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4.しゃべる白猫エスカ

 ここから、「モモコの姿をしたアンベール」「アンベールの姿をしたモモコ」という書き方は、それぞれ、単に「モモコ」「アンベール」とする。


 つまり、見えている姿で二人を表現するので、言葉遣いでアンベールかモモコかを区別していただきたい。



 制服もワイシャツも脱いで上半身裸になったモモコは、草むらの上に正座してアンベールに下着を再装着してもらっていた。


 モモコは鼓動がMAXのまま止まらず、顔の毛穴という毛穴から湯気が噴き出しそうなほど熱くなっていた。



 これが、今まで服の下に隠れていたモモコの裸体。


 今、自分がその体を全て受け継いでいる。


 そう思っただけで、思考回路があちこちショートし、汗をかきまくるのだ。



「はい。直ったわよ」


 モモコの背中からアンベールが声をかける。


「お、お、おお……。メルシー、おっと、サンキュ。」


「ねえ」


「何だよ?」


「聞いていい?」


「ああ」


「なんかさあ、下の方が固くなって、違和感――」


 その言葉を聞いたモモコは、大慌てでアンベールの方を振り返り、片膝をついてしゃがんでいる彼の両肩に手を置いた。


 胸が大きく揺れたが、気になどしていられない。


「それ以上言うな! まずは、落ち着こう!」


「落ち着く?」


「そうだ!」


「あんたこそ、落ち着きなさいよ」


「お、おお」


「収まる? 大丈夫?」


「時が全てを解決する。問題ない」


「でもさあ、アンベール――って、アンベールは私か。

 あんたがこっちを向いたら、ますます固く――」


「言うなああああぁ!」


 モモコは、急いでワイシャツを着ようとするも、ボタンの位置が違うのでドギマギする。


「あんたこそ、落ち着きなさいよ」


「これが落ち着いていられるか!」


「フフフ」


「何がおかしい!?」



 笑みを浮かべたアンベールが、ゆっくり立ち上がって軽く伸びをした。


「これが、アンベールかあ……」


 モモコは、制服を羽織りながら、Yの字のポーズを取るアンベールを見上げる。


「全身が黒髪のイケメン二世、アンベール。すごいわ」


「そうさ。大事に扱えよ」


「私のもね」


「ああ、合点承知之助」


「どこで覚えたの、その言葉」


「こういうのは、アニメとかですぐ覚える」



 と、突然、すぐ近くで低い男の声がした。



「おい、アンベール。幼馴染みを裸にして、お楽しみかあ? ああん?」


 ビクッとした二人が声の方を向くと、草むらから白猫がヌッと現れた。


 青と金のオッドアイ。アンベールの飼い猫のエスカだ。


「お、おい! エスカかい、今しゃべっていたの!?」


「気安く俺の名前を呼ぶな」


「驚き 桃の木 山椒の木」


「そこに虹の木があるがな」


「ああああああああああっ! お前が赤い球を悪戯(いたずら)したから、こんな目に――」


「知るか、そんなこと。俺だって、こんなところに連れてこられて、いい迷惑だぜ」


「赤い球はどうした?」


「知るか、そんな物」


 エスカを睨み付けたモモコは、素速く立ち上がって、周囲を見渡す。


 虹色の大木を中心に、半径20メートル程度は草むらだが、そこから先は、鬱蒼とした森のようだ。もちろん、その草むらに赤い球らしき物は見当たらない。


「ちっくしょー! 元の世界に、戻れないって事!? どうするんだよ!」


「ここで暮らすしかないだろ。

 それはそうと、さっきから幼馴染みの方が、アンベールっぽい話し方をするが?」


「俺はアンベール」


「幼馴染みがアンベールだって?」


「そして、むこうがモモコ」


「アンベールが幼馴染み?」


「そう」


「ムフフ」


「笑うな!」



「それはそうと、森の向こうから誰か来るぞ」


 そう言って後ろを振り向くエスカの見つめる先を、二人は目で追う。


 しかし、木々の葉が揺れるだけで、人の姿は見えない。


「見えないじゃないか」


「そうよ、誰もいないじゃない」


「まあ、見てなって。

 ……ほら、おいでなすった」


 エスカの言うとおり、森の奥から、白い服を着た人物がゆっくりとこちらへ近づいてきた。


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