47 最終地点
「何人味方が増えたって、結果は見えてんじゃないのかねえ」
ふわりと感じた奴の気配。
「危ない、こっち!」
そう言って僕は少女の手をひいた。転がっていた瓦礫達が、僕らの代わりに音を立てた。
「なんだ、まだ逃げるのかい」
「もおおおおっしつこいです! さっきのタイミングで、撤退してくれても構わなかったんですよ!」
僕は足を大きく広げ跳ねるようにして廊下を駆けた。その後ろから、パパンと軽い破裂音が鳴る。それは少女が放つ足止めの爆弾だった。
「ははっこうまで応戦されると逆に楽しくなってくるってもんだ」
「逆効果!」
足取りこそ遅いものの男は確実に迫っていた。
「あああ、駄目だ。今度こそ本当に終わりだ!」
無我夢中で僕は逃げた。突き当りには扉が見えた。僕はそれを体当たりするように押し開ける。
「あっ」
鏡張りのダンスホール。そこは部屋になっていて、その先に続く道などどこにも無かった。つまりは行き止まり。ついにその、行き止まりという名の巨大な壁が、人生の終着点として名を変えて、僕らを歓迎してしまった。
「戻ろう」
僕は足を緩めた。
「まだ今なら引き返せば別の道があるかもしれない」
幸い男はまだ追いついていない。僕は少女に提案した。
「……いい、そのままギリギリまで進んで」
彼女は首を縦には振らなかった。
「え?」
「大丈夫、もう終わらせる」
少女はそう言うと、僕の右手を振りほどき、僕の手は、ただ宙を掴んだ。
そしてその瞬間、閉じかけていた扉が、派手に打ち破られた。
僕はとっさに目を閉じた。
これはもしかして。
「さあて、ようやく終わりかい」
「そう」
そうじゃない。
「あなたが」
あなただけじゃない。
「終わり」
君も終わってしまうのでは。
カチャリ
それはこれまでにも何度か聞いた、全てを破壊するスイッチ音。
地面から響く巨大な破壊音は、やはり、その男のいる方から聞こえた。
「そういう事かい」
地響きに紛れて小さくなっていく男の声。
「確かにこれじゃあ俺も動けねえ。でもな」
ふっとした息遣い。
嫌な予感がする。
「石化して動けねえのは、お嬢ちゃんも一緒だ」
「……知ってる」
やっぱりか。
それは僕の想像していた通りだった。
だから僕は駆け出して、いや、その頃にはもう、僕の体はその場所に到達していて――
「やっぱりお前さんのそれ、心眼じゃねえのか」
「まさか」
僕は握っていた右手を振り上げる。
パン
手に感じるのは重い衝撃。それもすぐに軽くなる。
僕が手にしていた片手のそれは、何かを弾き飛ばしたような音をあげた。
「ほらな、見えてる」
聞こえるか聞こえないかのその声は静かに闇へと消えていった。
「……知りませんよ。そんな非現実的な話、僕には全く関係ない」
僕は少女を抱きかかえ、相手の無いまま呟いた。




