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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
グロスティア
24/172

24話 初の討伐依頼


フォレストウルフの討伐依頼を受けた俺達は再度森に向って歩いていた。ブランダの門を潜る時に門番に森に忘れ物かと茶化されてしまった。街道を外れてもう一度森に向かう。


「別の用事とはいえ、この短時間で同じ場所に行くのはなんだかなぁって思うね。」


「あはは、まぁお試しで星2つの依頼を体験するって名目だったんだからしょうがないよ。こう行ったことがある場所に一瞬で移動できれば楽なんだろうなぁ。そうだ、ねぇヨーヘー、テレポートって使うと疲れるって聞いたけど、実際どれくらい疲れるの?」


「テレポートは見えている範囲じゃないと転移できないから、行ったことがある場所に飛ぶことは出来ないけど、そうだな、距離に関係なく結構本気で1メール走ったくらい疲れるかな。」


「それは・・・やめようか。辛そうだもんね。」


「いざって時は便利なんだけど、今はいざって時じゃないしね。」


「疲れた状態で戦闘は危ないもんね。」


1時間半後、再び森の中のフォレストウルフが目撃された場所にやってくる。


「どうやって探しますかね。」


俺もアリアも森なんて慣れてない。糞や足跡から居場所を特定するようなスキルも持ってない。


「ヨーヘーが私を探した時に使ったサーチは?」


「サーチ対象のサンプルが必要なんだよ。」


あれ、これ見つかるのか?この先の湿地帯にいそうなアイアンフロッグとクロコスネークなら大体当たりはつくんだけど、フォレストウルフは名前の通り森に生息する狼さんの魔物だ。この森すっげー広いんだよ・・・。たぶん縄張りとかはあるんだろうけど、どこだかわからん。これは受ける依頼ミスったか?

途方にくれそうになっていたら、辺りに獣の気配がする。


「ヨーヘー。これって・・・」


「あぁ、囲まれてるね・・・」


すると1メートル超の狼が1匹猛スピードで突進してきた。俺達が見つけるまでもなく、向こうが俺達を見つけてくれたわけだ。


「ガァウ!!」


「うわっと!」


「きゃあ!」


なんとか回避するが、突進の第2波、第3波が続けてやってきた。


「うわわ!」


避けて体勢が崩れたところに次の攻撃がやってくる。随分考えられた波状攻撃じゃないか!

てか、数多くね!?

5匹って聞いてたんだけど!?

なんか15匹くらいいませんかね!?

くそっ!この数相手だと躱しきれなくなっていつかやられる!


「アリア!大丈夫!?」


「なんとか!直進的な突進しかないからだんだん慣れてきた。そろそろカウンターで魔法打ち込めるよ!」


なんだって?俺まだ見極められないんだけど!?

避けることに必死で視野が狭くなっていたようだ。アリアに言われたように狼の動きを観察してみる。

なるほど、確かに直線的だな。


「見える!俺にも見えるよ!アリア!」


ガブッ!


「痛ぇぇぇええ!!」


見えた事に喜んでいたら後ろからお尻を噛まれた。


「ヨーヘー!?『ロックランス』!!」


「ギャウッ!?」


俺のおお尻に噛み付いたフォレストウルフはアリアが魔法で出した地面から突き出た尖った石柱に串刺しにされて絶命する。


「大丈夫!?あぁ血が出てるよぉ。」


「くっ・・・俺はここで死んでしまうのか?」


「お尻を噛まれたくらいで大げさな。」


「目が霞んできた・・・アリア、俺が死ぬ前に膝枕をしてくれないか。」


「今度ね。今は遊んでないで戦闘に集中して。」


アリアに怒られたし冗談はこれくらいにしておこう。さっきは油断したが、この会話中もしっかり回避運動はしていた。

軌道さえ読めれば避ける事くらいなんてことはない。15匹くらいいるのに突進してくるの結局2~3匹だしね。

頭はいいんだろうが、攻撃が単調すぎるな。

ていうか尻が痛い。犬に尻噛まれるとか漫画的展開過ぎて笑えてくる。

さて、いい加減ウザったいのでちょっと数減らすか。アリアは突っ込んでくる狼の正面に尖った氷柱を出現させて串刺しにしたり、避けた後に走り去ろうとする狼に魔法を放って追撃していた。相手が自分から向かってきてくれるわけだから、アリアと同じようにカウンターっぽい魔法を使ってみるかな?

