♯5
お待たせしてすみませんでした。
時間あけすぎたせいで前どこの部分まで書いたか忘れて、ユークレースとの出会いの続きから書き始めてしまいました。途中で気がついて消したけど。
その後、旦那様とはじっくりお話しをさせて頂きましたね。
それで、いろいろわかったことがありました。
私を拾って下さったご婦人は、ユークレースお嬢様に仕えていたということ。
お嬢様は、何故かそのご婦人にしか心を開かず、そのご婦人が亡くなられてからは周囲の者達は非常に困っていたということ。
それは寝食にも影響が出るほどで、いつかお嬢様も儚くなられてしまうかと思われるほどに。
今思えば、あのご婦人は私のことを自身の後継をして育ててくれていたのかもしれませんね。
短い間でしたが、かのご婦人が施してくれたものは、一介の孤児に対するには過分な教育だったと思いますし。
よほどお嬢様のことが心配だったのでしょう。
いつか自分がいなくなった後のことを懸念していたのでしょう。
もちろん、ここまで突然であったことは、ご婦人にも予想外のことだったでしょうが。
私の教育も終わらず、お嬢様や旦那様へ引きあわせる間もなく。
実際ご婦人の墓前でお嬢様と鉢合わせなければ、私がここにいることはなかったはずです。
これもかのご婦人の執ね……、お導きなのでしょうか。
実際お嬢様の私に対する懐きっぷりから思うに、ものすごい慧眼だと思います。
それに反してあのお嬢様の周囲の人への、それはおろか父親への態度は何なのでしょう。
ご婦人、後継者育てより、お嬢様のコミュ障改善に努力された方が良かったのでは。
それとも、それが難しいほどにお嬢様のアレはやっかいなのでしょうか。
……それはきっと後々私自身で実感することができるでしょうから、今は無用な詮索はなしといたしましょうか。
まあ、そんなわけで私こと、カーネリアンはお嬢様に仕えることとなったのです。
専属侍女として迎え入れられた私に与えられた仕事は、お嬢様と一緒にいること、それだけです。
それだけでいいそうです。
私の役目はコミュ障であるお嬢様の精神安定剤及び、他者とのパイプ役だそうですから。
一緒に食事をとり、一緒に学び、一緒に本を読み、一緒に習い事をし、一緒に遊ぶ。
三食昼寝付きおやつ付き。
何と楽な……、光栄な役目でしょうか。
この手記帳は私が仕えることになったことを非常に喜ばれたお嬢様から記念にと贈られたものです。
非常に立派なものなので、最初は頂くのは固辞しましたが、お嬢様は笑って「私じゃお絵かき帳にしちゃうもの。……それも一枚であきそう」と仰ったのでありがたく頂きました。
だってそれだと手記帳の役目が果たされなくて、もったいないですから。
表紙の皮も、装飾に遣われてる宝石もいざって時売れるし……。
あ、もちろんいざって時ですよ、いざ。
売りませんよ、……まだ。
この回ラストで♯1のはじめまで時間軸が戻ったわけです。
後はボチボチカーネリアンのユークレースお嬢様観察記録、的な感じのものを不定期更新していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。