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23 白軍服同好会へようこそ







 可能であればこれが単なる白軍服同好会のサプライズパーティであって欲しい。けれど残念ながら本日はこれといってそんな予定ではなさそうだ。魔法竜という言葉には残念ながら心当たりがありすぎる。ああ遂に僕は犯罪者になってしまうのか。


「ささっ、悪党はこいつらです、海軍の皆様」


 ほらね、やっぱり海軍だ。


 調子よく言った男の言葉を聞きながら、僕は落胆した。やっぱり白軍服同好会ではなかった。ご想像通り、彼らは正義の象徴。悪となるべき海賊を取り締まる海軍以外の何者でもなかった。当然このような状況では捕まって……いや、待てよ。


「あなただって海賊じゃないですか」


 僕は男の方へと顔を向けた。


 タクトと仲たがいしていたのは分かる。けれど元を正せばこの人だって海賊だろう。確かに今のこの状況を見れば、タクトがナイフで男を脅しているように見えるだろう。しかし、きちんと調べればこいつが取り締まるべき人間だと発覚するはずだ。


「ですよね、タクトさ……」


「いや、違う」


 船長からの直接否定。


 違う? どこが。確かにこいつは僕らのような一般人に対しても平気で暴力を振るうとんでもなく嫌な奴だけど、さっきの流れだと二人とも海賊だったじゃないですか。確かにこの男と同一になるのは嫌だけど、どうせ捕まるなら一緒に道連れにすればいいじゃないですか。こういう変なこだわりが、物語では狡賢いやつらをのさばらせる原因になるんですよ。


 けれどそんな僕の訴えはたった一言で覆ることになってしまった。


「こいつはな、海軍に俺を売った裏切り者だ」


 なるほど、これ僕が一番恥ずかしいやつか。じゃあ今の回想は無かったことにしてもらおう。


「人聞きが悪いなぁ、タクト。正義の心に目覚めた男と言ってもらおうか」


 そりゃあ余裕も生まれる訳ですよね。男は相変わらず、三流悪役の典型ともいえる姑息な笑いを浮かべていた。


 要するに、正解はこうか。こいつがタクトを裏切って海軍に密告した、そういう事なのか。


「まさか別の島に捨ててきたお前が、この船に乗り込んでるとは思わなかったけどな。盛った薬が少なかったかぁ?」


「あぁ? おかげでこっちは一人を相手にするのがやっとに決まってんだろ!」


「ははは、そうかそうか。俺様も助かったよ。魔法竜を『悪い海賊』の手から保護したまではよかったが、肝心の海賊がいなんじゃあな。途中で偶然拾ったこいつらを犯人にする手もあったけど、どうも弱弱しくてな」


 そりゃどうも。現代の高校生を舐めないでいただこう。こっちは長期的に船に乗った経験もなけりゃ、戦闘も魔法も未経験の、参考書装備して戦う平凡な学生ですよっと。というか、ここまで聞いて、海軍の皆さんは何も思わないのだろうか。明らかに悪者オーラ全開ですよ。たぶんこいつ、今後ロクなことしませんよ。


「全員武器を捨て、頭上に手をあげよ!」


 あ、関係ないんですね。この男がどんなことをして、今の現状があるかとか、海軍の皆さんには関係ないんですね。なんだこいつら、全員NPCか。


「おかしいでしょ」


 声が震えた。


 僕がこの物語を読んでいれば、誰が怪しいかなんてすぐに分かる。それなのに、ここではどうしてそれが分からない。これが物語の中と外との違いなのか。こちら側の世界に立ってしまうということなのか。僕は主人公じゃない。主人公じゃない人間は、打開する方法も見いだせないまま、こうして終わりを迎えてしまうのか。


「諦めろ」


 その言葉とナイフが地面に転がる音を、僕はやっぱり受け入れることが出来なかった。


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