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虹の先に繋がる世界  作者: 水無月 壱九
天獣王編
117/172

114話 獅子族の男

一応1週間以内に更新です!ギリギリでした。セーフですよね?一週間である168時間はオーバーしましたが、曜日的に見ればセーフです!

というわけで、ちょっと短いですが、新編スタートです。


セリアルドール598年




とある山中にて。


「ハァ、ハァ、ハァ、くそっ!あの主人めっ!何がギモト山中にあると噂される不死の秘薬を取ってこいだっ!どんな物かもわからずにどうやって見つけろって言うんだよっ!」


その男は雄々しい獅子のような風貌をしており、逞しい肉体を持っていた。種族で言えば男は獅子族である。獅子族は獣人族の中でも飛びぬけて身体能力が高い事で有名だ。雄々しい鬣は力の象徴として獅子族を勇猛に見せるが、本来は美しいとさえ言われている鬣がかなり荒れてしまっている。

そんな強靭な肉体を持つはずの男でも、4千メートル級の岩山群となるギモト山脈に足を踏み入れから、容赦なく体力を削られ疲労困憊の様子だ。

膝に手を付きつつ呼吸を整える男は途方に暮れていた。

実は彼は奴隷である。

この時代の獣人族は、殆どの者が人族に奴隷として使役されている。この男も例に漏れず人族の奴隷であり、今回このギモト山脈に足を踏み入れているのも、男の主人がこのギモト山脈のどこかに不老不死の秘薬があるという話をどこからか聞きつけたらしく、奴隷であったこの男に取ってくるように命じたのだ。


「ガァァッァッ!!あの野郎っ!奴隷紋さえ無けりゃあんな毛無し豚食い殺してやるのにっ!!なんだって俺がこんな目に・・・!ハァハァハァハァ・・・腹・・・減ったなぁ・・・。」


実はこの男、主人から秘薬を取ってこいと命令されたのはいいが、なんの準備も用意されていない。主人は男に命じたまま身一つで放り出したのだ。

ここまで食料は、身体能力を活かして野生の動物を狩り、なんとか食い繋いできたのだが、ギモト山脈に入ってからはその獲物も狩れていない。岩山で暮らしている獣達はこの土地を熟知しており、岩山に慣れていない獅子族の男が近づくと逃げられてしまうのだ。

ギモト山脈に入って2週間経つが、蓄えていた肉も1週間前に尽きてしまった。ギモトの天候が変わりやすく雨が降っていなかったら、もっと早くこの男の命は尽きていただろう。

それでも、水だけで生き長らえるわけもない。

こんな目に遭わせた主人に悪態をつきつつ空腹を紛らわしているが、それもそろそろ限界が近い。


「ハァ、ハァ、こんな死に方なんてねぇよ・・・。最後くらいは見晴らしのいいところで終わりてぇな・・・。山頂まで行ってみるか・・・?」


男は再び歩き始める。少しずつでも前に進み、山頂目指して歩き続けた。もう秘薬なんてどうでもよかった。ただ最後くらい少しでも満足しておきたかっただけだ。

山頂は見えているが、このペースだとあと8時間は掛かるだろう。フラフラした足取りは傍から見ていてかなり危なっかしい。

注意力も散漫になっていたので、男が足場に選んだ岩がグラっと揺れたことに気付くのが数瞬遅れてしまった。その数瞬の反応の遅れは男の体がバランスを崩すのには充分な時間だった。

体制を崩し、転倒してしまう男。

そして崖下に向かい滑落してしまう。


「うぉわっ!?アアアアァァァァァァッ・・・!!」



「生き・・・てる?」


意識を失っていた男は目を覚ます。

辺りを見回すと薄暗い。

意識を失っている間に日が暮れてしまったのだろうかと考えたが、すぐに上から光がさしていることに気が付いた。


「あそこから落ちてきたのか?チッ、どうせ餓死するならあのまま死んじまったほうがよかったのに・・・」


男がいる場所は洞穴のようだった。そんなに広くはない、20畳くらいの広さだろう。天井も5m程の高さの洞穴だ。上から差し込む光のおかげで洞穴の中を見渡すことができた。


「ん?あれは?」


男の目に入ったのは洞穴の奥に置いてあった袋のような物だ。見るからに自然物ではなく、何者かによって作られた袋だった。

何か食い物は入っていてくれと願いながら、男は袋に近づこうとする。


「ぐっ!?痛ってぇ・・・。」


足に痛みを感じ、痛みを感じた部分に目を向けると、足首や膝がおかしな方向に曲がっている事に気付いた。それも両足が。崖を滑落したのだ、無傷であるわけがなかった。

これはもう歩けないと思った男であったが、腕は無事だったので、痛みを我慢しつつ這いながら袋に近づいていく。

ようやく袋に手が届く位置までやってこれたので、袋を手に取り、祈るような気持ちで袋の口を開ける。

何か食い物は入っていないかと腕を突っ込み中を弄るが、男の手に触れる物はなかった。

落胆の色を表情に浮かべ、袋に手を突っ込んだまま力なく倒れ伏す男。


「ちくしょぅ・・・そんなうめぇ話はねぇよなぁ。ここは昔誰かが住処にでもしてたんかなぁ?なんか食料を残しておいてくれよぉ。」


男は気付いていない。

袋の大きさはせいぜい30cmくらいだ。その袋に腕を肩まで入れてなお、底に手が届いていないという奇怪に。


「くそ・・・死にたくねぇよ・・・。」


『クククッ、我の眠りを妨げる愚者よ。何を望む?力か?富か?名誉か?』


「だ、誰だっ!?」

いったい誰なんだ・・・


次回更新は明日か明後日には・・・!

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