Eight.
「とりあえず、こんなもんかな…。」
彼は、汗を拭いながらそう言った。
季節は夏になった。
彼の家にはエアコンという機器が無い。
冬は極寒だが夏は灼熱だ。
そろそろ、エアコンを購入しようと思っている。
「しかし、今回の依頼は初めての部類だったなぁ…。」
彼は、呟く。
決してTwitterに呟いたわけではない。
『石井頼朝を自殺に追い込め。』
パソコンを貰ってからSNSに関しては詳しくなった。
だから、彼はそのターゲットをネットで苦しめた。
しかし、相手はかなり精神的に強い奴でなかなか折れなかった。
そして2週間の死闘がつい先程、幕を閉じた。
「ふぅ…。」
彼お得意のため息が漏れる。
そして、彼の目線は壁に貼られた新聞記事に行った。
「殺人…かぁ。」
そう呟いて地下室を出た。
…。
俺は、夢を見ている。
中学生が2人で何かを言っている。
「お前、…から……され…のか?」
体格のいい中学生が言う。
しかし、断片的にしか聞こえない。
「そんなことねーよ」
もう一方の小柄な中学生が言う。
「安心しろ。俺がお前の…を……してやるから。」
「止めろっ。」
そう言ってこ小柄な中学生が体格のいい中学生を殴る。
「ダメだ。このままじゃお前が…じまう!!」
そう言って、体格のいい中学生が走り出した。
「はっ!!」
俺は、目が覚めた。
「夢か…。」
まだ、息が上がってる。
大した夢ではないが心臓がバクバクしている。
「……ごめんな良一…。」
そう言って、また寝た。
夏になると依頼が減る。
暑くて思考回路が壊れるからか、ここにエアコンが無いからか理由は分からないが毎年減る。
「殺人鬼の夏休みだ。」
そう言って、俺は家を出た。
「お久しぶりです。国士さん。」
彼は、墓参りに行った。
そして、国士と呼ばれる人の墓に来ていた。
綺麗に墓を磨き、周りの草を抜き、花を添えた。
そして、線香をあげ次の目的地へ行った。
「久しぶりだな。良一。」
さっきの墓の近くにある病院へ出向いた。
しかし、彼の返事はない。
死んでいるわけではない。
ちゃんと息をしているし心臓は動いている。
「調子はどうか?」
返事はない。
「俺の家さ、エアコンが無くて灼熱地獄なんだぜ…。」
返事はない。
「…ごめんな良一。」
返事はない。
何を言っても返事はない。
彼は、精神が崩壊して喋ることすら出来なくなった。
精神を崩壊させたのは彼だった。
「もう、諦めなさい。良一くんはもう2度と喋れない。」
後ろの方から重い声が聞こえた。
良一を担当している医師だ。
「…お前らが本気でやってねぇーからだろうが!!」
彼は、医師の胸ぐらを掴んだ。
「何をするんだ!!」
医師は彼を払い除けた。
凄い力を持っている。
「我々医師も全力を尽くしている。でもな、もう限界だ。」
医師は暗い顔で言った。
「じゃあ、どうすれは良いんだよ!!」
彼は、泣き叫んだ。
「もう、楽にしてあげませんか?」
医師は言った。
彼は、医師を殴った。
「殺すな!!良一を殺すな!!」
「分かりました。」
医師は言った。
彼は、医師に金の入ったケースを渡した。
「3億入ってる。今年も、1年間頼む。」
そう言って、彼は病院を後にした。




