48 戦いの後も戦いは続く
「あ、おかえりー」
「その呑気な感じ、腹が立ちますね」
僕が全てを成し終えて地下の牢屋に戻った頃には、由宇さんと老紳士の石化は自然と解けていた。
結局あの後、落下したしたはずの敵の総大将の姿はどこを探しても見つかることは無かった。よかったといえばよかったのか。
「たぶんこの辺にはもういない。だから石化も解けた」
少女は冷静にその状況を分析していた。
「なるほど、そっかそっかそれは残念」
うんうんと首を縦に振りながら、腕組みをする由宇さん。言葉ほど残念そうな素振りも見せず、彼女はあっけらかんとした笑みを浮かべた。
「どうせなら、石化を解くために王子様のキス的なものが欲しかったんだけねえ」
この人は単に自分が助かっただけでは飽き足らず、それ以上の要求をしようというのか。
僕は、ここは一思いに一刀両断してあげることにした。
「王子もそんなに自分を安売りしませんよ」
「いや~案外そういうのを商売とする王子がいるかもしれないよ?」
間髪入れずこの返事。僕にはこの鋼の精神を断ち切ることは無理そうだ。
しかし。呪いを解くためのキスを商売とする王子か。それはもはや悪徳商法と言われても仕方ない。というかそんな汚い商売をするほど生活に苦しむ王子なんて見たくないな。
彼女の思いもよらぬ発言に、何気に自分の方がダメージを受けたことは置いといて、僕は雑に話をまとめた。
「とりあえず助かったんですから良かったじゃないですか。タクトさんも、ね?」
僕の後ろには、あれ以来なぜか妙にふてくされているタクトの姿があった。
理由はまあ、本当は想像出来るんだけど。
「もー子供じゃないんですから。そんなに逃げられたのが悔しかったんですか? それとも負けたのが悔し……痛い痛たたたた、ちょっ、と、やめてくだ……さいっ、よ」
彼の容赦のないストレス発散。それは激しく僕を襲う。
「あー? なんか言ったかー? 聞こえねえわー」
「ぼ、暴力反対っ」
ぎりぎりぎりぎりぎり。
強引に締め付けられる僕の頭。そこに一切の躊躇など無い。そんな彼の手を引き離すのは、僕にはなかなか容易では無かったのであった。
「……お兄ちゃん、避ければいいのに。なんで避けないの?」
ぽつり。僕の傍らから聞こえる少女の言葉。
「愛だよ、愛。受け止めているんだ、この身にしっかり、愛をね!」
「愛……」
「そう、愛!」
友人よ、余計なことを教えないで欲しい。それは一ミリたりとも当たっていないから。彼女の今後の人生に大幅な路線変更があったらどうしてくれる。
「皆様、外部の者と連絡が取れましたぞ」
結局、僕がそのやり取りを否定することもなく、老紳士の帰還によって、この茶番劇は幕を閉じたのであった。




