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勇者モモコと魔法少女アンベールのぼうけん  作者: s_stein
第一章 何でもありの異世界

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7.ゲーム開始

『>アンベールが勇者になりました』


『>モモコが魔法使いになりました』


 全身の光が消えた二人の前に、ピロローンという電子音とともに、ゲームに出てくるような半透明の画面が現れ、それぞれ上記のメッセージが表示された。



「ねえ、何これ?」


「ああん?」


 アンベールの声に、しゃがんでうつむいていたモモコが顔を上げる。


「これ……日本語じゃん!

 しかも、この表示、ゲームっぽい。

 おい、アルバン! これ、何だよ!?」


「ん? これは、ミッション中に表示される画面だ。

 ステイタスが変わったときに自動的に表示されるだけではなく、

 表示を念じれば、いつでも表示される」


「――てか、これが日本語」


「違う。これはディフェリタ語だ」


「日本語!」


「ディフェリタ語!」


「うーん、ぶっかけ丼だな」


「女、いや、モモコ。それは何だ?」


「それを言うなら水掛け論よ」


「ミズカケロン? 男、いや、アンベール。それは何だ?」


「なんか、文字と言葉は同じでも、単語は知らないみたいね」



 三人が言い合っているうちに、二人の前で表示されていた半透明の画面が消えた。


 モモコが、左手で頭をゴシゴシと掻き始める。


「……なあ。もしかして、俺たち、夢を見ているのかなぁ?

 さっき、二人でベッドの上にいたし」


 そう言ってモモコが下からアンベールの顔を覗き込むと、アンベールは目を見開いて頬を赤く染めた。


「あ、あれはそう言う意味じゃないから!」


「わかってるって。

 それにしても、絶対これ、ゲームだよ。

 ゲームの世界に飛び込んだんかなぁ……?

 でも、……こんな景色もディフェリタ国なんていうのも、聞いたことないし」


「ゲームという言葉は知らないが、ゲイムという言葉ならある」


「ある!? やっぱり!?」


「ゲイムは、ミッションと同義語だが、ミッションより遊びの要素が近い言葉だ」


「認めたも同然だよ、このガキ、いや、アルバン」


「ガキではない! 聖職者だ!」


「ガキって言葉はあるんだ……」



「いずれにしても、さっさと、魔王討伐に出発せよ。

 時間はないぞ」


「ちょっとさあ、俺たち、腹減ったし、資金はくれるのか?」


「資金? そんなものはない」


「魔王討伐を頼んでおいて、前金はないのか!?」


「持ち逃げされると困るから、渡さない」


「ケチ!」


「まずは、信用を勝ち取れ」



「なら、開拓民から始められないかなぁ」


 アンベールが慌てて、モモコの肩を押さえる。


「ちょっと! ここで腰を据える気!?」


「俺だって、元の世界に戻りたいけど無理そうだし、無一文じゃ(いくさ)も出来ないし」


「何? ミッションを2つともこなしたいと?」


 アルバンが、左手を顎に当てて考え始めた。


「いやいや、そうじゃなくて、資金が欲しいだけ。

 まさか、勇者が盗賊をやれ、ってことはないよな? アルバンさんよ?」


「まあ、それもお前たちの選択肢の一つだったが」


「いやいや、それは駄目でしょ!

 あっ……この世界は、何でもありだっけ?」


「そうだが、まあ、盗賊がイヤだというなら開拓民のスキルを与えよう。

 それは私にでも出来る」



 そう言って、アルバンがケーンを高く掲げた。


 すると、アンベールもモモコも、全身が光り輝いた。


 モモコは、ヨッコラショと腰を上げる。


「あのさあ」


「いちいち、あのあのとは、何だ?」


「全然、実感が湧かないんですけど。

 体に力が漲るわけでもないし」


「そういうものだ」


「それ、不親切でしょ!?

 ステータスはどこを見ればいい?」


「ステイタス」


「細かいとこ、こだわるなぁ」


「先ほどの画面を表示させて、右の『(コロン)』の部分をタップしろ」


「タップって言葉はあるんだ」



 二人は、画面の再表示を念じた。


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