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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
帰ってきたグロスティア編
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152話 林業

少し時間が飛びます。

過去に行ったことは抜きにして、ミイ師匠のところから旅に出て3ヶ月しか経っていないことに気付いたから時間を飛ばすわけじゃありませんよ?

「ふっふっふっ、見よっこの緑の大地を!この森はワシが育てたっ!」


「まだ森と呼べる程の木々ではありません。ヨーヘーのブーストで成長を早めていると言ってもまだまだ全然若木です。」


「こんなに立派に育っているのに・・・、エルフの目は厳しいね!」


この半年、キクケ湖周辺の生態を根絶やしにした罰として、植林作業を進めていた。

街で若木を買っては運搬して植えるという作業を繰り返していたのだが、最初は効率が悪かった。

クローンを使って楽をしようとしたりもしたのだが、クローンで増やした木はすぐに枯れてしまったので、地道に増やしていたのだ。

しかしトリスが挿し木の技術を覚えてからは一気に作業が進んだ。こればっかりはトリスに感謝だ。トリスがいなければあと2年くらい掛かったんじゃないかと思う。

辺り一面に茂っている木々はブーストを使って10倍速で成長させているので、半年の10倍。つまり樹齢5年なのだが、この木達は成長が早い品種なのか、見た目は立派な木に見えるのだ。まぁ木登りしたら折れそうではあるが・・・

ここまで育てばもう放っておいても大丈夫じゃないかと思う。

鳥達も戻ってきたし、小動物もチラホラ見かけるようになった。あとはブーストを解除して自然に任せてもいいと思う。


半年も時間が進むと色々なイベントもあったな。

例えばハルバーレに来たのが2月頭だったので8月までの間に2人の誕生日があったとかだ。

誕生日の日だけは植林作業をそこそこにして当人を祝う事にしたのだ。(ちゃんとギルドの許可は取ったよ?)

誕生日を迎えたのはタァマちゃんとアリアだ。

俺の誕生日の時に祝う祝わないでアリアと喧嘩した苦い経験から、パーティメンバーの誕生日はそれぞれ把握して皆で祝うということになっている。

俺:12月22日、アリア:3月30日、タァマちゃん:2月22日、トリス:10月13日、マグロ:10月6日、ガオー:不明、そしてイノッチは1月1日ってことにしてある(いの一番的な感じで)。ガオーは生まれた時から奴隷だったので、誕生日とかは知らないのだそうだ。なので天獣王に即位した日でいいと言っていた。

・・・天獣王に即位した日っていつだっけ?リオンが生きてたら聞いてみよう。


まぁ、そんなわけで今回はタァマちゃんとアリアの誕生日を迎えたわけだが、タァマちゃんの誕生日は本人の強い希望もあってカレーパーティだった。カレーを作るときは普段は市販されているカレーのルゥを使っていたんだけど、アリアと相談してスパイスから作ってみようということで、日夜配合の研究をしていたのだ。

無駄に買ってあった調味料の中に、カレーに必要なクミンやらターメリック、コリアンダー等は持っていたからなんとかなった。持っていなかったスパイスに関してもカレーパウダーの中から抽出して必要分を確保したのだ。

