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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
帰ってきたグロスティア編
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150話 キングコカトリス


「あれはキングコカトリスっ!コカトリスの数が多いと思っていましたが、あんなものが群れを作っていたのですね。あれは厄介です。コカトリスと違い、豊富な石化液を保有しているため、石化ブレスを使ってきます。危険ですからブレスの届く範囲にいてはいけませんっ。」


なるほど、ペプシじゃないのか。

キングコカトリスね。そんなのまでいるんだな。そして石化ブレスか。キングになってやっと俺の知っているコカトリスになったということだな。

コカトリスは石化攻撃してこないから拍子抜けしてたしね。

そういえばマグロって石化されたらどうなるんだろう?凄い気になる・・・


「マグロー、一番の見せ場がやってきたぞー。やってしまいなさい。」


「うむ・・・ヨーヘー、何故だろう?なぜかミーの足が震えているのだよ。」


それは魚にとって鳥は捕食者だからだと思います。本能的に恐れているんだろう。

でもこれを克服しないと、今後鳥型の魔物を相手にする時にマグロという前衛が使えなくなってしまう。なんとか頑張ってもらいたいところだ。


「マグロ、相手はたかが鳥じゃないか。猫に比べれば恐れる程のものじゃないだろう。俺はマグロなら出来ると信じてるよ。」


「信じて・・・そう、そうかっ!今ミーは頼られているんだなっ!なーっはっはっはっ!なぁに、あんな3歩歩けば物事を忘れそうなパッパラパーなんぞにミーが恐れを抱く必要などあるわけがないっ!タァマ様が古竜ならば、あんな鳥なんぞ若竜みたいなもの!恐るるに足らんね!いっくぞぉぉぉぉっ!!」


それでも竜並みに怖いと感じている事にあいつは気付いているのだろうか。しかしそれよりもあいつの中でタァマちゃんはどんな存在なんだろうか。あんなに可愛いタァマちゃんのどこに恐怖を感じているのか今度じっくり話し合いたい気がしないでもない。

キングコカトリスだが、マグロに馬鹿にされた事を理解したのか、トサカを立てて怒っているように見える。マグロの健闘を祈ろう。


キングコカトリスに突っ込んでいったマグロは期待を裏切らず、キングコカトリス他2羽にボコられている。

あんなに勇ましく突っ込んでいったのに、すでに涙目でこちらに助けを求めているのだ。なんとも情けない姿である。

このままボコられているのを見ててもいいんだけど、折角マグロが敵を引き付けていてくれているので、援護の魔法をぶち込んでやろうと魔法名を唱えようとした時だった。

いきなりキングコカトリスの胸筋が膨れ上がったかと思ったら、灰色のブレスをマグロに吹きかけたのだ。

おー、あれが石化ブレスか!

ブレスを吹きかけられたマグロは、みるみる内に石へと変わっていく。

それに巻き込まれる形でマグロをボコっていた2羽のコカトリスも一緒に石化されてしまった。マジか、仲間ごと石化しちまいやがった。

やがて完全に石化したマグロを前に、キングコカトリスは勝ち誇ったかのように翼をはためかせていた。

結構早く石化しちゃうものなんだなぁ。なんか想像してたより危ない魔物だ。

そしてマグロが復活してこない。

予想では「なーはっはっはっ!こんな物でミーは止められないよっ!ヨーヘー早く助けてっ!」って展開になると思ってたんだけどな。

マグロは全然石化から復活する気配がない。

むぅ、しまったなぁ。前衛を失ってしまった。どうしよう。

キングコカトリスは次の狙いをこちらに定めたのか、俺へ向かって突進してくる。


「『バリア』」


しかし、そんな突進を態々喰らってやる俺じゃない。キングコカトリスの進路に障壁を展開し、突進を妨害してやった。

キングコカトリスが障壁に衝突する。大きい事もあってわずかにバリアが軋むが、その足を止める事に成功する。

悔しそうにこちらを睨んでいたキングコカトリスだったが、上体を大きく仰け反らせると、その大きな嘴を障壁に打ちつけてきた。


バリーンッ!!


「いぃぃぃぃっっ!?」


たったの1撃で俺が展開した障壁を破壊してしまったキングコカトリスは再び俺に向かって突進を始める。


「「『アイスランス』」」


しかし俺とアリアが同時に魔法を唱え、氷の槍をキングコカトリスに向けて放つ。

魔法は見事に命中し、キングコカトリスの足を地面に縫い付ける事に成功した。

痛みからか、行動を邪魔されたからかはわからないが、足を地面に縫い付けられたままのキングコカトリスはその場で大暴れする。これはアイスランスが壊されるのも時間の問題かもしれない。

新たにアイスランスを放って、暴れられないくらい突き刺してやろうと、魔力を練ったところで、キングコカトリスの胸筋が膨れ上がった事に気が付いた。


「やっべぇ!」


俺とアリアだけなら回避できるだろう。だが、未だにハウリングの影響が残っているトリスと黒コゲのガオーは逃げる事は出来ないだろう。

くそっ、バリア間に合うか!

