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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
帰ってきたグロスティア編
143/172

140話 二つ名

21時に更新があると思って見に来てくれた方はごめんなさい。

見直しに時間を取られてしまいました。

夕飯を食べて20時45分まで寝てしまった作者が悪いのです。

その後も帝国兵の彼に酒を奢りつつ帝国について色々教えて貰った。

語り終わって上機嫌に席を離れていった彼を笑顔で見送ると、食事を終えた俺達も部屋に戻る事にした。

皆アリアの様子がちょっと変だという事に気付いているからか、自然と1つの部屋に集まって話をする流れになった。

俺達の部屋が4人部屋だからガオー達の部屋より広い為、俺達の部屋に全員で集まり、先程の話を総括することにする。


「アリア、さっきからちょっと浮かない顔をしているけど、もしかしてアドなんとかって皇子の新しい嫁と知り合いだったりする?」


「え?あ、うん。アドレイナ様ね。知り合いっていうか、ロレイ女学園同窓生なの。アドレイナ=ヴァイ=ヴァンレン。ロイト王国のヴァンレン公爵令嬢よ。ヨーヘー覚えてない?目立つのが大好きなご令嬢。」


「あー・・・あれかぁ。この話やめる?」


あれだな。学園時代にアリアをイジメてた首謀者だ。多感な時期に様々なトラウマをアリアに植え付け、アリアがボッチになった諸悪の根源と言える貴族の事だった。

どうしよう、一気に興味がなくなっちゃったよ。


「ううん、皆も気になるでしょう?それに私なら大丈夫だよ。今の私には皆がいるもの。」


ポツポツとアリアが学生時代のことを皆に向けて語りだすと、皆は黙ってその話に耳を傾けていた。


「そんなことがあったんですね。アリア・・・辛かったでしょう。」


「人族ってのはつまらねぇ事するんだな。俺様の軍にはそんな事する奴いなかったぜ。」


いや、たぶんいただろうよ。お前が知らないだけだ。

例えば数少ない人族の協力者は信頼勝ち得るのにかなり苦労したんだぞ?俺がどんだけ裏でフォローしたと思ってるんだ。

人族が相手じゃない場合でも、それなりに種族間で小さな衝突はあったんだ。

まぁ天獣王軍は基本的に脳筋だから絶対数は多くはなかっただろうけどな。


「アリア、今はミー達がいるから問題ないね!つまらない事なんて全部忘れて前を見ればいいのさっ!」


言ってる事は良い事だが、お前はもうちょっと過去を反省しろ。


「ふふっ、うん、今はもう大丈夫だよ。ありがとう。」


「なぁヨーヘー。もしかして公爵令嬢を助けようなんて思ってねぇよな?」


「えっ、なんで?助けようだなんて思ってるわけ無いじゃん。アリアに酷い事した奴だよ?そんなもん俺にとっては敵以外の何者でもないからね。」


「アリアはどうしたいんですか?」


「私は・・・もう関わりあいたくないかな。アドレイナ様も望んでのご結婚だと思うし。」


「だよなー。アリアから聞いてる性格から予想すると、今一番力のあるゴルスタ帝国の第1皇子に嫁ぐ事がステータスだと思ってるだろうね。それを邪魔しちゃったら下手したら恨まれる気がするよ。」


話し合いの結果、アドレイナ嬢に関してはスルーするということが決定しました。

こんな事を祈ってはいけないのだろうけど、祈らずにはいられない。

どうかアドレイナ嬢が不幸になりますように。

人を呪わば穴2つというが、構うものか。




日が変わり、皆で朝食を1階の食堂で食べて出発することにした。朝食はなんかの豆のグーツ、つまり豆の煮物だ。薄い塩味でまだ起き切っていない胃に優しく食べやすい物だった。

この豆は初めて見るけどなんの豆なんだろう?


荷物をまとめて宿を後にしたわけだが、このまま街を出ようと思っている。

街をあまり見ずに出立するのは、今までの俺達からしたらあまりないことだったが、帝国が占領している街だし、観光といった雰囲気でもないので、厄介毎に巻き込まれる前に出発してしまおうという話になったのだ。


皆と連れ立って街の出口に向かっていると、出口付近に人だかりが出来ていた。

見える人種はほとんどが帝国の兵服を纏った人達ばかりだ。少人数だがこの街の人っぽい人達もチラホラ見えるので、軍事行動ではないのだと思う。

良く見ると彼等は何かを待っているみたいだ。そこに溜まっていられると外に出辛いんだけどなぁ。果たしてあれは通り抜けられるんだろうか?

