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1_92 右舷と左舷


NO.9 THE MAGICIAN (魔術師) 逆位置


”・・・・・・かいどう・・・・にかいどう・・・さん・・・・二階堂さん!!”

「・・・・・ううううううっ」

二階堂はスクラップの中、耳障りな無線によって目覚めた。

”ああ!目覚めた!よかった、大丈夫ですか二階堂さんっ”

「・・・省吾か?俺は一体・・・そうだ信じられないことが」

気を失う前のことを思い出し、ガントレットコンソールを叩く。

マップを表示する。

確かにそこはこの城塞、姫路城MK2と称されるところに潜入したころにウバメ達に追われてたどり着いたところであった。

「そうか・・・ふりだしか」

二階堂は半ばため息交じりに吐き捨てた。

”二階堂、気が滅入る気持ちはわかるがまた六火仙の連中が待ち構えているわけではない。

ルートもある程度マッピング、解析できているおかげで最適化による短縮も可能だ”

「南山、お前いい加減に―――」

南山は二階堂が無事と確認が取れるやすぐさま戦前復帰に躍起になろうとする。

流石の南山も失言と思ったのか慌てて取り繕う。

”す、すまん。二階堂、悪かった。とりあえずは傷の治療が先だったな。

最初に立ち寄った医療室があったはずだ、省吾、ナビゲートを――――”

その時、二階堂の目に妙なものが飛び込んできた。

「あれは?」

二階堂は痛む身体を引きずりスクラップが積み重なる方へゆっくりと向かって行く。

その”一部”を手に取り、眼前へ持ってきてまじまじと見ると、驚いて思わず目を丸くした。

「これは、これは間違いない。大伴のFHSフライングハリアーの一部だ。なんでこんなところに?

アイツは仲間と一緒にミサイルの餌食になったはず・・・」

”でもそれ、そんなミサイル受けてボロボロになっているという感じではないですよ?

もしかしたら、大伴が死んだので予備品か何かを破棄したのでは?”

省吾のもっともらしい意見に渋々頷くしかなかったが妙に腑に落ちなかった。

(持ち主が死んだとは言え最新鋭の装備品を?馬鹿な、使いどころはいくらでもあるはず)

二階堂は手に持っていた部品を遠くに投げ捨て、一度立ち寄った医療室へ足取り重く向かった。


―――医療室。

「なぜだ?」

そこは、最初のころ立ち寄った時とは明らかな違いがあった。

全自動外科手術マシンがあるのである。

二階堂がこのマシンを使用したのは六火仙ファミリーの小野と僧正に蹂躙される前である。

”あの後誰かが設営したのですカ?ちょっと信じられません、警戒した方がよさそうです”

イーノが二階堂に警戒を促す。

”だがチャンスでは?もしかしたら奴らお前が途中で使用した後に使われたらまずいと思いここに移動させただけなのでは”

南山は警戒どころか”無警戒”である。作戦遂行のことしか頭にないのだろう。

「省吾どうだ?そっちからモニタリングしていて何か気になる点は?」

省吾のコンソールの音が少し激しくなったのち、軽くため息をついた。

”うーん、同型機?ではないような感じなんですが・・・特別何かおかしい点はありません。

二階堂さんの前に使ったものと相違はありませんよ”

「・・・・・・わかった、とりあえず身体の傷が痛すぎてもう感覚がなくなってきた。なんにせよここにあるのは幸運と思おう」

二階堂は服を脱いで急いでマシンベッドの上に転がった。

「イーノ、よろしく頼む」

”まかせなさイ!”

二階堂は両脇から飛び出たアームに麻酔を打たれ、再び微睡に堕ちる。


数十分後。


閃光が見える。

ここは、どこだ。

あれは、稲妻?

俺は?

”サンダー1だよ”

サンダー1?

ここに来る前に言ったろ、お前はサンダーだと。

サンダー。

ああそうだ、お前は稲妻なのだ。”駆ける稲妻”

稲妻。


待ってるぞ二階堂。

待ってる?


