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2 はい、そうですかとはいかないでしょう



 さて、ここまでの話を整理しよう。


 そこはごく普通の住宅街。アイスを買いに行こうと家を出た僕は、幼馴染の妄想少女、佐々木 由宇が魔法の杖(?)を振ったところを目撃した直後、なぜか海に浮かぶ船の上にいた。以上。


 なんの漫画だ、これ。


 簡潔に整理したつもりだけど、全然整理した気がしないのは、現実にあってはならない現象が、現在進行形で僕の身に起こっているからだろう。けれど、今自分に何が起こったかと問われると、やっぱり『なんか知らないけど、一瞬にして平凡な住宅街から海の上に移動した』と答えるしかない。


 昨日までの僕ならこんな話をする奴は頭がおかしいと思うだろう。いや、今日の僕だってそれは変わらない。しかし、間違いなく目の前には海が見えるし、波の音は聞こえる、潮の匂いも感じる。そして体は船に乗っている。この足が、硬い木で出来た床板を踏んでいる。


「いいねぇいいねぇこういう展開待ってました」


 僕は現状を飲み込めずにいるわけだが、この現状に首を縦に振りながら大満足する人間もいた。それがこの人、佐々木 由宇である。


「いやさ、怖くないんですか。何の根拠もなく、突然見知らぬ場所にいるんですよ?」

「とっても楽しみだよね」


 即答だった。崩すことのないヘラヘラした笑顔からは、純粋な本心が覗える。本来であれば、恐怖心や警戒心が起こりそうなのに、残念ながら今の彼女にそのような心情は起こっていないらしい。やーもう、この状況も怖いけどこの人の存在も僕は怖い。メンタルが鉄かダイヤモンドで出来ているのかと疑いたくなる。


「とっ、とりあえず」


 今にも探検と称して船内を歩き出してしまいそうな彼女を制止しつつ、僕は左右を確認した。

 ここは割り切って、自分がやるべきことをやろう。


「この船が勝手に動いているとは考えにくいでしょう。少なくとも一人は乗組員がいるはずです。まずは争いにならないよう、隠れながら状況確認を……」


 することが出来なかった。


 背後から扉を開くような音が聞こえたかと思うと、振り返った時には既に二~三人の男たちが僕のことをその視界に捉えていた。そのうちの一人と目が合ってしまった僕は、慌てて首を元の位置に戻した。目の前では幼馴染が異様に目を輝かせている。

 逃げるか? いや、そんなことは出来ない。別に彼女を置いて逃げることが出来ないとか、そんな正義感に溢れた感情からではない。その男たちの見るからに海賊ですと言わんばかりの容貌に、逃げることなど不可能だと察してしまったのだ。


 ではどうするべきなのか。


 僕は考えた。今を生きる最善の対処方法を。最悪を想定した対処方法を。

 その一方で、生海賊と思しき集団との遭遇に大喜びした幼馴染は、反射神経のごとく一瞬で彼らに駆け寄っていったので、本人がそれでいいならもういいかなと思うことにした。



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