筋肉との遭遇
初投稿です。至らない点が多いと思いますがよろしくお願いします。
「おい、お前」
よく晴れた3月のある日、
夢に見た王子様はやってきた。
「お前…いい身体してんな。」
「………………………、は?」
≪筋肉なんかいらないっ!≫
ああ!恋愛の神様ってば!今まで散々恨んできたけど、まだ自分、見捨られてなかった!!!
なんて思った数秒前の自分を殴りたい。
ジロジロと改めて見てみると、確かに目の前の男はイケメンだ。
…でも到底王子様じゃあなかった。
だって王子様は金髪だし、碧眼だし、馬に乗ってるし、
そこを差し引いたって、王子様はもっと優しいはずだし、爽やかで笑顔が可愛かったりして、お姫様だっこしてくれるような人じゃないと!!!
こんな切れ長の鋭い目つきで、サイドをちょっと刈り上げた真っ黒つやつやな髪を後ろに流してて、3月なのにこんがり肌の見るからに危険な香りのする、男くささ全開のライオンみたいな男。王子様とはかけ離れてる。
そもそもが身体目当てだなんて、ろくでもない!
もしここが実家の玄関だったら、この男は筋肉馬鹿な兄さんたちにタコ殴りにされてるはずだ。
なんて考えてたからかなりの時間この男と見つめ合っていた。あ、ちょっと怪訝そうに寄せられた眉で凛々しさが増しちゃってる。
「?………なにか鍛えたりしてんのか」
あ、 そ う い う 意 味 か。
脳内で筋肉(兄)たちが、若干照れながら謙遜しつつも、ボディビルダーよろしく自慢の筋肉でポーズをとる図が思い浮かんでしまう。
っていやいや!ちがう!今のは筋肉(兄)たちをほめたんじゃない!
そこまで思い至って、やっと自分の身体を見下ろし、茫然と立ち尽くす。
「おい…?聞いてんのか」
そんな状態にしびれを切らした男がいきなり暴挙にでた。
二の腕あたりをつかもうとしたのか、手を伸ばしてきたのだ。
それも結構な速さで。
パンッ―――――――
もう呆然の真っ只中にいたけれども、反射というやつだ。
とっさに払ってしまった男の手が、行き場をなくして半端に宙に浮く。
どうやらそれがいけなかったらしい。
「…ハッ―――おもしれえな、お前。相手、してやるよ。」
鼻で低く笑ったその男の顔は凶悪と言える代物だ。
でも、なんか、ぞくっとしちゃったよ。
だって、妙に艶っぽい―――――――
男が大きな一歩でこちらに距離をつめてきたところで見惚れるのをやめて、相手に対して体を半身にする。
するが、やっぱり顔が気になっ………
無理!無理無理無理!イケメン卑怯!
動悸!息切れ!!目眩!!!
な、なんという姑息な…!!!でもこれ以上は生命の危険を感じて近づいてくる顔面距離に耐えられずそのままクルリと身を翻し、スタコラとその場から退散したのであった。
「最低…また、筋肉ついたのかな…。気にしてるのに…」
もう帰ろ。今日はプリンやけ食いしてやる!
あのセクハライケメンめ!次会うまでに女らしい身体を手に入れてギャフンと言わせてやる!!!
赤い顔を気にしながらグッと握った手に今年度の目標を立てた。
だからオリエンテーションで今さっきもらったばっかりの高校の生徒手帳を落としたなんて全然気づかずに帰路についたのだった。
「駒崎高校、長良由貴…か」
筋肉に詳しいわけではないです。
美女と野獣のようなものを書きたかったんですが、
ふたを開けてみれば筋肉と野獣…な誰得物語。
もう少し主人公はクールキャラに手直しするかもしれません。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。