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1_82 喜撰(きせん)


「敵だって?!馬鹿言うなよ、人に散々やらかして何抜かしてんだ。

まさにかつての大日本帝国を彷彿とさせるような・・・」

二階堂がまさかの告白を聞いて不信をあらわにする。

「二階堂さん、あなたやたら凶暴な哨戒兵に出会いませんでしたか?二人でバディを組んで行動しているはずです」

「!!」

その言葉に思わず息をのんだ。

思い当たるも何も、事あるごとに現れては人を痛めつけ苦しめた張本人達である。

二階堂の反応だけで喜撰はその答えを容易に捉えることができた。

そのまま続ける。

「彼らは”右舷”と”左舷”です。現日本政府内閣府隷下の内務監査部所属の人間。

二階堂さんの古巣、陸上自衛隊で言うところの陸幕部と言ったところでしょうか」

それを聞いて二階堂はあっけにとられる。

「ちょっと待て、なら散々俺を痛めつけたあの二人はお前らとは別の組織に所属してることになる。

直接の隷属ではない第三者機関の人間だ・・・ならどうして?本来ならばお前らの蜂起をいち早く政府に伝え

対策に乗り出す敵側なら納得する。もちろんお前がその一味であったとしたら余計にな。

だがあいつらはまさに超凶悪な大日本帝国軍人、とてもそうは見えない」

「そうですね、まさにその通りだと思います。しかしそこに古今少佐の懐柔があったと思うのです。

いくつか話は耳に入っているでしょうが南山さんがここにいたころ、ここは大きく二つの派閥に分かれました」

果てしなく長く続くエスカレーターをゆっくり下りながら喜撰は突然掌を前に突き出した。

急なことに二階堂は思わず身構えるがすぐにそれがホログラムを映し出したことが解り緊張を解いた。

「・・・映像を見てわかる通り、ここは世界終末大戦のための日本政府最後の砦。

1000度も超える温度に耐え、あらゆる熱線を遮断し内部で班恒久的なエネルギー生産と生命維持のすべてを完結できる

鋼の城塞”姫路城MKⅡ”―――それを欲しいと思う人間は国内外問わず数知れません」

「・・・・・・」

「そして、近年になりここを守るため敗戦以前から繋いでいた大日本帝国陸軍鍵際師団。

そして現日本政府防衛省隷下特別編成陸上自衛隊。ここを守るための二大勢力が皮肉にも

この城塞を得るために動き出したのです」

二階堂はそれをきいてようやくわだかまりの一つが解けた。

「そういう事か、つまりはお前と南山をはじめとした人間は自衛隊側の人間で

帝国軍人派の古今少佐一味と対立して負けたという事か」

喜撰はそれまでずっと前を見続けていたがふと横を向いて暗く深く続く漆黒を見つめ呟いた。

「私は南山さんと共にここの掌握へと乗り出しましたが、事態はすでに遅し。

古今少佐の根回しは早く私達は気づけば既に四面楚歌だったのです。そして南山さんは私を囮にしてここから逃げたのですよ」

「あいつ側についたのが運の尽きよ」

「ですね」

二階堂はなんとなく、この喜撰という人間が(油断ならないものの)多少は話せる人間だということが解ってきた。

「ですが南山さんは諦めていなかったようですね。それがあなたがここに送られてきた理由だと思います。

南山さんはあろうことか中華人民共和国、人民解放軍をバックに付けてここに再びやってきた・・・」

「あいつはなぜここまでにしてここが欲しいんだ?個人や団体には身に余りすぎる代物だろうここは」

「その答えはもうすぐわかると思いますよ」

喜撰がそういうと段々と辺りが明るくになり、青白く輝く無機質な広場へと終着点としエスカレータは到着した。

「来てください」

再び広場を抜け、青白い光に包まれた広い通路を歩きだす。

しばらく歩いたのち、それは姿を現した。

「・・・嘘だろ?」

二階堂は眼前の光景に茫然自失となった。

都市がそこに広がっていた。

妙な形をしたビル群、居住区とみられるいくつものマンション群、野菜などを育てるプラント資設、浄化システム、無人生産工場、

隅々まで整備された道路、娯楽施設と思われるネオンサインを掲げるドーム、そして何よりも・・・天井と思しき場所に広がる青空。

「そんな馬鹿な、なんだここは・・・ここは地下深くのはず・・・」

「そうです、ここは地下500m以上をも下に位置するシェルター”アマテラス”です」

「アマテラス・・・」

二階堂はしきりに辺りを見渡した。

人っ子一人いないものの、その都市はすぐにでもその営みを始めんばかりとするほどのものであった。

「たとえ、地上が放射線汚染されようとも氷河期がやってこようとも・・・大地が灼熱と化そうとも大丈夫です

しかも地震対策もほぼオーバーテクノロジーです、ここにいる限りありとあらゆる災害と無縁になります。

ここは地球が潰えるその日まで永遠の安寧を得ることができるのです」

二階堂は感心しきりだった。

よほど頭のいい連中が英知を寄せ集めてデザイン・開発したのだろう。

それは都市としては素人が見ても完璧と言えるものだった。

「これなら南山の奴が欲するのも無理はないのかもしれん。自分の認める人間だけを集めて住まう安寧・・・か」

「そうです・・・ところで二階堂さん、これまでの活躍を映像で拝見いたしましたが随分と足に自信があるご様子、

どうです?ここはひとつ勝負しませんか?」

喜撰はそういうと軽く顎で合図した。

漆黒のヘルメットを装着しているためかその表情が窺い知れることがなかったが、

しかしこちらに何らかの目配せしていることが解った。

(誰かが追ってきている・・・誰だ?)

