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13.召喚術を極めよう


 今日は郊外の誰もいない原っぱまで出てきて、みんなでピクニック。

 召喚の実験です。


 旦那さんと検討した、新しい召喚方法をいろいろ試してみる。

 魔法陣も大きな紙にして、どんどん書き換えていくよ。

 実技はからっきしでレベルも上げられなかった私だけど成績だけはよかったので術式を単純化してMPコストがかからない方式に書き換えるぐらいはできる。

 召喚石が無くても私のMPだけで召喚できるぐらい。

 簡単なものからいろいろ召喚してるうちに、だんだん狙ったものが召喚できるようになってきた。


 召喚した召喚獣は、旦那さんと闘ってもらう。

 旦那さんが持ってきた異世界のナイフ凄いの。

 どういう付加がついてるのか知らないけど召喚獣が一撃で消える。

 消えるってどういうこと?

 なんで消えるの? 召喚を解除して送り返しちゃうの?

 強制的に?

 すごい付加……。ほんと旦那さんが私の敵でなくてよかったよ。

 ……もしかしてそのナイフあったら旦那さんたち自分で勝手に帰れる?

 考えたら怖いので口にしないでおこう。


 卒業トーナメントでキツネのミヨちゃんが召喚したグリフォン、犬種のワルラー君のマッドブル、ウサギのメルさんのリザードマン。

 全部私にも召喚できた。

 一度見たことがある召喚獣だとイメージしやすくて、やりやすいみたい。


 召喚のレベルが上がってきたので、送召喚(ディスペルコーリング)も試してみる。

 召喚した召喚獣を、送り返す術だ。

 自分で召喚した召喚獣を送り返すってなんか変な気分。

 旦那さんたちに今使っちゃったら大変なことになるね。


「それ、うまくしたら敵の召喚獣を送り返すこともできるんじゃないか?」

 うわーそれ卑怯。そんなの使ってくる相手と絶対闘いたくない!

 魔物とかが召喚獣使ってくることはあるわけないので、これは対召喚士戦用の技ってことになるな。それ考えると使いどころ無いけど。


 旦那さんが面白がって、例の一撃ナイフを魔法陣の上に置いてくれる。

 ステータスの魔法をかけると、ナイフにかかってる術式が見えるんだ。

 ……すごいわこれ。なんという裏技。

 これ考えた人天才じゃない?!

 異世界の魔王様が考え出したんだって。

 魔剣ルシフィス。なんというチート武器……。


 奥さんも面白がって、私のマネして召喚してみる。

 

 ……なんで一発でできるのよ。

 さすがは魔王……。

「魔法陣がいいからじゃ」とか言うけどさあ、私の三年間はなんだったの。


 奥さんが召喚したケルベロスを、私のディスペルコーリングで送り返してみる。

 できた!!

 えええ――――!

 できちゃったよ!

 他の召喚士が呼び出した召喚獣を強制的に送り返せちゃったわけ。

 これで私、悪魔召喚士の名をほしいままにできそう。

「……この技は秘密にしておいたほうがよさそうだな……」

 はい旦那さん、そうします。

 下手したら私火あぶりにされちゃいますからね……。


 お昼にして、ジャガイモの煮物とか。

 奥さんが異世界から持ってきた調味料すごいの。食べたことないすごいおいしくて、優しい味。しょうゆっていうんだって。

 食文化は旦那さんたちの世界が圧勝してるかもしれないわ。

 食後、お昼寝して、MP回復してからいよいよアレに挑戦。

 できた――――――――!!

