First.
すこし、気合を入れてみます!!
冬の夜は寒い。
凍えてしまうんじゃないかと思うほどだ。
その、凍えそうな冬の街に1人の男が住んでいた。
本名は遠い昔に捨てた。
今ではギャラクシーと名乗っている。
ギャラクシーは今にでも崩れ落ちそうな家に住んでいる。
隙間は空きまくり、冬には外気と全く変わらない。
暖房なんかあるわけがない。
でも、彼は平気だった。
彼は今日も仕事をしに出かけた。
「お前が一樹か?」
俺は目の前にいる若い男に声をかけた。
「そうだが?」
「そうか…」
そういうと俺は懐から銃を取り出した。
この銃にはきちんとサイレンサが付いている。
こんな寒い夜の街で打つと響く。
「それじゃ、仕事を始める。」
俺は低い声で言った。
「仕事?」
「あぁ。」
俺は微笑しながら男の胸を狙って引き金を引いた。
街に乾いた銃声が響く。
「はぁ…こんなに静かだとサイレンサ付きでも響くか…」
俺は男の脈を確認した。
「脈なし。よし。」
俺は一樹と呼ばれる男の死んだ写真を撮った。
銃弾が撃たれた場所から出血がしている。
よほど撃ちどころが良かったのかいつも以上に出血している。
1分経たないうちに池ができた。
「よし、消えるか…」
そう言って、俺はその場を立ち去った。
朝方になって、彼は自宅へと戻ってきた。
かろうじてドアとしての役目を担っている扉を開けて中に入る。
入るとすぐに地下室へ行く。
地下はしっかりとした作りで、冬でも温かい。
そこには、大量の武器が置いてある。
銃、ナイフ、爆薬、毒物…
数えだしたらキリがない。
そこに置いてあったスマートフォンで電話をかける。
ちなみに、機種はSHARPのAQUOS PHONE SERIEだ。
最近はメモリー不足に悩まされている。
『…始末したか。』
「あぁ…お前さんの望む通り心臓をスパっといかせてもらった。」
『さすが、噂通りの腕前で。』
「噂って、俺の耳には届いていないがな。」
『ま、細かいことは気にすんな。それより報酬だが…』
「3000万だ。」
『…いいだろう。明日にでも部下に運ばせよう。』
「…気をつけて動けよ。」
『はっはっはっ…当たり前だ。』
そこで、電話が切れた。
彼は深い溜息をついた。
翌日、約束通り金が来た。
3000万、キッチリだった。
パソコンを届けるふりをして運んできた。
意外な運び方に少し驚いた。
もちろん、パソコンも本物だ。
俺は、一応お礼のメールを送った。
それから、3日後。
手紙が来た。
『ギャラクシーさんへ。あなたの驚異的な殺人能力を買いたいです。もし、よろしければご連絡ください。aaaaa@aaa.com』
仕事の依頼だった。
俺は迷うまもなくメールを送る。
すると、待ってましたと言わんばかりのスピードで返事が返ってくる。
『対象は、内閣総理大臣の内敏夫。方法は射殺で1週間後に行われる国会の初日で。報酬はいくらでも構いません。』
「国会議事堂…」
過去にもそこで仕事をしたことはあるが、たいてい入り口だった。
しかし、今回は中で国会中継中に殺らないといけない。
かなりの無理難題だが、報酬はいくらでもいいと言われると、断るには惜しい。
「ふぅ…」
俺は溜息をつきながら思考回路を働かせた。
そして、国会が始まった。
しかし、彼は家から出ようとしない。
パソコンで国家中継を見ている。
そして、1時間が過ぎたあたりで電話をかけた。
刹那、画面の向こうにいる総理大臣が撃たれた。
そう、彼は遠隔操作で銃弾を発射し、総理大臣を狙った。
緻密に計算された軌道で。
しかも、証拠を残さないようにするため銃を置いていた部屋も同時に爆発させた。
慌ただしい国会中継の現場が流れ続けている。
某国営放送局も今までにない出来事で固まっているに違いない。
血まみれになった内氏が映っている。
他にも、我先にと逃げようとする議員も。
それを見ていると電話がかかった。
『ギャラクシーさん。お見事です。』
「ありがとう。」
『では、報酬を。』
「1億…とんで1億5000万。」
『あら、意外とお高いこと。女性に対してその価格は無いのでは?』
「あぁ。俺への報酬は3000万だけだ。ただ、全く関係のないビルまで燃やしたからな。それの修理代だ。」
『ギャラクシーさんって優しいのですね。』
「優しいのではない。それが俺のやり方だ。」
『ふふふ。では、こうしましょう。私はあなたに3000万払います。そして、私の権力でそこのビルを買い取りましょう。そうすれば、関係あるビルになりますよね。』
彼女がウキウキとした声で話してくる。
「まぁ、いいだろう。ただし、ビルの購入は明後日まで。金は1ヶ月以内だ。」
『はーい。』
そう言うと女は電話を切った。
しかし、女は約束を破った。
3000万は渡してきたがビルは放置したままになっていた。
電話も繋がらなくなっていた。
俺は、万が一のために作っておいた資料に目を通した。
「吉村育絵…」
俺は女の名前を口に出した。
その夜、吉村が殺された。
死因は焼死。
犯人は分かっていない。
「ふぅ…」
彼は地下室で溜息をついた。
「個人的な殺しはしたくないのに。」
彼は…一筋の涙を流した。
今夜も、また彼は出勤する。