その時、腕のガントレットコンソールがカシャカシャ動き出す。

「そういえば気になっていたのですがそれはいったい?」

「え、ああこれは・・・というかお前ら帝国陸軍兵の支給品じゃないのか?」

「いえ、そんな代物見たことありませんね」

「どういうことだ?」

カシャカシャカシャカシャ・・・・


NO.15 THE DEVIL (悪魔)正位置


「意味はよくわからんが・・・急いだほうがよさそうだ、それじゃ行くぞ用意・・・」

「スタート!」

二人は脱兎のごとく駆け出した。


並居るビル群を縫うように抜け、道路を渡り、工場の中を突っ走る。

(駄目だ・・・追ってきているのは解るがどんな奴か皆目見当もつかない)

息を荒げ、都市を駆ける。

やがて限界が近くなる。

「はっはっはっ・・・もう・・・これいじょう・・・・」

「先に建築搬入用エレベーターがあります、そこに行けば―――」

その時目の前にミサイルのようなものが降ってきた。

着弾、炸裂、とっさに身を伏せるが爆発の衝撃波によりその身を吹っ飛ばされる。

(クソがっ何回目だよ!!)

砂塵が舞い、砂煙と黒煙が入り混じったような空気が辺りを包み込む。

暫くしたのち、都市の排煙機能が作動したのか辺りの様子が急速に回復する。

元に戻った視界にすぐに状況確認しようと辺りを見たその時、

数十m先に信じられない人間がミサイルランチャーを持って仁王立ちしていた。

「・・・・なんでっ?あれは・・・喜撰、なのか?」

そこに立っていたのは紛れもなく喜撰だった。

しかし、二階堂が辺りを見るとすぐ近くに喜撰が伏せている。

「??喜撰が・・・二人いるのか?」

疑問が湧きだったとき、そのミサイルランチャーを持った喜撰がヘルメット搭載の拡声器越しに叫んだ。

「指導ぉおおおおおおおおおお!!!!」

喜撰の肩に背負られていた小型ミサイルの一つが火を上げた。

「マズいっ、おい喜撰起きろ!!逃げるぞくそっ!」

「・・・くっ、やはり来ましたかっ」

思い当たる節があるのか、喜撰は身を起こすと急速に建物へ避難した。

二階堂も反対側の物陰に素早く身を潜める。

着弾、炸裂。

ドゴオォオオオオオオン!!という轟音と爆風が辺りを包む。

暫くしたのち、再びミサイルランチャーの喜撰が叫ぶ。

「見損なったぞ兄貴!一人抜け駆けとは・・・貴様それでも帝国軍人かっ!」

(兄?!そうか、”六”火仙というからリーダー格は六人と思っていたが、七人いたのか。

古今少佐を含めると八人・・・地獄だ)

遠巻きに喜撰兄が声をかけてくる。

「二階堂さんいいですか?あいつは私の弟、隊でも名を轟かせる暴君です!気を付けて」

「気を付けろって言ってもどうしろと――」

言っているうちにまた新たなるミサイルが発射される音が響き渡った。

よく見れば暴君の姿は体の至る所に小型ミサイルを付けている。

(こいつ全身ミサイルかよっ!!)

「暴君よ!いい加減夢から覚めたらどうです?」

攻撃をやめない暴君の弟に喜撰兄が訴えかける。

「それはこちらの台詞だ!古今少佐に拾ってもらったにもかかわらずその態度、その体たらく、もはや堪忍袋の緒も切れた!

これ以上恥の上塗りをせぬよう、兄弟自ら引導を渡してやる!」

「・・・・・・二階堂さん、戦いましょう!」

「戦うって言ってもお前の弟なんだろう?!大丈夫なのか?」

二階堂の当然の問いかけに一瞬間が空くもすぐに兄は返答を返した。

「あいつは今まで二桁では済まないほどの人間に手をかけ、もはや修羅に入っています。

私が止めなけば・・・いや、私にしか出来ない!」

「・・・わかった、だが武器はどうする?!俺もお前も見たところ丸腰だぞ、まともなものはナイフぐらいだ」

その時、喜撰は手でジェスチャーをした。

それは自衛隊に所属するものにしかわからない合図であった。

(この先に武器があるというのか?だがあの仕草は・・・ここから距離がある合図だ)

二階堂の不安は的中し、喜撰は先程と同じ走る仕草をして見せた。

「・・・また走れっていうのか、ふざけやがって!」

すると喜撰はクラウチングスタートのポーズをとる。

しぶしぶ二階堂も同じ体制を取る。

「どうなっても知らんからなっ、用意―――」

「スタート!」

超小型ミサイル群が打ち上げられた瞬間、二人は駆けだした。

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