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♯6

カーネリアンはお嬢様スキーです。

 フローライト子爵家での生活は今までのものとずいぶん違います。


 今日は私とお嬢様の日々の過ごし方をここに記したいと思います。


 多少の差異はあっても、コミュ障で引きこもりのお嬢様の日常や、その専属侍女である私の日常は大概同じ様に過ぎ去っていきます。


 まず朝日とともに、私は寝台から起き上がります。


 サッと身支度をすませると、食堂へ行きお嬢様と自分の食事を受け取ってきます。


 食事はお嬢様の部屋でお嬢様と一緒に頂くのです。


 本来はお嬢様とは別で頂くのが筋なのでしょうが、そうするとお嬢様が駄々をこねられますので。


 そして、お嬢様を起こすとその身支度を整えます。

 

 お嬢様ははっきり言って、美の化身です。


 髪をすいたり洋服を着替えさせる度に、惚れ惚れ見とれてしまいます。


 ああ、本当に残念でなりません。


 この外見に、あの中身……。


 いえ、今は何も言わないでおきましょう。


 そして、お嬢様と一緒に食事をとります。


 午前中は様々な教育の時間です。


 歴史や言語、マナーやダンス、ピアノや刺繡などの教養に貴族社会の常識、エトセトラエトセトラ……。


 それ専属の家庭教師が付きっきりです、私に。


 お嬢様?


 あの極度のコミュ障は、家庭教師の方にもいかんなく発揮されるのですよ。


 つまり、お嬢様が直接指導を受けられるのは、無理。


 私が教わったものをその日の午後にお嬢様へ教える、つまりはリレー形式です。


 なんと、無駄なと思われることでしょう。


 私も思いましたとも。


 阿呆か、と。


 しかし、仕方がないのです。


 一度、ものはためしと家庭教師眼前にお嬢様を無理やり出してみたところ、卒倒されましたので。

 

 まあ、刺繡やピアノなどは普通に考えて教わったものを教え直すなんて無理でしょうが、私がものにしなくても家庭教師の方よりお嬢様の方がもともとはるかに上手ですし。


 学業面は私が優秀な教え子であることと、お嬢様の頭の中身がおよそ私より五つも上だとは思えないほどのお粗末さの為問題はありませんが。


 まあ、とにかくそうやって一日を過ごし、夕方にはお嬢様と一緒に浴室で身綺麗にし、夕食をとり、一日を終えて眠りにつくわけです。


 お嬢様はお休みの前に、いつも私の額にそっと口を寄せると、「今夜もカーネリアンに良い夢が訪れますように……」と囁かれて微笑まれます。


 この世に天使というものが具現化したら、お嬢様のような方であろうと思われるほどの美しさです。


 私はお嬢様へ色々ときついことも申し上げますが、決してお嬢様を嫌っているからなんてことはありません。


 ええ、ありえませんとも。


 きっと、外見の美しさと心の美しさではお嬢様に勝る人間などはいないでしょう。


 頭の出来は別ですが。


 今の私のこの環境は、ご婦人に拾われる以前には思いもよらない幸運なものです。


 眠りにつく寝台の寝具は、ふわふわのサラサラ。


 お嬢様が祈ってくれたように、私に心地よい夢を運んできてくれます。


 どうぞ、お嬢様にも幸せな夢の世界が訪れますように……。


 ああ、ついでに記せば昨日の夢は金貨に埋もれてその中を転がりまわるというものでした。


 本当に、良い夢でした。


だけどその相手をコケにするような物言いはカーネリアン独自の仕様です。

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