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1_91 右舷と左舷


十数分前―――。※当シーンは一部を除いてすべて外国語で話しています。

「Damn Jap!!(クソ日本人!!)」

米国空軍キャンプフォレスター所属B-3ステルス爆撃機内。

ガムをクチャクチャとワザとらしく音を立てながら主管が苛立ちながらメインモニターを眺めていた。

すぐ隣の副管が呆れたようになだめる。

「まあ落ち着けって、苛立っても何にもならんでしょう。私だって沢山の友人を一瞬に失ったんだ」

「落ち着いているお前は正常じゃないぜ。元々俺は身内のゴタゴタに首突っ込むのは止めろってあれほど意見したんだ。

それが見たことか、もう取返しなんて出来やしないぜ。管理職は全員クビだ!」

主管は悪態を付きながら自身のヘルメットをゴンゴン叩く。

「まあ襟付きなんてあんなもんでしょう。そもそも日本人と言う者を知らなさすぎる」

「フン!」

ポーンとコール音が鳴る。

”大尉、オブジェクトエリアまで3分を切っています”

「了解している。それでは各員、最終チェックに入れシーケンスはそちらに任せる」

”了解”

副管はコンソールを滑らすように叩くと操縦ルーム中央に二つの鍵穴付きのボックスが起き上がった。

「原爆に続き、超小型とはいえ水爆も世界初とは・・・つくづく核の好きな連中だ・・・真正のマゾか、それともサドか?」

言いながらくすくす笑い傍らにあった手錠付きのジェラルミンケースを取り出していくつものキーを入力する。

するとカチッっという音と共にロックが外れ、副管は蓋を開いた。

中には、異形のキーがひとつ。

「日本人ってのはさ、本音と建前ってやつを誰しもが例外なく持ってんだよ、もちろんお前が前に”ヤッた”女もだ」

主管は上着の内をまさぐりネックレスを引きちぎる。

その手には色違いのもう一つの異形のキーがあった。

「それはつまりあれですか?うわべは良かったとかほざいてんのに内心では吐きそうとか」

「吐きそうどころか・・・殺すまで思ってんぞ、お前ならなぁ」

「怖すぎ・・・やっぱりナンパはタイかカンボジアかぁ~?・・・ちょっと、失礼?オペレーター?モニタールーム応答せよ」

副管は無駄口も早々に気象モニターに気になるものを発見した副管はモニタールームにつないだ。

”こちらモニタールーム”

「ブリーフィングでは航路に雷雲、乱気流の心配はないとのことだったがモニターを見る限り先が真っ黒だぞ」

副管はモニターを見ながら怪訝な顔をする。

主管も目が良いためか、まだ離れているものの目標地点に分厚い雷雲が広がっているのを確認した。

「どういうことだ?先方の空爆は失敗したはずだ。気化爆弾は爆発しなかったはず」

主管は前もって聞いていた報告をオペレーターに問う。

”・・・変ですね、お待ちを・・・・。確認しましたがこちらのモニターでは雲一つ出ておりませんよ?”

