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筋肉な事情

「「「「お帰り!ゆき!!!」」」」






「はぁ…」


≪筋肉なんかいらないっ!≫




純和風の平屋敷。


それなりに広く見えるこの屋敷だが、その門には「多心流・武道場」と掲げられており、屋敷の半分は畳張りの道場になっている。



引き戸の玄関を開けてただいま、と小さく呟けば飛び出してくる筋肉たち。




師範である祖父と父。体育大学の教師と、有名な企業のスポーツトレーナーをする兄2人。それから大学生で長良家に居候中のいとこ。



みな筋骨隆々と言っていい体格であり、門弟も多い長良家は武道場としてはそれなりに名門とされている。

だが、裕福とは言えなかった。




「ゆきー、今日の晩飯なんだ?」


「ゆき!シャンプーないぞー!」


「明日休みだろ?弁当頼む!」


「ん?休みなのか。じゃあプロテイン買ってきてくれ」





「…はぁ」






母さんが死んで、もう2年か。

ずっとうちがやりくりしてきたけど、こいつらほんと、よく食うかんな…。エンゲル係数がいかれてて、家は全然余裕ないってこと、わかってねんだから。







「どーしたあ、ゆきい!元気がねーぞっ元気が!」



「うっさ…」




嫌いってわけじゃねーけど、最近無性にこの筋肉たち暑苦しいんだよなあ…。これが思春期ってやつなのかな。




なんて、もんもんと考えている間に正兄が帰ってきていた。






「ただいま帰りました。あ、ゆき。どうだった?高校」






爽やかさに欠ける長良家だが、いとこの正兄だけは少し違う。いうなれば一陣の風だと思っている。


本当に気も利くし、なによりムキムキごりマッチョではないところが最高。


でも、高校について聞かれて、帰り道で会ったあの野獣のことを思い出してちょっと心拍数が上がり…かけたけどヤローと間違えられた乙女の心は傷ついているわけで。自分の筋肉量を思い出してまたげんなりしたのが伝わったようだ。




「ど、どした?ほら、なんかあったなら聞くから。あ、あとゆきにプリン買ってきたからさ」





プリン!!!!






ほんとに正兄ってば、わかってる!最高の癒し!





「正兄って、もしかして前世王子様だったんじゃねーの?」





思わず口から出た言葉に正兄が笑う。




「おおげさだな。でも、そうだな。

あと何年かしてゆきの王子様が見つかんなかったら兄ちゃんが立候補しようかな」




「わっ!マジか!?これで安心じゃん!待ってて!すぐご飯にすっから!お肉多めにしたげるね!」




優しく頭まで撫でてもらって、元気も出たし、とっとと夜ご飯にしよう!



くるりと正兄に背を向け、冷蔵庫にプリンをしまいに台所へ向かった。





だから、「口は悪いけどあんなにいい子がそういないって、高校生で気づけるヤローなら見どころあるんだろうけどな」とこぼした正兄が振り向いた先に、筋肉たちが控えてたことも、正兄が青ざめたまま道場に連行されたあとどうなったかなんてのも、知らなかったのだった。






「俺たちにプリンはどうした、正貴ぃっ!」


「誰がゆきの王子様だあぁん!!?」


「ゆきは誰にもやらんっ!!」


「何応援してんだゆきが嫁に行ってもいいってのかコラぁっ!!!」





「ちょっ、!ギブギブギブーーー!!!」




ゆきは愛されています。

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