 これは凄い! 自分でも信じられない! とっておきにしておこう。


 他にもいろんな召喚スキルを試してみた。

 どれも革命的よね……。私、大召喚士になれるんじゃないかしら……。

 特に魔法陣を自力で展開できるようになったのは凄いわ。

 こんなの私の国じゃ誰もできないよ。

 奥さんが魔王ファイアボール出すときに自力で魔法陣展開してたので、それ、やりかた教えてくれたんだ。

「教えただけでできるシルビスもすげえよ」って旦那さん驚いてたけど。

 一日、召喚の特訓してたら、レベル80になっちゃった……。



 翌日。学生寮を出ると、クマとゴリラが門で待ってた。

 今度はお前らかい……。


「おいっ俺たちと勝負しろ!!」

 いきなりなによ……。

「勝負ってなんですか。いきなり」

「俺たちが勝ったら俺たちのパーティーに入れ!」

「たちってなに? 二人がかりで私と勝負するの?」

「そうだ! お前の召喚獣二匹いるだろ!」

「あなたたちが負けたらどうするの?」

「そしたらパーティーに入らなくてもいい」

「私になんの得もないじゃない」

 バカじゃないのこの二人……。

 いや、バカでしたね。しょうがないか……。


「私の召喚獣は宿に泊まってもらってます。呼んできていいですか?」

「ダメだ! 今ここで勝負しろ!」

「召喚士に召喚獣抜きで勝負しろって言うんですか?」

「今ここに連れていないお前が悪い」

 ……バカの考える作戦ってほんとバカげてるわ。


 もう周り登校中の学生が取り囲んじゃって大変!

 この状況でよくこんな条件突き付けられるな……。

 下級生も同級生もみんな見てるのに恥ずかしくないのかしら……。


「負けを認めたら痛い目には合わせないでおいてやる。パーティーに入れ」

「お断りします」

「やるってのか?」

「やります」


 二人、驚く。

 最初っから私が折れると思ってたの?


「みなさん! 危険ですから離れてください!」

 周りの人たちに声をかけると、ざざっと輪が広がる。


 さあもう逃げられないわよ。

 クマ、剣と盾。

 ゴリラ、槍。

 もう激怒して構えてるね。

「俺たちに魔法が効くと思うなよ! マジックガードはすでにかけてもらってるんだからな!」

 どこまでヘタレなのかしら……。


「誰か審判してください。向こうから決闘申し込んできたと証言できる人で」

「俺がやろう」

 クマゴロー君出てきた。握りこぶしを振る。

 負けんなよってことね。ありがとうね。

 召喚科の名にかけて、剣術科と槍科には負けられないわ。


「いいか? じゃ、始め!」

「このヤロオ――――!!」


 突っ込んできた二人の剣と槍を、金貨百枚の杖で払いのける。

 ぼぎぃいい!!

 剣も槍も折れて吹っ飛んだ!

 勢いのまま私に突っ込みそうに前かがみな二人をどごんっどごんっ。

 杖で叩き伏せる。


 終了。



 召喚士は召喚獣や魔法だけで闘うと思ってたでしょ?

 私が直接攻撃してくるとか完全に想定外だった?