そうとも。

お前こそが。



誉有る大日本帝国軍人なのだから――――――――。



”二階堂!おい二階堂、起きろ!”

「・・・うう・・・ちょっとはまともな起こし方してくれよ」

耳に鳴り響く金切り音でぼやけた夢から目を覚まし、天井に埋め込まれたLEDの光で目をくらませる。

身体を見ると、どうやらマシンは正常に動いてくれたのか身体は見違えるほどに癒えていた。

ほどなく無線から南山から震えた声で信じられないことを伝えられる。

”起きたか・・・いいか二階堂、とりあえずまず聞いてほしい、先程淡路島方面で大規模な爆発及び衝撃波、熱線が確認された”

「なっ・・・・」

そういえば無線からはあらゆるアラート音やストリーミング配信を受けているのか罵声交じりや緊迫したアナウンス声が聞こえた。

省吾も続ける。

”元々、ここを空爆するため、日米合同で秘密裏に在日米軍が

限定小型戦略水素爆弾を搭載したステルス爆撃機を派遣したそうです。

私たちもこちらで観測、確認できました”

”だが、直前になって急に航路を変更し淡路島方面で向かって行き、あろうことか市街地の中央で投下した”

”日米安保条約違反のみならず同盟国間での禁忌・・・いま国際・・・いや地球上がお祭り騒ぎだ。

事なんてものじゃない、一大事だよ”

二階堂はベッドから飛び起きて傍らに置いていた一眼レフカメラを取って液晶を覗き込む。

どうやら省吾が事前にデータを送ってくれたようだ。

そこには、間違いなく”あの”フレア現象を捉えた映像が写っていた。

「なぜ?なんでこんなことに?」

”わからん、だがおかげでいま俺たちは助かっているのは喜んでいいのかどうかはわからんが”

あの南山にしては珍しく、落ち込んだ声でモノを言っていた。

”真意は解らん、だが’そこ’の人間が何らかのマジックをしたのは想像に容易いだろう”

”どうする二階堂?今ならここの連中も混乱しているに違いない、逃げることも可能かもしれんが―――”

「行くしか・・・行くしかないだろう・・・こうなってはどこに行こうが地獄確定だ。ならさらに深みにはまってやる。

行きつく先まで行ってやるよ・・・そうしたいんだろう?古今少佐」

そう吐き捨てた時、全身を寒気が襲った。

自分知らないどこかで、あいつが笑っているような気がしたのである。

「行くぞ」

二階堂は身なりを整えると医療室を飛び出した。


見覚えのある、広いコンクリートブロック。

スポーツ競技場で使われるようなだだっ広い体育館。

そう、二階堂はここで初めて死線と言うものを経験した。

今再び二階堂はそこへ行き。

――――――――絶望した。

見覚えのある赤タイツ、屈強な肉体。

マーチングバンドのような一糸乱れぬ動き。

1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2・・・・・。

「なぜなんだ、どうしてなんだ」

1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2・・・・・。

「なんで生きてるんだ」

1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2・・・・・。

「なぁ!こたえろ!ふざけるな・・・ふざけるなぁ――――――――」

文屋がいた。

紛れもなく、奴だ。

「いい顔になった二階堂・・・・焼酎が似合いそうな良い顔になった。歓迎会はもう十分だな」

1,2,1,2,1,2,1,2,1,2,1,2・・・・・。

奴は再びムカデ足の影を壁に映し出す。

「次は交流会と行こうじゃないか二階堂!来い!」

”二階堂さん逃げてっ!もう相手にしちゃだめですよ!”

