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勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第一章 何でもありの異世界
9/100

9.エンドレス・ループ

「……死ぬって、ま、まさか体力ゼロのことじゃないよな?」


 青ざめたモモコは、やっとの思いで声に出す。


「体力がなくなっても死ぬことはない。

 死ぬとは、生命を絶たれること」


「剣とか魔法の攻撃で、体力がなくなってバタンキュー、はい、ゲイムオーバー、ってことを言ってるかと思った」


「違う。敵の攻撃で、本当に殺されることだ。

 ただし、最後のセーブポイントに戻るから、結果的に生き返るが」


「質問」


「何だ?」


「もし、戦う直前でセーブして、その後すぐに死んだら、セーブしたところから復活するよな?」


「もちろん」


「そこでまた、すぐ死んだら?」


「エンドレス・ループになるな。

 そこから抜け出るには、勝つしかない」


「マジですか……」


 モモコは、力が抜けたようにしゃがみ込んだ。



 ここで、アンベールが挙手をして一歩前に出た。


「もし、敵もセーブポイントを持っていて、その敵が死んだら、セーブポイントから再開するわよね?

 すると、今度は、こちらが死ぬかも知れない。

 これって、ループにならない?」


「素晴らしい! 良い質問だ!」


 アルバンは、パンパンと手を叩きながら何度も(うなず)く。


「ずっと黙っているから、もしかして何も理解できないほど知力が低いと思っていたが、よく気づいたな」


「誰でも気づくわよ」


 そう言ってアンベールは、感心して見上げるモモコを(いち)(べつ)する。



「実は、セーブポイントを持っている者は、ミッションを与えられた者しかいない。

 そのミッションは、この世界では一人、もしくは、一組の人物しか与えられないのだ」


「なら、セーブポイントに戻るという、時間の逆戻りができるのは、そのミッションを与えられた者のみ?」


「左様。だから、先ほどのループは起こらない」


「そうなると、ミッションを与えられていない者が死ぬと?」


「永遠に死ぬ」


「……」


「そう言う意味で、お前たちは、この世界で最強なのだ」


 アルバンは、アンベールとモモコを順に指さした。



「じゃあ、もう一つ質問」


 アンベールは、再び挙手をした。


「今度は何だ?」


「ミッションがコンプリートしたら、どうなるの?

 つまり、魔王討伐が完了したら」


「お前たちの願いを一つ叶えてやる。

 ただし、二人いても一つだ」


 アンベールは、まだしゃがみ込んだままのモモコと目で会話をした。


 そして、アルバンに向き直る。


「この体を元に戻して、元の世界に返して」


「体を戻すとは?」


「私たち、体が入れ替わっているの。それを元に戻すということ」


「……どおりで言葉遣いがおかしいと思ったら、そういうことだったのか」


「そうなの」


「言っておくが、願いは一つだけだ」


「ということは?」


「体を入れ替えてここに(とど)まるか、今のままで元の世界に戻るか、どちらかを選べ」



 アンベールは、急いでモモコの方を向き、再び目で会話をする。


 それから、ゆっくりと顔を上げて、アルバンと目を合わせた。


「結論は、魔王討伐後でもいい?」


「まあ、それでもよかろう」


 アルバンは、二度(うなず)いた。


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