突進を止めて尚且つダメージが与えられるのがいい。実は魔法の構想は暇な時に練っていて、すでに完成している。あとは実戦で使えるか試すだけだ。


「アリア、新魔法を使ってみるから時間稼いで。俺が合図したら俺の傍まできてね。」


「新魔法?特殊魔法を作ったの?」


「いや、自然魔法だよ。ちょっと溜めがいるから10秒くらいよろしくー」


「わかったよ。『ウィンドストーム』!」


アリアが魔法を使うと森の中を強風が吹き荒れて木々が軋んでいる。狼達も突然の強風に驚き身を伏せて耐え凌いでいる。

よし、ここはアリアに任せて魔法をまとめよう。魔力にイメージを載せて・・・こんな感じでいいはず。


「アリアいいよ!」


「わかったわ!『アイスニードル』!」


最後に牽制で魔法を放って俺の横にやってきた。アリアは牽制のつもりだったのだろうが、無数の氷の針は狼達を貫き、命の灯を消してしまっている。俺の分も残しておいてよ!?全部倒しちゃったら新魔法のお披露目が寂しいデビューとなってしまう。

辺りを見渡すと5匹のフォレストウルフが地面に横たわっている。

5匹か。大丈夫、まだ数は残っている。

戦意を失っていないフォレストウルフの3匹が時間差で突進を掛けようとしていたので、新魔法を唱える。


「『レーザープリズン』」


2m四方に光の線で作られた檻が出現し、俺とアリアを囲う。

そこにフォレストウルフが突進してきて、檻に触れる。


「ギャゥ・・」


続いて時間差で突進してきた2匹も檻に触れた。


「「ガッ・・」」


「・・・・・・」


まるでところてんのようだった。なんていうか・・・とてもグロい。

アリアがところてんになったフォレストウルフを見て絶句している。

他のフォレストウルフは仲間の惨劇を見て警戒して光の檻に近づけないでいる。


「アリア、今がチャンス!やつらは突進しか攻撃手段がない。突進するにはレーザープリズンをぬけなくてはならない。これに触れたらあんな風になるから近づけない。俺達は魔法師だ。遠距離攻撃ができる。レーザープリズンを超えて攻撃する手段がある。つまり、ずっと俺達のターン。」


「はっ!?」


「アリアさん、やっておしまいなさい。」


そこからはワンサイドゲームだった。俺は檻の維持。アリアは檻の中から魔法攻撃。20秒で残りのフォレストウルフを退治できた。


「ねぇねぇヨーヘー。今の魔法教えてね。」


「もちろん。ただ、魔力消費大きいから気をつけてね。維持もメンドイし。」


「うん、遠距離攻撃持ってる敵にはやらないほうがよさそうだね。」


「相手を捕らえるって使い方もあるから便利な魔法だとは思うんだ。この檻を動かせるようになればかなり強力な魔法になると思うんだよ。要改良だね。」


「たしかに。捕らえた上で檻動かされたら避けようがないもんね。」


「だね。それでね、アリアにお願いがあるんだけどいいかな?」


「うん?なぁに?」

「俺の尻の血が止まらんのです。治してやってはくれませんでしょうか。」


「あ、ごめんね忘れてた。『ヒール』」


尻の痛みが引いていく。よかった。


「これでフォレストウルフの討伐も依頼数分倒せたし、明日湿地帯に来るかもしれないからまだ少し時間もあることだし下見だけでもしておかない?」


「そうね。湿地帯はあっちの方だっけ?」


40分程湿地帯がある方角に歩いていると、途中でブランダ鹿が3匹見つけられたので狩っておいた。角は売れるらしいけど肉はどうなんだろう?あとで肉屋に持っていってみるか。


辺りにだんだん木がなくなってきて、大小の水溜りが多数ある湿地帯に出た。


「ここ足を取られそうね。」


乾いた地面はないな。草の丈は30cmくらいだろうか。これならアイアンフロッグやクロコスネークもすぐに見つかるかもしれない。っていうかいた。あれがクロコスネークか。でかいな・・・。5mくらいありそうなんですけど。

少し観察していると、クロコスネークがソーッと移動を始めた。その先にいるのはアイアンフロッグだ。

背後から忍び寄るクロコスネーク。距離はどんどん縮まっていき3mくらいになった時、クロコスネークが動きを止めた。アイアンフロッグが何かの気配に気付いたのだろう。辺りを見回してその視界にクロコスネークを捕らえた瞬間前方に跳躍した。その後をクロコスネークも全身を使った跳躍で飛びつきアイアンフロッグをその顎に捕らえた。捕らえられながらも必死に逃げようとするアイアンフロッグ。次の瞬間。ゴキュッ!っと音がして鮮血が舞った。動かなくなったアイアンフロッグをグイグイと飲み込んでいる。

え?これ星2つなの?強くない?アリアを見てみると苦笑いしている。

なんだあれ。魔物図鑑には「移動速度はそれ程速くないが」って書いてあったけど、あれ速ぇよ!?

一瞬溜めがあったからそう見えただけかもしれないけど、瞬間的な速さが脅威なんですけど!!

なるほど、一般的な成人がまず勝てないの意味がちょっとわかったわ。

やるにしてもやらないにしても、一回現物を見ておけてよかった。

もう一度ヤツを観察してみると、うん確かに移動速度は速くはないな。接近されなければいいって書いてあったもんな。幸い俺達フリーターは魔法師しかいない遠距離攻撃が得意なパーティだ。なんとかやりようはあるかもしれない。

しかしでかいなー。さっきより近くにいるから余計でかく感じるな。

うわっ、正面から見ると結構な威圧感だ。

あの牙凄いな。噛まれたら逃げられないよ。

・・・・・・さて、なんであのワニモドキさんはこっちに向かってきてるんでしょうかね?

