Third.
『速報です。ノーベル化学賞を受賞した原敬さんが、何者かによって殺害されました。死因はわかっていません』
もちろん、殺したのは彼だった。
最近の依頼はノーベル賞とか、社長とか肩書きを持っている人が主だ。
彼にとっては金さえ入ればなんでもやる。
「それで、依頼とは?」
俺は、目の前に現れた女に問いかけた。
「猫を…殺って欲しいのです。」
「猫…。」
「えぇ。」
「何故に?」
「家族で飼っている猫なんですけど、私にだけ懐いてくれません。だから、なんか憎らしくなって。だから、殺ってください。方法は問いません。ただ、苦しい方法は止めてください。」
女は悲しい表情で言った。
「俺の専門は人間だけだ!!」
俺は叫んだ。
彼がまだ小学生の頃…。
彼には友人がいた。
その友人と遊んでいたある日、友人が動物の体に興味を持った。
そして友人が彼の家に遊びに行ったとき、事件は起きた。
彼が飲み物を取りに部屋から出ている間に、彼が飼っていた猫を解剖していた。
麻酔なしで…。
彼は動物―猫が大好きだ。
だから、車に轢かれた猫とか見ると泣いてしまう。
「なんで?なんで、こんな事するんだよ?」
「だって、興味あったから…。」
「なんで、俺の猫を…」
「友達だろ。いいじゃんか。」
友人は反省する気もなくただ微笑んでいた。
この時から彼は友達を作らなくなった。
「猫に嫌われているのはあなたにも原因がある。」
「原因…私に?」
「あぁ、詳しいことは俺ではなく動物病院の医師にでも聞け。」
「…わかりました。」
女はそう言って帰っていった。
それから、数日後。
彼は1匹の捨て猫を見つけた。
「独りなのか…?」
彼は猫に問いかけるが返事は無い。
「…一緒に行くかい?」
「ニャア〜」
返事が来た。




