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46 予備なんてお呼びでない




「ゲームオーバーだ、小僧」


 容赦のない男の言葉。


 無論僕もゲームオーバーだと思った。この手に握られた『魔具』と呼ばれる武器は、結局のところ使わずじまい。散々ここまで引っ張っておいて、活躍なんて何一つない。そんなに都合のいい話、どこにだって転がっていない。残念だったな、『魔具』よ。別の物語で活躍してくれ。





「でも死ぬのは嫌だなあ」


 そんな事を願っても、重力に逆らえないこの体は、地面に簡単に吸い寄せられていく。


 終わりの鐘が鳴り響く。低い低いその鐘はまるで地響きのように。


「え、地響き?」


  それはさすがにおかしくないか。鐘ならカーン。でもこれはどっちかというと。


「ん、なんだこの音」


 僕だけに聞こえる訳でもないらしい。タクトもまた同様にこの異変に気付いていた。


 ごごごごご。獣の唸るような重低音は這うようにして僕の周りを埋め尽くす。そして。


「ちょっと、ん、えええー」


 背後から地を割くような轟音が思い切り叫びをあげたのである。


 だからつい、僕も負けじと叫びをあげてしまった。


「一人で戦うの、やっぱり、ずるい」


「なんてことを」


 轟音から生まれたその声は、間違いなくさっき僕が置いてきた少女のものであった。





「こういう時は逃げてもいいんだよ」


 せっかく僕が壁を壊して部屋を遮断したというのに。ここで守られた方は素直に逃げておくべきだろう。命を張って逃がしたら、そりゃあ多少は躊躇するけど、その気持ちを汲んで逃げるだろう。それなのに彼女は。


「壊せそうだったから、壊した」


 そう、壊した。


 僕が爆弾で崩した壁や天井を、新たな爆弾で吹き飛ばした。さらに細かい瓦礫の完成だ。


「壊したじゃないでしょ。というか爆弾のスイッチ、僕に預けてたんじゃないの?」


 僕はポケットを確認した。彼女から貰った多機能性の起爆スイッチは、たしかにここにあった。他に彼女が持っていたのは、威力の弱い小型爆弾だけだったはずだが。


「予備もある」


「そうか、予備もあったか」


 スッと出されたその見覚えのある形状に、僕はただ頷くしかなかった。それで一度爆発した場所を何度もポンポン爆発出来るって、そりゃあなんの原理だ、手品師か。


「でも10分は我慢した。地下でお姉ちゃん言ってた。見せ場、邪魔しない」


 余計なことを。


 お姉ちゃんとは、恐らく由宇さんのことを言っているのだろう。見せ場を邪魔しないとか、そんなサイコパスな発想、あの人しかいない。こっちは、生きるか死ぬかの危険な場面だったのに。


「見せ場、出来た?」


 ああ、純粋な視線が心に刺さる。


「……で、出来たよ」


 あまり見せ場の意味を分かっていないのだろう。


「そう……よかった」


 自分はやることをやったのだと、妙に満足気な少女の頷きがそれを物語っていた。


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