3.俺がお前で、お前が俺で
「ええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!」
アンベールは、これまた聞いたことがない高い声が喉から出た。
自分を見つめている自分に、知らない声を出す自分。
彼の混乱に、拍車が掛かる。
「ど、どちら様で?? もしかして、俺のそっくりさん!?」
「俺? やっぱりね」
「やっ……ぱり?」
「私も、変な気分よ。だって――」
「だって?」
「私が目の前にいるんだもん」
今、私って言った。
ということは、アンベールが二人いるのか?
彼は、急いで上半身を起こした。
と、その時、胸の辺りがタユンと動いた気がした。
彼は思わず、胸元を見る。
第二ボタンまで外れたワイシャツ。
その乱れたシャツの中で、双丘の深い谷間が覗いている。
それだけではない。チェック柄のミニスカートと足まで視界に飛び込んできた。
彼の血圧はぐんぐん上がり、みるみる赤面していく。
「………………ってことは」
「ってことは」
「俺がモモコで――」
「私がアンベール――」
「う、嘘だろ?」
「現実みたいよ。
あっ、それから――」
「何?」
「両足をそんなに広げないで!
スカートの中が丸見えだから!」
「おお、わりぃわりぃ」
モモコの姿のアンベールは、慌てて股間に手を当てて、両膝をくっつけるように足を閉じた。
「今、なにげに触った」
「あっ……、でも、仕方ないだろ! 咄嗟に隠すためなんだから!」
「やっぱ、触ったんだ」
「すみません……。ちょっとあそこを触ってしまいました……」
「あっ! 今度は胸を揉んでいる!」
「違う違う! なんかが中でずれてて、変な気分だから――」
今度は、アンベールの姿のモモコがみるみるうちに赤面していく。
「俺たち、入れ替わったんだよな?」
「そうよ」
「自分の声って、まともに聞いたことがないけど、こんな声なんだ」
「みたいね」
「ところで、あの虹色の木があるってことは、もしかしてだけど、ここは異世界?」
「異世界って、あんな木があるの?」
「そうとも限らんだろうが、現実にあり得んから、異世界だろ」
「なら、異世界って、体が入れ替わるの?」
「いや、初めて来たから、俺もわからん」
「落下した時、あそこの虹色に光る大木に私たちが突っ込んだんだけど、それで入れ替わったのかしら?」
「そっか! モモコの位置からは見えていたんだ。
……ってことは、あれは魔法の大木かぁ」
「魔法?」
「そう。あの木が魔法を使って、この下着をずらした」
「へ?」
「その未知なる魔法の名は、ズーレブラー。
――うわっ! 痛って!!
おい、頭叩くな!
俺――じゃなくて、暴力女!」
「木がそんな魔法使うわけ、ないでしょうが!」
「いやいや、わからんぞ」
「ない!」
「もしかして……、ポジズレーというのもあるかも。
なんかお前、違和感ないか、下の方?
――痛っっっっって!!
そんな力入れて、頭叩くな!」
「なんだかわかんないけど、一応、叩いてみた」
「それより、これ、どうすりゃいいんだ?
ずれてて、すっげー違和感あるんだが」
「仕方ないわね! いつまでも揉んでないで、脱ぎなさいよ!」
「えっ!? 脱ぐ!?」
「いいから!!」
「はい、大佐殿!」