俺達が人だかりの脇を抜けようとすると、ワァッと歓声に似た声があがった。

どうやら誰かが到着したみたいだ。

周りにいた人達が前に出ようと後ろからどんどん押してくる。

くっ、なんて圧力だっ。ガオー!そのでかい図体で俺達を守ってくれぇ!

しかし、ガオーも頑張って抑えてくれてたみたいだが、人波を完全に抑える事は出来ず、ズルズルと押されていってしまい、気が付くと最前列ではないが、2列目くらいの位置に来てしまっていた。

来る人にちょっと興味はあるが、そんなことよりも今は外に出たい。なんとかしてこの集団から抜けないとっ。

ん?良く考えてみたら、ここはほぼ最前列だ。目の前には街の出口が見えるんだよな。

そっか、この集団の前を通っていけばいいんじゃないだろうか。

そう考えて前に出ようとすると、近くにいた兵士さんに止められてしまった。


「ちょっと待った!今はそこの出口は使えない!あちらに行列が見えるだろう。実は皇女殿下様御一行がこの街にお見えになられたのだ。殿下がここをお通りになられるまでここは通行止めだ。」


コウジョデンカサマ?高所電化サマー?皇・・・女・・・殿下様っ!?

なぜこのタイミングで皇女がやってくるんだ!?第一皇子じゃなくて良かったけれども!良かったけれども!!


「あんたら旅の人か?運が良かったなぁ。我がゴルスタ帝国の皇族の方を見られるなんて。なかなかお目に掛かれるもんじゃないんだぜ。」


兵士の人に運がいいと言われたので、ちょっとそんな気分になってしまった。

まぁ皇女様がここを通り過ぎるまで通れないみたいだし、ここで大人しく待ってるとするか。無礼があってはいけないから、マグロが何かしでかさないか注意することも忘れない。マグロに何もするなよと釘を刺したところ、そこまで無礼じゃないと反論され、プリプリ怒ってしまった。


そうこうしている内に皇女殿下御一行が街の入口までやってきた。

馬に乗っていた護衛と思われる騎士達が道の両側に展開する。

そして左右を騎士達に守られる形で道の真ん中を白馬に跨った女性騎士が歩を進めていた。


「あぁ、やはりシュネーリル第三皇女殿下は美しいなぁ。」


なんとあの人が皇女殿下らしい。皇族なんだからてっきり馬車でやってくると思ったのに意表を突かれた。

あの女性騎士が皇女様だとわかったので、その人物をよく観察することにする。

腰まで伸びた美しい銀髪と翡翠色の瞳。整った顔立ちをしていて殆どの者は彼女を見て美しいという感想を抱くだろう。高貴な身分というのが更にその容姿を際立たせているように思う。鎧を着ているので体型まではわからないが、スタイルも良さそうだ。アリアにも負けていないと思う。俺にとってはアリアの方が好きだけどね!

俺にとってシュネーリル第三皇女は気高そうで凛々しい女性という第一印象を持った。


「どうだい?シュネーリル第三皇女殿下は美しいだろう。」


俺が皇女御一行を眺めていたら、隣にいた兵士が俺に話しかけてきた。


「えぇ、あれほど美しい方はなかなか見る事はできないですね。ゴルスタ帝国の人はあんな美しい方の庇護の下に暮らせるのだから幸せですね。」


「はっはっはっ、そうだろうそうだろう!どうだ旅の人、お前もゴルスタの国民になるってのは。シュネーリル第三皇女殿下はいつも冷静で凛々しいお姿を御見せになられる。しかしその美しい姿に魅了されて下手に近づくと大怪我をすることになるぞ。シュネーリル第三皇女殿下は剣術の達人でいらっしゃる。不逞な輩は気付かぬ内に首と胴が離れることになるだろうな。」


