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51/53

51 バットエンドだったようだ


 駄目だと思うよそういうの。話の展開的にワンパターンになるからね。僕はおすすめしないよ、うん。おすすめしない。



「お嬢様! またそんな事を」


 身内から新たに発生したトラブル。その心中は僕もお察しする。この物語も締めに入ったであろうタイミングにまさかの海賊登場。あげく本人曰く爆弾のスイッチを掲げる少女ときたもんだ。そりゃあ老紳士も悲痛な叫び声をあげるだろう。


「おいクソガキ、そんな脅しで引き上げると思ってんのか?」


 で、加えてこれだ。

 あらかた予想は出来ていたけど、タクトはそんな爆弾のスイッチごときで、ひるむような人ではなかった。それどころか、より一層ガラの悪いオーラを醸し出し、少女に絡んでいる。


「ぼぼぼ、暴力はおやめください」


 気持ちは二人の話に割って入ろうとする老紳士。あくまで気持ちだけ。肝心の体が声に伴わない。しどろもどろと完全に体が踊っている。

 まあ別に、彼が割って入らなくても少女は困らないだろうけど。


「脅しじゃない」


 スッとタクトを見上げる少女。

 もちろん彼女の涼し気な対応も僕には十分予想がついていた。そのくらい肝が据わっていなかったら、一人で盗賊の親分に殴り込みになんて行かないだろう。なんならこの状況、既に少女が爆弾のスイッチを押していたっておかしくはない。


「だってもうスイッチ押したもの」


 ほらね。


 ……。


「っていやいや、それは流石に駄目だろう!」

「ああ?」

「おやおや森田さん、静かだと思ったら急にツッコミかい。相手がボケるタイミングをうかがっていたのかい」

「違います。そうじゃなくて、あのね」


 変なところに興味を示す幼馴染は放置して、念のため僕は少女にもう一度確認した。


「何を、押したって?」

「スイッチ。爆弾のスイッチ」


 ありがとう。言い直してまで二回言ってくれてありがとう。おかげで空耳とか解釈違いの線がバッサリ消えてくれました。

 どうやら勘違いでは無いようだ。これは扉の開閉スイッチでもなければ、照明のスイッチでもない。紛れもなく爆弾の起爆スイッチ。それが、たった今こうして彼女の手によって作動したのだ。

 

「……よし分かった」


 僕はあらかた考えていた通り、一つ縦に頷くと、彼女に向かってこう言った。


「彼の非礼は謝るし、お礼もいらない」

「おい、てめ」

「だからどうか、もう爆弾を止めてもらえると嬉しいな」

「何勝手に」


 怒りの矛先をこちらに向けるタクトを抑えつつ、僕は彼女をみつめた。


「なぜ?」


 可愛い顔がみつめ返す。僕は思ったまま答えた。 


「こんなことでこれ以上、君の家が壊れる必要は無いかなって」


 災害保険に入ってなかったら、いや入っていたとしても、これ以上、何かが壊れる必要はないはずだ。


「……そう」


 少女は少しうつむいた。

 手元のスイッチに手をかける。

 これでようやく、長かった僕らの物語も終わりになる。タクトに返す金貨は五枚のままだけど、今回は別にそれでいい。

 これ以上、荒々しいことはもうたくさんだ。長編お疲れ様でした!




「でも、無理」

「えっ」


 そのスイッチは停止されることもなく、彼女の手の中に納まったまま。それどころか、この音は。

 ゴゴゴゴゴゴ。低い唸るような音。

 え、嘘、まさか、聞き覚えのあるこの音はもしかして、爆弾? 僕、どこかで選択肢間違えた? フラグをどこかで立てるべきだった? 仲間にしていないメンバーがいた? それとも時間切れ?

 おいおいおいおい嘘だろう。

 軋む天井と震える地面、ここにいるみんなの顔。僕は忙しく目を向けた。しかし解決策があるわけでもなく。


「ま、えっ、待っ」


 揺れが更に激しさを増す。逃げなければ。けれど足が動かない。


 もう駄目だ。


 全てを飲み込む音を耳に受けながら、僕は顔を覆った。







「いいのですか、お嬢様」

「いい」


 しばらくして。

 あたりが無音に包まれる中、僕はそっと目を開けた。死んでしまったからだろうか、体のどこにも痛みは感じなかった。というよりも。


「生きてる」


 死んだかと思っていた僕の体にはちゃんと手足が生えていた。


「森田さん、森田さん」

「あれ、由宇さんも生きてる?」


 陽気に語り掛ける由宇さん。この人もやはり生きているらしい。


「そんな事より森田さん、あれ見て。あれ」

「あれ? 一体何を……はあああっ!?」


 僕はごくごく普通に驚愕した。面白いことを言うとか、気の利いたことを言うとかそう言うのじゃない。とても普通に驚いたのだ。


「こっこれは、どういう事でしょうか?」


 目に映るのは金銀財宝。それが、おとぎ話の中のように山積みになって輝いていたのであった。

 

 


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