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

二階堂はもう目の前の光景に我を忘れ、相手に襲い掛かっていった。


――――2日後。

文屋のタイツ野郎がいた「1,2,1,2!」

大伴がいた「ハリアー1、大伴、エンゲージ!」

小野のデブも「この薬は最高よ・・・」

僧正も変態も「二階堂ちゃんっ!」

在原のクズも「贅沢は敵だ!」

喜撰は兄弟で「たのしいですね」


「・・・・・ううっ、ううっうう・・・オオオオオオオオオォ!!!」

二階堂は再び彼らと死闘を繰り広げた。

もはや疑問も思考も、意思すらわかなかった。

彼らは二階堂を見るたびに

”帝国軍人たる資格が―――”

”貴様それでも日本―――”

等と決まった台詞を吐き、襲い掛かってきた。

何度も医療室に入っては手術マシンで傷を癒し、薬をぶち込み、武器を持って戦場を駆ける。

まるで、果てることのない戦場にいるようだった。

南山も、省吾も、そしてイーノも必死にサポートしてくれた。

何度も打開策を見出しては試みた。

だが逃げられないのである。

命からがら、この城塞の呪縛にとらわれるのである。

そう、今二階堂の眼前で仁王立ちする忌々しいこいつらがいる限り・・・。

「イキりやがってよ!ちょっと出来るからってすぐ図に乗るねん!お前よりも優れた人間なんか腐るほどおるわいや!」

「死ぬ死ぬとか言いやがってよ!死んでないやんけ!さっきもお前うまそうに飯食っとたやんけ!

ふざけんのも大概にしとけよ!」

「なあ?なんでそんなに弱いのに吠えるの?お前その体自分で見てすごいとか自惚れてんの、アホけ?」

いつもそこに行けば右舷と左舷が待ち構えているのである。

そう、大規模エレベーターの前で。

喜撰兄が言っていた。

これに乗れば最深部、この城塞の核心まで行けると。

そこには古今少佐がいるはず。

そうだ、アイツをやらなくては終わらない。

アイツをやらなくてはならない。

アイツを。

「お前ホンマ話聞いてないやろ!人のいう事には感心無しか!だから頭悪い思われてんねん!」

「エライ(ひどい)顔しやがって。その顔でよう街歩けるな、そのメンタルは褒めたるけどよ」

「・・・・通せ」

二階堂がポツリと呟く。

右舷と左舷は鬼のような形相で聞き返す。

「あ?お前何言うた?」

「なに命令してんの?本気?」

二階堂は腹の底から湧き出るような憎しみを込めて叫んだ。

「・・・・・・通せ!クソが!!」

二階堂は隠し持っていた針銃と先程喜撰弟と再びやり合ったときに奪い取ったバヨネットを即座に取り出し

二人に目掛けて撃ち放つ。

だが、二人は電光石火のごとく身をひるがえして交わした。

直後、二階堂は傍らにいたウバメに束縛される。

「ふ、ふ、ふざけやがって二階堂!帝国軍人に向かって!お前こんなことしてただで済むと思とんのか!!」

「お前の荷物全部窓から投げ捨てたるからな!」

右舷と左舷は烈火のごとく怒りだし、押さえつけられている二階堂の身体のあちこちをガスバーナーであぶりだした。

「ぎにゃああああああああああああああああああああああ!!!!」

「お前らは気品ある寿司をこうやって炙って食いよるんやろ!このダボ!」

「食べ物で遊びやがってっ!作ってくれた人に申し訳ないと思わんのかっ!」

散々、罵倒され、拷問を受けたのち、再び右舷と左舷は二階堂を抱えあの場所の前へと立った。

――――――――ダストシュート。

「死ぬまで反省しろっ!!」

「エエ目見たいとか偉くなりたいとかしか考えへんねん。ホンマ救いようがないわ!」

再び漆黒の、うねりを伴う奈落へ落とされる。

「があぁぁあっぁぁぁああああ!」

・・・・・・・ドカッ!ゴロゴロゴロゴロ・・・・。

地面に身体を叩きつけられる。

視界が暗転し、暫く意識が遠のいたが全身の凄まじい痛みと共に現実に無理やり引きずり出された。

「・・・・」


”中央”集積場


二階堂、実に数度目のふりだしである。


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