「それは怖いですね。気を付けないと。」


他の皆も今の話を聞いて、ほぇ~と畏怖を持った視線を皇女様に向けていた。

俺も視線を皇女に戻すと、何故かこちらの方を見ている気がする。

この視線の先は・・・俺じゃない。俺の後ろの人物だ。

振り返ってみるとコイツはあんまり興味がないのか、でかい欠伸をしていた。不敬になるから欠伸はやめなさい。今スゲー見られてるんだよ。


そして俺の隣の兵士も皇女殿下がこちらを見ているという事に気付かずに説明が止まらない。


「そんな皇女殿下様が今まで斬り伏せてきた不逞の輩は数知れずって言われているんだ。美しい花には棘があるっていうもんな。それで皇女殿下様が皆になんて呼ばれているか知ってるか?その顔は知らないって顔だな。この二つ名はあれよあれよという間に広まっていき、今では本人公認だ。『茨の姫』、皆は皇女殿下を茨姫(いばらき)と呼ぶのさ。」


「プーーーーッ!!」


油断していた。思いっきり吹いてしまった。イバラキって・・・いや、あの県をディスるつもりはないが、イバラキはないだろう。

やばい、お腹痛い。あの皇女様のバックにあの県のキャッチフレーズである「なめんなよ」って文字がドーンと描かれるのを想像してしまう。ギャップが凄いな。クッ、ハハハ、ヤバイ、ツボった。腹筋が、腹筋が痛いよっっっ。


なんとか息を整えていると、周りが静かになっている事に気が付いた。

訝しんで周囲を見てみると、俺を見ている者や皇女様を見ている者がいることがわかった。

そして皇女様はというと・・・バッチリ俺を見ていた。あ、これヤバイかも?




「お主・・・少し訪ねたいことがある。なぜ笑った?妾は今まで人に笑われるような事はしてこなかったつもりだが・・・。」


「えっ!?あ、そのっ、わ、笑ってませんっ!」


これはヤバイ、なんとなくだけど、ちょっと怒っているような気がする。

これは不敬罪とか言われてしょっ引かれてしまうのではなかろうか?なんとかして切り抜けなければ。


「いや、妾の耳にはお主の笑い声が聞こえたぞ。聞き間違いかと思ったが、お主を見てみると腹を抱えて笑っておった。それとも何か?妾が嘘をついていると申すつもりか?」


「えっと・・・」


「ふむ、そこのお前。お前は先程この男に何か話していたな。その会話の内容を聞いてこの男が笑ったと推測するのだが、一体何を話していた。」


「ひゃっ、ひゃいっ!自分は可笑しなことはけっして言っておりませんっ!」


「可笑しなことかどうかは妾が判断する。何を話していたのか申してみよ。」


兵士の男は顔を真っ青にしながら俺に話していたことを皇女様に伝えていた。


「すると皇女殿下様の二つ名を聞いた瞬間、この男が吹きだして笑い出したのでございますっ!」


うん、貴方は間違っていない。ごめんね、なんか巻き込んじゃって・・・。でもちょっとはかばって欲しかったかなぁーって。


「ほぅ、するとお主は妾のイバラキという二つ名が可笑しかったというわけか。ふむ、そのようだな。お主の頬がヒクついているのが妾にも見て取れるぞ。」


こんのバカ頬筋!!ちょっとは空気読めよぉぉお!!いや、俺も悪いのはわかってる!でも現在絶賛ツボり中なのだ。仕方ないじゃないかっ!


「ヨーヘー・・・」


アリアやトリスがダメな子を見る目で俺を見てきた。

やめてっ!そんなマグロに向けるような視線を俺に向けないで!それとマグロォ!テメェそのどうしようもない奴だみたいなリアクションするのやめろっ!お前にやられるのは非常に腹が立つ!!


「お主は妾の二つ名である茨姫(いばらき)を別の解釈で受け取っているということがよくわかった。よし、ここではなんだ。場所を変えるぞ。ついてまいれ。」


「あー、えっと、ごめんなさい。ちょっとこの後塾にいなかいといけないので・・・」


「逃がさぬ。もし笑われるような二つ名を知らずに名乗っているのだとしたら、妾の品位が疑われるのでな。」


「うっ・・・ぐぅ。えーっと・・・あっそうだ!『テレポート』」


「あっ!」

某県の方で気分を悪くされてしまった方がいましたらごめんなさい。

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