後はコレだという配合の黄金比を探す日々の連続だった。

なんとかギリギリで俺とアリアの特製カレーを完成させたのだが、その副産物としてほぼ毎日がカレーになった。

タァマちゃんにとって完成されたカレーよりも、毎日色々な味のカレーが食べれた事がなにより嬉しかったらしい。

誕生日を迎えて、最高のカレーを食べた後に、今日でやっとカレー生活は終わりだねとアリアと話していたら、その言葉を聞いたタァマちゃんの落ち込みっぷりったらなかった。

俺とアリアは慌てて近いうちに作るという約束をして、なんとか機嫌を直してもらったのだ。タァマちゃんはその内白い毛が黄色くなるんじゃないかとちょっと心配になる。

まぁ俺とアリアも苦労して作り上げたカレーを作りたいという気持ちもあったんだからいいんだけどね。

でも次は本格的カレーじゃなくて、市販のルゥを使ったカレーを食べたいなぁ。

カレーってさ、子供の時から慣れ親しんだ味っていうのが最高のカレーだと思うんだよね。

インド料理店とかで食べるカレーも美味しいけど、一番美味しいのは家で作ったカレーだと思う。

家以外で食べるカレーは、いかに自宅のカレーの味に近いかというのが好みの分かれ目だというのが俺の自論だ。

まだカレー歴の浅いタァマちゃんやアリアを、俺の作るカレーこそが至高であると刷り込んでいきたい。


次にやってきたのはアリアの誕生日だけど、これはもう凄い気を使った。

なんてったって俺の婚約者だ。気合いが入るのも当然というものだ。

腕によりを掛けて出来る限りの最高の料理を作り、精魂込めて作ったプレゼントを用意した。

俺の作った料理を食べた後に、皆がアリアにプレゼントを渡していく。そして最後に俺の番だ。

俺が用意したのは、俺の技術の粋を集めて作った髪飾りだ。最高の素材を使い、ルドールの魔道具技術を惜しみなくつぎ込んだ一品。

値段をつけるとしたら、これ1つで小さな国なら買えるんじゃないだろうか。

使った素材や魔道具の効果を説明したところ、アリアから「付けられるか!」というありがたい言葉と脳天チョップを頂き、ブラックボックス行きになったのは悲しい思い出だ。

どうしてこうなったのだろう。魔力を通すことで、周辺(かなり広範囲)にアリアの美しさをアピールする為のチャーム効果を振りまき、誰からも好意的印象を持たれて、アリアのいう事をなんでも聞いてくれるという効果なのに・・・。

友達の少ないアリアからしたら喉から手が出るほど欲しい魔道具のはずなんだけどなぁ。

このプレゼントに全力を注いでいたから、これを受け取って貰えないと渡す物がなくて困ってしまった。

苦肉の策で自分の首にリボンを巻いて、「プレゼントはわ・た・し(はぁと)」をやってみたら、何故か凄く喜ばれた。引かれると思ったんだけどなぁ。

トリスからも自分の時もそれでお願いしますとリクエストを貰ったほどだ。そんなにいいか?これ。

とまぁ、パーティ内のビッグなイベントはこんな風に催されたということだ。


冒険者ギルドから言われている植林作業も順調になので、そろそろ終わらせてもいいかを冒険者ギルドに確認してみようという話になった。

定期的にギルド職員が視察に来ているので、細かい内容を報告する必要はないのだけど、それと完了とは別の話だ。

冒険者ギルドが完了を認めてくれないと植林作業から手を引く事が出来ない。

最近森を作る作業が楽しくなってきたので、冒険者を辞めて林業を営むのもいいかなと思い始めているが、せめてお墓参りだけでも終わらせないと、昔の仲間に申し訳が立たない。最低限兄貴の墓参りが終わるまでは冒険者として旅を続けたいと思っている。

そんなわけで植林作業を完了させてもいいかを確認するのだ。




「正直あそこまで復元するとは思っていませんでした。必要量を植えてくれればそれで完了としてよかったのですが、フリーター様の作業に目を奪われ、そちらから話が来るまでは任せようという上層部の決定だったので、口出しはしなかったのですが、まさか半年もやるとは思っていませんでしたよ。私共の間でも冒険者から鞍替えするんじゃないかという笑い話にもなっていたくらいです。」


おぃぃぃぃっ!!そういう事は最初に言えよぉぉぉ!!

それで終わりなら1ヶ月で終わってたじゃん!!半年もやる必要なかったじゃんっ!!

つか何?笑い話なの?そっちがやれって言ったんじゃないかっ!それを笑うってどういうことだ。まぁ冒険者からの鞍替えは選択肢としてあり得たけどな!意外と楽しかったよ!!


「フリーター様が完了と判断したのであれば、植林作業は完了として頂いて結構ですよ。」


「・・・そうッスか。それじゃ完了ということでお願いします。」


「承りました。では今より冒険者依頼を受けて頂いて結構です。何か受注しますか?」


そうだな・・・1、2個依頼を受けてから兄貴の眠る場所に向けて出発するか。

カウンターから離れた俺達は依頼板まで足を運んで貼り出されている依頼を確認する。

しかし、昼頃という時間なこともあり、目ぼしい依頼は見つからなかった。

その中で少し気になる依頼があることに気が付く。


中級以上限定依頼

[護衛]小国群までの護衛


俺達の目的地は小国群なので、この依頼は調度いいんじゃないだろうか。

皆で話し合った結果、ついでだから護衛依頼の経験も積んでおこうという結論になったので、受注する旨を受付嬢に伝える。


「はい、こちらの依頼ですね。承りました。護衛対象の方は2名です。連絡をしておきますので、明日の朝にもう1度来て頂けますでしょうか。」


「はい、わかりました。ではこれギルドカードです。」


「お預かりします・・・・・・はい、受注処理完了致しました。では、明日宜しくお願いします。」




冒険者ギルドを後にした俺達は、旅に必要な物、護衛するのに必要になりそうな物を買いに商店街にて色々と買い揃える。


「なんか急に出発することになっちゃったね。昨日までの生活を考えるともうちょっとゆっくり整理してからでも良かったかなって思うけど。それにしても護衛依頼かぁ。ブリードさんの時みたいな感じでいいのかな?」


