他に今回の試合について反対の意見の人はいるかしら?」

「「…………」」


 こんなもの見せられた後に名乗れる訳がない。栄生さんはそれを理解した上で聞いてるのだ。さすがは我らがE組委員長…………お手上げだ(肩が痛くて手が上がらないが)。


「じゃあ早速だけど神宮寺くん。今日の放課後、試合申請書を二川先生に提出しに行くから」

「了解した」


 俺の返事を聞くと栄生さんは何事もなかったかのように平然と自分の席へと戻ると食事を再開した。

 残り少ない昼休みの時間で俺は両肩戦闘不能状態で弁当食べられるだろうか。


読んでいただき本当にありがとうございます。



誤字・脱字があったら申し訳ありません。



これからも日々努力していきます。



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