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9 お荷物には選択死しかない

 三人の男に囲まれている絶体絶命のこの状況。さてあなたならどうする。


「どうします?」


「お前は死ね」


「ひどい」


 口ではそう言ったものの、この人が怒るのも仕方ない。何が悲しくて敵の相手に加えて味方の守りまでしなきゃいけない。この僕という名のお荷物を、どうして追加されなきゃいけないのか。これに関しては本当に申し訳ない。


 しかしピンチあってこそのヒーロー。その手の人種はここぞという時にほど真の力を発揮するというものだ。と、昔、由宇さんが言っていたのを思い出した。


「なんか秘策とかあるんですか」


 という訳で、一応聞いてみた。


「んなもんねぇよ」


「そうですか、ですよね」


 由宇さんが聞いたらがっかりするだろう。下手したら、こういう時の必殺技は必須なんだって小一時間レクチャーするかもしれない。


「しかし相手は全然動かないですね」


 気を取り直して僕は会話を続けた。


 長年張り込みを続けてきた刑事のようなセリフではあるが、実際はまだ3分くらいしか経っていない。けれど互いに膠着し合っている状況ではそれが十倍にも百倍にも感じられた。


「僕に出来ることは?」


「潔く死ね」


「死ぬ以外の選択肢でお願いします」


 そうは言ったものの彼の気持ちが分からないでもなかった。


 お荷物が減る。それだけでどんなに戦いやすいだろう。加えて彼らの攻撃が僕に集中すれば、その分タクトが自由に戦える。勝てる可能性が高くなる。


 ま、その分僕は確実に死にますけどね。


 敵の海賊達は2mほどの距離を置いて、こちらの出方を窺っていた。数は上回っているんだから一気に向かって来ればいいのにそうしないのは他に何か理由があるんだろうか。


 しかしそれはこちらにとっても都合がいい。攻守の選択権はまだどちらにも転がってはいない。


「分かりましたよ」


 先手必勝。僕は男たちの方を確認すると、拳に力を込めた。


カタカタ


「ん?なんだぁ」


 震えるような音。それが海賊たちの後ろから聞こえた。僕はわざとらしく、彼らの背後に視線を送り、あたかもそこに誰かがいるかのように誘導した。つられた男たちはそれを確認する。


カタカタカタ カタカタカタ


「ちっ誰か隠れていやがるのか」


 小刻みに震える大きめの木箱。


「俺が行く」


 そう言うと、真ん中にいたナイフの男はくるりと箱へと向き直り、一歩また一歩とゆっくり足を進めた。それはまるで、逃げられない相手をじわじわと追い詰めるような動きだった。


 ま、誰もいないんだけど。


「運が悪かったな」


 実際には存在しない相手に威嚇をする男に若干の哀れみを覚えたが、自分自身も油断はしていられない。


 さっさと終わらせないと。


「出て来いおらぁ」





 男が箱を思い切り蹴り付けるタイミングで僕らは飛び出した。


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