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いっちゃん(第二部)  作者: Thomas C. Knitter


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スピンオフ 「その後の上山バスケット(伝江の日曜日)」

伝江です。

いっちゃんが成羽を去った後の、ある日曜日。

うちは、仕事場に一人残っとったんじゃ。

【本文】

ある日曜日の夕方、うちが仕事場でバスケットの形を整えていると、俊雄伯父さんの声がした。

「衣津子、これ、計算してくれ、衣津……。ああ、もうおらんのじゃった」

「ほうで。もう、いっちゃんはおらん」

うちが言うと、

「伝に、この計算……頼んでもダメか」

「ダメで。いっちゃんしかできん。そがぁにいっちゃんがええんなら、なんで、追い出したん?」

「それとこれとは別じゃ。衣津子は許されんことをしたからな」

「ほんまにいっちゃんだけが悪いん?」

「ほんまは伯母さんが一番悪い。ワシもわかっとる。じゃが、娘のこともあるし、社長としての世間体もある。セツ子を追い出すわけにはいかんかったからな」

「せいで、いっちゃんだけが追い出されたん?」

うちは腹が立った。

「まぁ、そう言うな。衣津子のためでもあるんじゃ。あれはそろばんもできるし、字もきれいじゃから、よそで仕事した方がええ。そう思うたんもほんまの気持ちじゃ」

「……まぁ、そうじゃわな。いっちゃんは頭がええけぇな。 伯父さん、心配せんでも、うちがこの『上山バスケット』を支えるで」

「そりゃ、ありがと。……なんとも頼り甲斐があることで」

「どうゆう意味?」

「伝、頼りにしとるで」

「そう、それでええんじゃがな」

「やれやれ」

伯父さんは呆れた顔をして仕事場を出て行った。


うちは、

(やっぱり、いっちゃんはよそに行って良かったんじゃな)

と思った。

一方で、自分がこのままでいいとは思えなかった。


窓から夕陽がさしてきた。

(いっちゃんも、今頃、この夕陽を見とるんじゃろか?)

そう考えながら、うちは、またバスケットを手に取った。


同じ夕陽を、いっちゃんもきっと見てくれとる。

たとえ道が分かれても、編み上げられた絆は解けゃあせん。

成羽の空の下で、うちもいっちゃんに負けんよう、「自分の一秒」を刻むで。


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