「なんだと?」

予想外の回答に驚いた主管は思わず口に含んでいたガムを飲み込んでしまった。

「ゴホッ、ゴホッ!」

「・・・大丈夫ですか?それよりも・・・オペレーター至急本部に繋いで再かっ」

その時、目の前がピカッ!と閃光に包まれ、眼前を横一直線に稲妻が駆け抜けた。

「JESUS・・・なんださっきの化け物みたいな稲妻は」

副管は目の前の恐ろしい光景を目の当たりにすると突如として戦慄のようなものを感じた。

軍人としての長年培われた感であろうか。

「HQへ、こちら”バブルガム”。現在作戦地点における天候に意見相違が発生したため、至急確認を―――」

「あの稲妻・・・生きてる・・・」

「生きてる?何を言って副管―――」



それが二人の最後の台詞になった。



「ふぉおおおおおおおおお!」

二階堂の絶叫が響き渡る。

左舷が二階堂の短い髪を毟る様に力強くつかみ、右舷が苦悶の表情を浮かべる二階堂の顔を覗き込む。

二階堂はあっけなく捕らえられた。

その場で屈強な銀のウバメ達に抱えられてどこぞへと連れていかれる。

「お前なぁ、ちょっとミスったらすぐリセットする口やろ!!前にも言うたでよ、”ゲーム―オーバー”なんか

させん言うてよ!」

「お前、人生にリスポーンなんかあるわけないやろ!大体なんでもすぐにやり直そうとするその性根が気に食わん言う話やろがい!!」

二階堂は彼らが何を言っているのかもう理解しようともしなかった。

そんな彼に帝国軍人屈指の二人が鬼のような形相で見つめた。

「早くせいや!」

右舷に急かされ奥から来たウバメが持ってきたのは1m四方厚さ30cmはあろうかというコンクリート片。

それを三枚。

二階堂がそれを見て顔面蒼白になる。

「ええ身分やのぉ!世の中皆命張りながら働いて苦しい中僅かの金しかもらえんのによ、お前は口から能書き垂れて

高い金もらえんねやからな、ホンマ大概にしとけよ!」

「お前、イきりすぎやねんマジで。ホンマイラつくわ。ダボみたいにウジウジしかせえへん!」

左舷が二階堂の内膝を蹴りこみ挫かせる様に跪かせ、ウバメによって無理やり正座をさせられる。

「ひぃいいいいいいいい!」

想像に難くなく、まずは一枚、それを膝に乗せた。

「オオオオオオオオオォ!!!死ぬ!死ぬぅぅうううう!!」

「お前殺させんからな!誰に断って”もう死ぬ”とかぬかしとんねん!殺すぞ!!」

「お前の何が偉いねん、そうやって活字読んでりゃ文才気取りか!?ロクに生産も出来んのに調子乗んなよ!」

右舷と左舷が二階堂を見下しながら容赦なく罵声を浴びせる。

そのまま、次に二枚目。

「がぁぁああああっ!ああああ!」

「そんなんやからシカトされるんちゃうんかい!」

「普段なんも言わんくせに、ネットの時だけ偉そうにモノ言うんやろ?だから嫌われる言うのがなんで気づかんの?」

もはや白目を剥いて泡を吹き出す二階堂に左舷がウバメが準備して持っていたバケツの水をひったくって浴びせる。

右舷も最後の一枚をウバメからひったくると三枚目を無造作に乗せた後、自身の足でさらに上から追い打ちをかけた。

「おごぉお!ごぉ!おお、おおおぉおぉぉぉ・・・・!」

「モノ言う前によ、身体動かせよ!お前の仕事は偉そうにするだけかいや!」

「自分は努力してる?おい下見ろや、その肥えて弛んだ腹に向かって言うてみろや!

俺は努力しとる言うてよ!」

あまりの激痛に、二階堂はこと切れてしまったが、左舷が懐から針の無いジェット注射を取り出すと

二階堂の首に容赦なく突き立て彼を現実へと引き戻した。

「ほんまお前は基本ダボやねん!親が可哀そうやわ!!」

「いつまでそないしとんねん、お前のために裂ける時間なんかあるかいや!」

「心配スンナ、お前の事なんか誰も見てないわいや」

「お前のために犠牲になる食べ物が可哀そうでしょうがないわ・・・!」

「クソ弱いくせに口は流暢、普段考えることと言えば金と”ヤル”ことばっかり。ちょっと凄まれたらすぐ逃げる。

そのくせ偉そうにモノをいうわ・・・どうやったらお前みたいな人間が出来るねん!」

「お前、自分は嫌われてない思っとるやろ?!教えたるわ、お前みたいな人間好き好む奴なんかおるかいや!」

「楽してええ目見られるわけないやんか、もうちょっと現実見ろや!自分見すぎやで」

「人に嫌われる事しとう奴に限って偉くなりたい言うてよ、マジもんのダボやで!」

「人にモノ言う前によ、鏡に向かって自分にモノ言えや!」

「基本敬う気持ちが皆無やねんな、人の好き嫌いだけで生きていけると思っとんのけ」

二階堂は右舷と左舷がもはや誰に向かって言っているのかわからないほどの罵声を聞きながら

なけなしの力を振り絞り、口を開く。

「・・・・なんで、どうして、おまえら・・・帝国じゃ・・・政府の・・・高官なんだろうが・・・?」

右舷と左舷はその台詞に一瞬行動を硬直させるが、再び動き出してコンクリートを跳ね除け。

二階堂を抱えると人一人が入れるほどのダストシュートの前まで来た。

左舷がその蓋を勢いよく開く。

そして右舷が二階堂を引っ張り上げるとダストシュートの前まで顔を持って行ってその深淵を覗かせた。


そして、いきなり真顔になって呟きだす。

「昔な、どこぞの戦の女神さまがこんなこというとったんよ。

”浅ましく、心が荒み切った人間ほど権力や地位という無形のものを求み”

”美しく、心豊かな人間ほど花や物など有形のものを大事にすると”」

「俺はな――――将来、花にまみれて死にたいなぁ。・・・お前は嘘と権力にまみれて死ね!!!」

右舷と左舷に両脇を抱えられ、ニコニコ顔でダストボックスに放り込まれた。

「はははははは、また来いよ二階堂!」

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

真っ逆さまに暗闇の細い穴に突き落とされた。

穴はところどころうねりやカーブがあるのか落ちながらあちこちを叩きつけられる。

打ちのめされながら、転がり、堕ちる、落ちる、底の底まで。

それが奈落なのか、果ては地獄なのか、もはや二階堂には考える気力もわかなかった。

・・・・・・・ドカッ!ゴロゴロゴロゴロ・・・・。

地面に身体を叩きつけられる。

視界が暗転し、暫く意識が遠のいたが全身の凄まじい痛みと共に現実に無理やり引きずり出された。

「・・・・嘘だ、だって、、、ここ、、、そんな、まさか」

辺りの光景に二階堂は呆然自失になった。

信じられなかった。

一瞬何が起こったのかわからなかった。

だが現実は二階堂に容赦なくそれを突き付けた。


”中央”集積場


そこは、先程までいた二階堂がいた場所とは遥かに離れた、最初に二階堂が転がり落ちたスクラップ場であった。

「・・・・・・・」

あまりのショックと体の痛みと相まって二階堂の意識はそこで飛んだ。



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