17 丘かな山かなドラゴンだよ
やあ、はじめまして、こんにちは。あなたはだあれ? そう、竜っていうのね。へえ、そう。ふーん。
まじか、竜。
「これってやっぱり竜なんですか、ね?」
例えこれが見た目だけ竜でも、本当に竜とは限らない。もしかすると、竜の形をした人形とか、竜っぽく見えるネッシーとか。いや、ネッシーもそれはそれで問題だけど。
「竜に決まってんだろ」
明らかに「何言ってんだ、こいつ」的な視線を向けるタクト。そうですよね、見りゃ分かりますよね。
全長はこの部屋みっちり、だいたい5mってところだろうか。重さは、よく分からないけど、乗られたら多分間違いなく潰れるレベル。色は渋い緑色。何も知らずにこれを見たら、ちっちゃな丘かなって思う。いや、今でも丘だったらいいなって思うよ。
「翼とか生えてるんですかね。飛ぶんですかね」
「は、見りゃわかんだろ」
飛ぶんですね、翼生えてますもんね。
「つーか、鬱陶しいから離れろよ!」
「そんなこと言ったって」
いともたやすく振り払われる体。そりゃね、僕だって男にしがみつく趣味なんてないですよ。でも、これ今、状況が違うじゃないですか。
「お前が魔法がどうとか言ってたんだろ」
「言いましたけどぉ」
魔法に興味があるのは由宇さんですし。まさか竜が出てくるなんて思ってませんし。
僕はタクトの影に隠れながら、ちらりと竜の方を眺めた。
「大体あれ、どこが魔法だっていうんです。どこをどう見ても、ただの竜じゃないですか」
火を噴くかもしれないけど、魔法を使うようにはどうやっても見えない。
警戒に警戒を重ねながら僕はその生き物をまじまじと観察した。その時だった。
「では俺様が教えてやろう」
聞き覚えのある声が部屋に響いた。
「あ、この声は」
「やっぱりここにいやがったか」
「ふーんふんふん、当然。俺様は常に最善の選択をする男。ゆえに俺はここにいる! この魔法竜のすぐそばに!」
男は竜の後ろからひょっこりと姿を現した。丸々としたシルエット、短い手足、またお会いしましたね。会いたくなかったけど。
「まさかお前ら自ら死地に飛び込むとはな!」
この人こそ、あの時、僕らを罠にかけた海賊に他ならなかった。
「なんであそこから脱出したのかは知らねえけど、生憎だったな、最終兵器はこちらの手の内にある!」
「それはテメーの物じゃねえだろ」
「はぁ~? 知らねえな。今この状況で一番偉いのはお前じゃない、俺様だ」
「クソか」
「クソはお前だよ、調子に乗ったクソガキが~ 一度痛い目を見ても分からないのか? ならコイツでわからせるしかねえな。やっちまえ、ドラゴン!」
男がそう言って手を当てると、先ほどまで緑色だった竜の表面が黄金色に輝き始めた。
うっそだろ。
次の瞬間、あたりは一面、まばゆい光に覆われていた。