慌ててバリアを再展開させようとしたが、キングコカトリスから石化ブレスが吐き出されることはなかった。

突然ピタリと動きか止まったキングコカトリスは、糸が切れたかのように地面に倒れ伏したのだ。

倒れたキングコカトリスの頭の上には・・・


「にゃぁっ!!」


キングコカトリスを仕留めて、ピョンピョン跳ねて喜んでいるタァマちゃんが、俺に向かって嬉しそうに手を振っていた。


・・・ていうかいつの間に!?さっきまでハウリングで目を回していたのに・・・。

キングコカトリスを見ると、脳天に深々とタァマちゃんの忍者刀が突き刺さっていた。他にも首の至るところから血が流れ出ているので、首の血管を斬り裂きながら頭まで昇ったんだろう。脳天への一撃が致命傷になったのは間違いないが、首の傷も大ダメージを与えたことだろう。

あの短い時間であれだけ斬り付けるとは・・・タァマちゃん、味方でよかった。

マグロがタァマちゃんを恐れる理由がちょっとわかった気がする。

キングコカトリスも鳥なのだし、猫からしたら狩る対象になるんだろうな。

脳天から引き抜いた忍者刀が、日の光を反射して輝き、その剣を高々と天に掲げたタァマちゃんの姿を見て、まるで絵画を観ているかのような美しさを感じてしまった。これは後でペイントで複写してマジカルハウスに飾らければならないな。

英雄のようなタァマちゃんの姿に見惚れていたけど、すぐさまタァマちゃんが俺に抱き付いて甘えてきたので、一気に現実に戻された俺はいつも以上にタァマちゃんを撫で繰り回して褒めてあげた。


倒したコカトリスから使えそうな部位の剥ぎ取りと、魔結晶の採取をしていたのだが、キングコカトリスの魔結晶を取り出そうとしたところ、それは魔結晶ではない事に気が付いた。


「ねぇ、これって魔水晶じゃないかな?」


「おぉっ!ホントだ。天然の魔水晶なんて珍しいな!このキングコカトリス、随分長いこと生きてたんだなぁ。」


魔水晶は大量の魔結晶を精錬することで作ることが出来る。今は知らないけど、少なくとも千年前のルドールにはその技術があった。

魔水晶は魔結晶に比べて、かなり多くの魔力を内包することができ、出力量も段違いなので、魔道具を作る際に有用なアイテムなのだ。

だが、魔物から魔水晶が取れる事は非常に少ない。長く生きた魔物から稀に採れることがあるものなので、若い個体から取れたという例は無いらしい。少なくとも100年は生きた魔物からじゃないと出ないだろうという研究結果に落ち着いていた。

魔物の寿命でも100年生きるような種類は非常に少ないと言えるだろう。なので、天然の魔水晶というのはかなり稀少なのだ。

そして天然の魔水晶は人工的に作られた魔水晶よりも品質がいいと言われている。実際に見てみると、確かに人工物よりも品質が良さそうに見える。これは売らずに有効利用したいな。


コカトリスの剥ぎ取り箇所は石化液の入った液袋くらいだ。しかし、今回はキングコカトリスを討伐している。

キングコカトリスの石化液はコカトリスの石化液より強力なので、研究やアイテム利用するならこちらがいいだろう。

そうなるとコカトリスから剥ぎ取るような箇所がほとんどなくなってしまう。

液袋は売れるらしいので、一応剥ぎ取りしておくけどね。

キングコカトリスの液袋は自分達で使うことにして、コカトリスの液袋は売ってお金にしてしまおう。

使えるのはこれくらいかな?羽毛も硬いから寝具等には向かないし、かといって防具に成る程の強度もない。肉に至っては微妙な味なので、飢饉に襲われていない限り進んで食べる物でもないだろう。

剥ぎ取りの終わった個体は火葬を担当しているアリアに渡して処理して貰おう。

あとは・・・この石化した家畜達はどうするべきかな?

一応持ち帰るかね。石になってしまっているが、持ち主に確認する必要はあるだろう。




ハルバーレに戻ってきた俺達は、依頼主である畜産農家の代表さんに報告をした。

討伐依頼だから依頼主ではなく冒険者ギルドへの報告だけで構わないのだが、石化した家畜の処遇をどうすればいいか確認しておかないといけないと思ったからだ。

農家代表のおっちゃんは憎いあんちくしょう(コカトリス)を退治した事を報告すると、とても感謝してくれて、追加報酬としてでかいチーズを持ちきれないくらい持たせてくれた。これは素直に受け取っておこう。

石化した家畜については、こちらで処分して欲しいということだったので、チーズのお礼も兼ねて、このまま引き取って魔法の袋の中で眠らせることになった。あとで時間を見てコツコツイレイズすることにしよう。




冒険者ギルドでコカトリスの討伐報告をすると、ギルドカードの記録を見た受付嬢にコカトリスが群れでいたことに驚かれ、更にキングコカトリスまでいた事がわかると顔を青ざめさせていた。

どうやらこれは中級レベルの依頼では収まらないらしい。

それを討伐してきた俺達なので、かなり関心されてしまった。

・・・うん、関心されただけだった。次の言葉を待っていたんだけど、受付嬢はニコニコしているだけで続きはありそうにない。これでこの話は終わりってことか。ランクアップのラの字すら出なかった。まだまだ頑張れってことか。

さっきコカトリスの依頼は中級レベルじゃ収まらないって言ってたじゃないか。つまりそれって上級レベルってことだろ?それならランクアップの検討くらいしてくれてもバチは当たらないと思うんだけど、ダメですかね?

俺達のランクアップが駄目だというなら、せめてマグロのランクを落とすことを検討してくれないだろうか。

このまま粘っても進展がなさそうなので、ランクアップは諦めて別の手続きを進めるとしよう。

今までランクアップにはあんまり興味がなかったが、最低限マグロと同じ、もしくはマグロ以上のランクになるまでは頑張りたいと思う。主に俺の自尊心の為にだけどな!


報酬の受け取りと、素材の買取をしてもらったので、新たに「キクケ湖の生態調査」の依頼を受けてから冒険者ギルドを後にした。

今からキクケ湖に行くと日が暮れるので、明日の朝に出発することにして、俺達は宿屋に向かうのだった。

部屋の模様替えをしたら腰がとても痛くなりました。

ベッドの移動は1人でやるものじゃありませんね。

重かったので引きずったらに傷ががが(つД`)・゜・

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