答えは簡単である。俺達を食べる為さっ!


「アアアアア、アリアーーーッ!逃げるよーーー!!ダーーーッシュ!!」


「「うわぁぁぁぁああああ!!」」


俺達はすぐに回れ右をして森に向かって一目散に逃げ出したのだった。

何あれ!?超怖い!昔やった携帯ゲーム魔物狩り2で初期装備のまま雪山でTレックスみたいなのに追い駆け回された時並みに怖ぇ!!

そのまま2人で街まで走り続けた。

俺達って結構体力あるんだって気付いた瞬間だった。


「ハァハァハァ」


「ンハァハァ・・・ハァッ」


「ハァハァ・・・宿に戻って・・・ハァハァ・・作戦・・会議ね・・ハァハァ」


「はぁはぁ・・うん・・はぁはぁ」




冒険者ギルドに立ち寄り、フォレストウルフの討伐を報告する。


「だ、大丈夫ですか?酷く疲れているように見えますが。」


「はい・・なんとか。」


そんな酷そうに見えるか。たしかに怖かった。


「えっと・・・え?フォレストウルフ16匹ですか!?それはお疲れになるでしょう。お怪我とかありませんでしたか?」


「尻を噛まれましたがもう治療は済んでますよ。」


「尻を・・・?プクッ」


なんでこのお姉さんは震えているんだろう?もしかして笑いを堪えているのか!?


「だ、大事に至らなくてなにより、です。」


口元ニヤけてるんですが!まぁ俺も尻はないだろうと思っているからまぁいいけどさ!

とりあえずお姉さんが落ち着くまで待つか・・・


「ごほん、失礼致しました。」


ホントだよ!?失礼にも程があるよ!!


「あとこれの買取もお願いします。」


「ブランダ鹿の角ですね。6つですから1,800レンスで買取致しますね。本日の報酬はまとめて2,800レンスになります。」


「ブランダ鹿の肉って売れたりしますか?」


「当ギルドでは買取はしていませんが、肉屋さんならば買取してくれると思いますよ。」


「わかりました。ありがとうございます。」




ギルドを出て肉屋に向かい買取をお願いしたところ、3頭で6千レンスになった。安いんだかわからんけど、狩り易い動物だったし、6千レンスも貰えたから良しとしよう。



宿に戻ったところで丁度夕飯の時間になっていたので、食堂で夕飯を済ませることにする。今日は何かの肉のステーキと豆の炒め物だった。宿の食事とかしていて思ったことなんだけど、この世界の味付けは基本的に塩なんだろうか?

塩味ベースのものが多い気がする。塩味は嫌いじゃないが、こう毎日塩味だと飽きてしまいそうだ。焼肉とかステーキ用のタレを作っておこうかな。色々調合して試行錯誤しながら最高のタレを作ってやろうじゃないか。

・・・思ったんだけど、地球産の調味料やら食材を持ち込んでるわけだけど、これを素材にしてクリエイトしたら料理しなくても完成品が出来上がるんだろうか?

部屋に戻ったら実験してみよう。まぁまずは明日の作戦会議をやらないといけないな。

食後にミランダさんに明日も宿泊する旨を伝えて部屋に戻った。


「さて、クロコスネークだけど、どんな方法で倒そうかね?」


「あのね、今冷静になって考えてみたんだけどね。レーザープリズンで倒せるんじゃない?」


「・・・・・・」


そういえばそうだな。そもそも近づく必要ないわけだしな。

今日はフォレストウルフに不意打ちくらって接近戦をやってしまっただけで、本来なら遠距離でしとめるのが魔法使いってやつだ。接近戦をする魔法師もいるだろうが魔法使いとしての花形はやっぱり遠距離から高威力の魔法をドカーンとやることに浪漫があると思うのだ。

クロコスネークのあのビョーンってジャンプがどれくらい届くのかを見極めてやればアッサリ終わりそうな気がしないでもない。


「あ、でもあれ使うとバラバラになっちゃうから素材が勿体なくないか?それにたぶん危険だってわかれば動かないかもしれない。こっちの魔力切れを狙ってくるかもね。まぁその間アリアは攻撃し放題だけど。」


「じゃあレーザープリズンで動きを止めて、魔法攻撃するって作戦でいい?突っ込んできた時は素材は勿体ないけど、安全第一で行きましょ。」


「OK、それで行こう。もしクロコスネークがレーザープリズンを抜けてやってきた場合は距離を取りつつ魔法攻撃ね。」


「うん、わかったわ。足場も悪いし、他にも敵がいるかもしれないから周囲にも警戒は忘れないでね。」



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