Murder of the First and Last.(Last Part)
「よ!!涼介!!」
良一…
国士良一が俺の家に来た。
いや、来たというより俺が呼んだ。
「で、話ってなんだ?」
良一が言う。
「なんか、今の流れって昔みたいだな…」
俺が言う。
そうすると、2人の笑い声が響く。
「で、話はよ…」
思い出話に花を咲かせ続けかれこれ2時間経っていた。
俺は心のどこかで真実を伝えたくないと思っていた。
決意したのは数日前。
良一から電話が来たのだ。
内容は、就職先が決まり社会復帰が決まったのだ。
俺は嬉しかった。
同時に悲しかった。
社会復帰するというのは、俺の支えなしで生きていくということだ。
同時に俺が『殺人鬼』として人を殺す意味もなくなる。
今まで殺してきたのは良一のためだから…
人殺しをやめるならちゃんと良一に伝えておくべきだと思っていた。
これは、俺が本格的に殺人を始めた頃に決めたことだった。
良一が元気になったら絶対に人を殺したことを伝えると…
それで、友情が壊れてもいい。
そこまで決心していた。
「どうしたの、涼介?」
黙りこむ俺に顔を近づけてきた。
「いや、なんも…てか、顔近い…」
「あ、ごめん…」
良一が慌てて顔を離す。
すこし、赤くなっている。
「じゃあ、話をするわ。」
俺は腹をくくって良一を地下室へと案内した。
「…!!」
地下につくなり、良一は黙り込んだ。
銃に、ナイフに、爆弾に、毒…
言い出したらきりが無い数の殺害用の道具が揃っている。
それを目の前にしたら誰でも言葉を失うだろう。
「どうだ?」
俺は良一に声をかける。
しかし、良一は口を開かない。
「俺、あの日から殺人鬼って言われててさ…」
「俺のせいだよな…」
良一が突然に言った。
「え?」
俺は思わず聞き返す。
「お前が殺人鬼って呼ばれるようになって、いろんな奴を殺したんだよね。でも、それって俺のせいなんだよな…」
「違う。」
「俺が病気になっちまってそれでお前は金が必要になって…だから…」
「違うって言ってるのが聞こえないのか!!」
俺は怒鳴った。
「確かに、良一の為に殺ってきたと考えていた。でも、もし良一がこうなってなくても俺は人を殺っていた。だって、一度人を殺めたやつは死ぬまで殺人鬼なんだよ。」
俺は必死に言った。
「でも、殺しを始めるきっかけを作ったのは俺だし…」
「違う!!とにかくお前は何も悪くない!!変なことを考えるなよ!!」
俺は良一を抱いた。
久々の人の温もりを感じた。
そっと背中を見る。
あの時あった痣は無い。
それから、色々と話した。
しかし、殺しの話ではなく携帯の話だ。
長い闘病生活で良一は携帯を持ってなかった。
とりあえず、最新のSERIEを契約した。
「じゃ、そろそろ帰るわ。明日から仕事だし。」
良一が言った。
「そうか…」
俺は俯いた。
良一は何かを察したようだった。
「もう、会えないのか?」
「あぁ…」
「…一緒に来ないか?」
「嫌だよ。お前と一緒なんか。」
俺は必死に涙をこらえながら強気で言った。
「あっそ。好きにしろよ。」
良一はそのまま行ってしまった。
良一の背中が見えなくなったと同時に俺は地面に泣き崩れた。
翌日、テレビ業界を賑わせる事件が起きた。
連日のように行われていた完全殺人事件の犯人が自首してきた。
今までに関与した殺人事件はわかっただけでも1000件に及び、死者は1300人を超えている。
そして、彼の自宅の地下からは大量の武器や毒が発見された。
数カ月後に行われた裁判で、彼は死刑判決を受けた。
その裁判で彼は述べた。
「私は学生の頃に殺人を犯して捕まった。その頃は学生ということと正当防衛が適用され死刑は免れた。しかし、刑務所を出て社会復帰の難しさに驚いた。どこに行っても殺人鬼扱いされた。そうなっ。のはあんたらメディアが馬鹿みたいに報道するから。もちろん、それが仕事なのだから仕方がない。でも、そのせいで増々復帰が難しくなってしまうことを知っててほしい。そして、元犯罪者を受け入れる環境が整っていない。だからお金がなく、仕方なく再犯してしまう。こういう悪循環があるのでは?特に殺人者に関しては特に酷い。よく、同業者同士で『一度ついた血の匂いは消えない』と言っていた。それは、殺人者はまた殺人を犯す、という意味だ。そんだけ、今の社会は復帰が厳しい。最後に、私が殺めてしまった人のご家族並びに関係者の皆様、私の身勝手な理由により殺害してしまい申し訳ございませんでした。」
そう言って彼は法廷から姿を消した。
それから3年後に、彼の死刑が執行された。
それから、良一が涼介に会うことは無かった。
会いたくても会えない。




