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♯3

カーネリアン、主に出会う、の編。

 では、再び一人になってしまった私がどうしたか、をここに記したいと思います。


 こんな私に手を差しのべてくれた、あの優しい人を亡くしてしまったことはとても悲しいことでした。


 しかし、私は生きているのですから、食べていかねばなりません。


 今後のことをどうしようか、と頭を悩ませました。


 家の方は、ご婦人は近しい親族の方がいなかったらしく、このまま住んでいても大丈夫なようでした。


 けれど、食べていくには働かなければなりません。


 今しばらくはご婦人が残してくれたもので食いつないではいけますが、いつかそれも底をつく日がやってきます。


 しかし、多少頭がまわるからといっても私はまだ幼児の域を出ません。


 体力的には同年代の子供以下なのは間違いないでしょう。


 こんな私を誰が雇ってくれるというのか。


 孤児院へ戻る選択肢はありません。


 きっと同じことの繰り返しになるのに間違いないであろうから。


 ……自分の年齢が憎い。


 一足飛びに大人になれればすべて問題は解決するのに腹立たしい。


 いっそ、頭の足りない人の言うことをよく聞きそうな大人を見つけ出し、私それを隠れ蓑にの手腕で商売でもはじめてみようか。


 しかし、そんな都合のいい大人を見つけ出すことができるのかどうか。


 そんなことをぐるぐると考えていてもこれぞという妙案が浮かばなかった私は、ふらりと教会へと足を向けました。


 今は安らかに眠る、優しかったご婦人を恋しく思ったのかもしれません。


 が、今思うとそのご婦人に導かれたのかもしれません。


 あの方との出会いを。


 その辺りに咲いていた野の花を摘み、教会にある彼女の墓に辿りついた私は先客がいるのを見て、足を止めました。


 私より年上らしい少女は、その上等なドレスが汚れることもかまわずに、ご婦人の墓の上に突っ伏して泣いているようでした。


 私が近づいていくと、その足音に気がついたのかその少女はビクリと身体を震わせました。


 そして、ゆっくりとその身を起こすと怯えた様子で振り返りました。


 その少女の顔を見て、私は目を見張りました。


 見たことのないような、美しい少女がそこにはいました。

 

 白金プラチナの長い髪はけぶるように輝いています。


 陶器のような美しい白い肌はまるでつくりもののよう。


 澄んだ湖のような淡い青と緑が混じったような瞳は涙で濡れて、本物の宝石のようでした。


 普通は泣いたら目の周りが腫れ、ぶっさいくになることこの上ないのに、水晶のような涙を溢れだしているその少女の美しさは少しも損なわれることなく、更に輝きを増しているかのようでした。


 私は魂を抜かれたかのように、ただただその少女を見つめていました。


 そしてその少女も、最初の怯えた様子とは一転驚いたような表情になって、私を見つめていました。


 どれくらいの時間が経ったのでしょうか。


 少女はくしゃっと顔を歪ませると、更に涙を溢れさせました。


 そして、「ばあや」とその愛らしい口で私に向かって言ったのです。


 私はその時反射的に「誰がババアだ誰が」と返しました。


 これが、私と私の主になるお嬢様、ユークレース・フローライト様の出会いであり、初めて交わした言葉なのでした。


次回もお願い致します。

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