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40 攻略情報はお早めに

 『早く逃げろ、馬鹿』


 まあなんだ、その言葉、相手に厳しく当たりながらも相手を思いやっているようで、恋愛物の話だったらいい具合にツンデレ感溢れる言葉となるのだろう。


 が、しかし、悪いが僕は男だ。


 ああ、残念。本当に残念。これがか弱い女性だったら、ちょっと文句を言いながらもその言葉の通り逃げるだけだったのに。



「逃げる、ですか」


 残念ながら僕は男である以上、彼の言葉にときめくことも、その言葉に従って逃げることも出来ない。


 ……出来ない?


 ほんとか?


「おい、ぼさっとしてんな!」





「はい、失礼しました!」





 二度目の彼の怒号をうけて、僕はあっさり元来た道を翻すべく、体勢を立て直していた。正直ヒロインでもか弱い女性でもなんでもないけど、別にそんなのどうだっていい。だってこれは正義の勇者が果敢に悪に立ち向かっていく話じゃないんだし。


「……カッコ悪い」


「いいの!」


 立ち上がろうとする僕の姿を冷めた目で見下す少女に無駄に強気な返答した僕は、カッコ悪さをかき消すように、果敢にも敵に立ち向かおうとする男の後ろ姿に向かって言葉を投げた。


「タクトさん、その人の『目』に気をつけてください!」


 非戦闘員、それもモブにも等しい自分が出来るといったら所詮これくらいのことだ。でも無いよりはいくらかましだ。ゲームの攻略だって、相手の技が事前に分かれば、それなりに対処のしがいもある。


 地下での出来事を思い返しながら、僕はその重要な情報を彼に伝える。


 由宇さんと老紳士の身に起きた、あの悲痛な状態を。



「彼は石化の……」


 立ち上がって二、三歩よろめきながら体制を整えた。その時、僕は見えてしまった。そして理解してしまった、これが手遅れだということを。


 まずいかもしれない。


「そっ」


 さーて僕が見たものは一体なんでしょう。そんなアホなクイズをやっている場合ではない。


 前言の忠告の言葉を飲み込んだ僕は、その代わりに動揺の言葉を吐き出していた。


「それはもしかして」


「だから逃げろって言ってんだろ、クソが」


「でもこれじゃ、ほとんど負けみたいなものですよ」


「うるせえ」


 右肩から右足に至るまでの右半身、それが地下で見たあの光景と同じように、灰色の冷たく重い石の塊に覆われていた。


「逃げるの?」


 少女が隣で僕を見上げた。


「それは」


 もちろん逃げたい。


 どうにかこうにかギリギリの気持ちでここまで僕はやってきた。頑張って、なんとかして、そんな根拠のない気持ちで敵に立ち向かおうと思っていた。


 けれどどうだ。そんな偽りの気持ちで固めた僕ではない。きちんと戦闘経験があるという根拠をもった海賊船長が、タクトが、この状況なのである。ならば僕はどうなるのか? 答えは簡単、勝てないだ。


 それは即ち、一旦逃げて体制を立て直したところで、結果が見えているということだ。





「逃げる?」


 人生の選択肢のような彼女の重い問いかけが僕にのしかかる。


「……僕は」


 見つからない答えに、曖昧に小さく呟いた、その時だった。








「逃げる必要はねえさ。なあ?」





 いつからそこにいたのだろう。いつの間にか僕らの逃げ道をおさえるように、石化の力を持つ男、親分と呼ばれるその人物が立っていた。


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