 無詠唱で自分に強化魔法ぐらいこっそりかけられるに決まってるでしょ。

 召喚士は支援魔法の総合職なんだから。

 バカすぎるわ。


 なんかヒールできる人が必死にクマとゴリラにヒールかけてるけどもうどうでもいいし。

 さ、二人を迎えに行かなきゃ。

 クマゴロー君にガッツポーズ。

 親指立てて笑ってくれた。クラスメートとこんなやり取り初めてかも。

 クマゴロー君、卒業トーナメントで一回戦負けだったけど、対戦相手の私が優勝したので欠格にはならず卒業簡単に決まったんだって。

 なんか嬉しかった。



 試験休み最終日。

 今日は、二人がやりたいことをやってもらうことにした。

 私からのお礼のつもり。

 お芝居がみたいって奥さんが言う。観劇が大好きなんだって。

 劇場、今なにかやってたかな……。


「『未来からの暗殺者』か」

「物騒なタイトルじゃのう……ミュージカルはないのかのう……」


 魔王と勇者が戦争をする未来から、魔王が暗黒鎧騎士を時を超えて送り込んできた。

 勇者の母と同じ名前の女性が次々と暗黒鎧騎士に殺されてゆく。

 まだ勇者が生まれる前の勇者の母親となる女性を殺すためだ。

 このままでは勇者は生まれず、未来で人類は魔王に負けてしまう。

 そんな中、勇者のパーティーメンバーの戦士が、暗黒鎧騎士と同じ魔法陣を使って勇者の母を守るため、未来から送り込まれる。


「(なんかマサユキと同じような目にあっておるの……)」

「(休暇に見たい舞台じゃないな……)」

 ごめんなさい旦那さん、あなたを呼び付けたの私です……。


 迫りくる暗黒鎧騎士からひたすら逃げるまだ勇者を生む前の若い母と、戦士。

 暗黒鎧騎士には剣も、魔法も通用しない!

「(逃げてばかりおらずちゃんと戦えばよいの!)」

「(あんな無敵な奴相手に無理言うな!)」

「(マサユキだったらなんとかするじゃろ!)」

 奥さん、旦那さんみたいな人が主人公だったら、この話すぐ終わっちゃいますから。


 戦士と勇者の母は、ギリギリの逃亡の旅の中、いつしか恋に落ちる。

 ……奥さんなに目をキラキラさせてんですか。

 ……もしかして旦那さんとのなれそめ、それですか?


 溶岩が噴き出る火山。ついに二人は暗黒鎧騎士を溶岩の海に突き落とすことに成功するが……。

「(が……ガイコツ! 暗黒鎧騎士の中身はガイコツだったのじゃ!!)」

「(……ガイコツだったら悪いかよ)」

 ……旦那さん、あの、何か思う所があるのですか。


 戦士はガイコツとなった暗黒鎧騎士から勇者の母を守ろうとして、とうとう命を落とす。さらに勇者の母を殺そうとして這ってでも迫りくるガイコツ。

 勇者の母は、最期に残った魔力で火山の岩を崩し、ガイコツを叩き潰した!


 お腹に遺された、戦士の遺児。

 勇者の母は、その子を立派な勇者に育て上げることを戦士に誓って、旅立った……。


 奥さん号泣です。

 いやあの無茶苦茶な話のどこが琴線(きんせん)に触れたわけ?

「わしもマサユキが死んだとき、残された子をしっかり育てねばと誓ったものじゃ……。わしにはわかる。あの母の気持ちがな……」

 ああ、旦那さんって何度も死んでるんでしたね。

 もうわけわかんないよこの夫婦……。


「登場人物が全員ワオキツネザルの劇でそこまで感情移入できるカーリンがすげえよ。俺には最初から最後まで全部コメディにしか見えんかったわ……」

 ……いや旦那さんそういう劇団だから。


 異世界って怖いとこだな。

 うん、やっぱりむやみに異世界から召喚したりしちゃ、ダメだよね。

 いまさらだけど、召喚士を選んだの、後悔したくなってきた……。



 その後、用事があるって奥さんが言うんで宿で別れた。明日からまた学校かあ……。

 私はもうこれで卒業は決まりだろうから、授業もなにもなくて、好きに過ごしていいんだよね。

 学校にいるよりも、卒業式まで三人で遊んでたほうがいいかもね。

 進路は、アルバイトを続けるつもりだったけど、もう冒険者で食べていけそう。

 旦那さん御夫婦が帰った後も、自力で魔物いろいろ召喚できるようになったし、コツコツ育てていけば、並みの冒険者以上に働けると思うもん。

 ……婚期は遅れそうだけど。


 そんなことを考えながら学生寮に着くと、寮長からすぐに声をかけられた。

 校長先生がお呼びだって。

 悪い予感しかしないけど、大急ぎで学園に行くよ。


 校長室に入ると、校長と、メリアン先生、それにあの合同パーティーのメンバーズ。なにがはじまるんでしょうね……。



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