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25 僕はあなたの愛を知る


 海は広くて大きいな。


 空も広くて大きいな。


 竜は強くて大きいな。


 ってばかやろう。


「えー、あのー、これはーどうにかならないんですかねー」


 僕は今、大空を飛んでいる。下には終わりの見えない海が広がっている。そこまではいい。問題はこの後だ。


「いい加減にーなんとかしていただかないとー、僕ー、引きちぎれてー、うぷっ」


「なんか言ったかー」


 頭上から風に流れてかすかに声が届いた。


 いやだから、おかしいんだって、この状況。


 汝に問おう。なぜ、僕だけ竜の背中に乗るのではなく、その手に鷲掴みにされているのか?


 あの時、確かに僕らは海軍に囲まれて絶体絶命だった。そんな僕らのピンチを救ってくれたことには感謝する。けどなんだ、やっぱり僕だけ扱いが雑だろう。


「し、死……ぬ」


 本格的に意識が飛びそうだ。まさか戦闘でも何でもない場所で自分の命が終わりを告げることになろうとは。どんどん意識が遠くなっていく。遠く、遠く、遠く――


「あれあれー?」


 薄れゆく意識のその向こうで、かすかに幼馴染の声が聞こえた。由宇さんだ。


「大変だー」


 慌てたようなその様子、やっと僕の異変に気が付いたようですね。そうです、僕はもう限界なのです。さあ、その鈍感男タクトを誘導し、一刻も早く陸地へ、もしくは一旦体制を整えましょう。


「スマホの充電が切れてしまったー」


 スマホの。


 充電。


「……」


 この度は、ご愛読いただきありがとうございました。


 僕の意識は完全に深い沼底へと落ちていった。







===


 人間はなかなかしぶとい。それは僕も同じのようだ。





「おい、寝てんじゃねえよ、カイワレ野郎」


 カイワレ。それはもしかしなくても僕の事だろうか。


「う、うーん……」


 なんだか頭がとても痛い。まるで寝すぎた時の片頭痛のようだ。


「おい!」


 ガラの悪い男の声。誰かが僕の足を蹴った。


 こういう時、本来であれば、顔を覗き込んで心配するものじゃないか。生きてることに安堵して、美味しいおかゆとか用意してくれるものじゃないか。そんなセオリーはガン無視で、無遠慮にこんなことをする人間。答えはもれなく決まっている。


「タクトさん、おはようございます」


 僕は嫌々覚醒した。


「なに一人だけ爆睡してんだよ、テメーは」


「いや、これは」


 不可抗力というものでして。別名気絶ともいう。


 その理由を弁明しようとゆっくり体を起こすと、手には慣れ親しんだ土と草の感触があった。そうか、今僕は地面にいるのか。その事実で僕はひとまず安心した。


 生きててよかった。


 あの恐怖体験を思い出し身を震わせた僕は、改めて周囲を確認した。


「あれ?」


 そこで異変に気が付いた。


 この場にいるのは僕とタクト、そして竜。


「由宇さんはどこに?」


 あのおかっぱ少女の姿が見えない。影も形も声も何一つとして見つからない。


 別に「心配したんだからっ」なんて涙を浮かべてヒロイン顔負けで歓喜して欲しいとは一切思わないけれど、それにしたって姿くらいはあっていいものだ。


「あいつはあそこだ」


「あそこって」


 タクトが視線を向ける先。そこには森に囲まれた大きな屋敷がそびえていた。


「ジュウデンキ? を借りるとかなんとか」


 充電器。そんなもの、この世界にあるのか。無いだろ、絶対に。


「なるほど、連れ戻しましょう」





 しかし僕はまだ知らなかった。ここからまた、新たな事件が発生するということを。


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