「ブリードさんは商人でしたので商品も護衛対象に含まれましたが、今回の護衛対象は人のみになりますね。少し勝手が違うかもしれません。商人を狙うのは魔物や盗賊ですが、要人護衛になるとそれに加えて刺客にも警戒しないといけません。盗賊なんかより戦闘訓練をしている者を相手にする可能性もありますから、難易度は上がると思いますよ。」


「なるほど、一応そういうのは経験あるな。あの感じでいけばいいのか。」


「ヨーヘーはそういう護衛やったことあるの?私と一緒の時じゃないよね?過去でやったとか?」


「うん、あるよ。聖女様の護衛という名誉ある職についてたからね。」


「あー、なるほど。それはこれ以上無い護衛対象だね。私は要人護衛とかやったことないから色々教えてね。」


「なぁに、簡単さ。見敵必殺の心構えで行けばいいのさ。」


「聖女の旅ってそんなに殺伐としてたのっ!?」


「そりゃこの時代みたいに皆が皆セリアに好意的だった訳じゃないからね。セリアの人気に嫉妬した人や、利用しようとした人なんてゴロゴロいたよ。まぁそんな奴等は再会してから過保護になったユグドが叩き潰していったんだけどね。セリアを守るあいつの前では盗賊も刺客も貴族も王族も扱いが同じだったなぁ。」


「ユグドお兄ちゃん・・・。」


「よし、護衛依頼の準備はこんなもんでいいかな?護衛任務だから、送り届けるまでは一緒に行動することになるだろうし、どんな人かわからないからマジカルハウスは表立って使えないかもしれないからテントも必要かな?テントってあったっけ?」


「前に買ったのがあったと思うけど、4人用だったと思う。護衛対象用のテントもこっちで用意した方がいいのかな?」


「それは必要ないのではないですか?そこまで面倒を見る護衛依頼は聞いた事ありませんし。ただ、魔物の襲撃でテントが壊されてしまう可能性もありますから、予備のテントは用意しておいた方がいいかもしれませんね。」


「1個あるならクローンで増やしちゃうけど、大人数用のテントも買っておく?」


「いえ、魔法の袋を使わないのであればあまり大きいと持ち運びに難がありますし、4人用の物を3つ程用意すればいいと思います。」


「テント3つ持ち運びか・・・。ガオーに持ってもらえばいいか。」


「ちょっと待てコラ。男が1人1つ持てばいいじゃねぇか。なんで俺様が全部持つんだよ。」


「だって俺はか弱い魔法師ですよ?テントなんて持って歩いたら筋肉痛になっちゃうじゃないか。」


「お前ぇ重力魔法で重さ操れるんだろ?お前ぇが全部持てや。」


「いやいや、今こそお前の力強さをアピールするいい機会じゃないか。その鍛えられた筋肉はなんの為にあるんだって話だよ。」


「少なくとも荷物持ちの為じゃねーよ!」


「ちっ、軟弱者めっ。張りぼて筋肉。無駄マッチョ。観賞用。」


「あ゛ぁ゛っ!?言いやがったなっ!?俺様の筋肉が見せかけだと!?いいだろう、持ってやろうじゃねーかっ。テント3つだろうが5つだろうが持ってやるよっ!俺様の筋肉がどれだけスゲェかをその目に焼き付けやがれっ!」


「はいよろしくー。」


ガオーのやつは自分の力と筋肉に自信を持っているから、それを否定するとムキになるのだ。力が必要な仕事がある時は、そこを突いてやると高確率で押し付ける事ができるのだ。つまりチョロイのだ。

実際力だけならガオーはかなり強かったりする。天獣王軍の中でもトップ10には入っていたんじゃないかと思う。ナンバー1は断トツでローリーだけどね。あれは生き物と比べちゃいけないと思う。自然災害クラスだからな。

ローリー>>>>>>>>>>>>>越えられない壁>>>2番>3番って感じだ。


そんなやりとりをしつつ、必要な物は粗方買い終わったので、宿に戻って明日に備えてゆっくり休むことにした。

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