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1_81 喜撰(きせん)


NO.11 JUSTICE (正義) 正位置


サーバールーム付近に舞い戻った二階堂を待ち受けていたのは複数のウバメ達だった。

そこには直立不動の金色を帯びた、一際屈強なウバメも二体いる。

自分が来た道を振り返ると既に幾人もの帝国軍人が特別急ぐ様子もなくこちらに迫っていた。

「・・・・・・・・終わった」

二階堂はそう言って脱力すると同時に手に持っていた針銃を足元へ力なく放り投げすてた。

「ウフフ、ふふっふ」

「マジやべー」

「ぷゲラ」

「・・・・・ぬ―――ん!!」

ウバメ達の知的能力はさほど高くないようでまるで幼児が悪態をつきながらはしゃいでいるような声を上げていた。

”二階堂・・・何とか活路を・・・”

”今早急に打開策を―――”

「もういいよ、もう無理だ。データはもう粗方頂いたんだろう?お前らはそれイーノに渡してとっとと”億り人”にでも

なりゃあいいさ。俺はもう無理だ。野郎、どういう訳が俺を苦しめては弄び、死の寸前まで追い込んだかと思えば

”ぶっ生き返す”。俺は色々と人生のツケが回ってきたんだ・・・降参だ」

南山や省吾の心配をよそに既に二階堂の精神は疲弊しきっていた。

「ヌッ殺してやる」

「ボケカス~」

数人のウバメがステップを踏みながら二階堂に歩み寄ってきた。

後方の帝国軍人達も皆涼しい顔で二階堂を見下していた。

”二階堂、動け!動かなきゃどうにもならんぞ!”

南山が騒ぎ出す。

「うるさいこのクズ・・・生きて帰れたらお前の額に12㎜ぶち込んだのに・・・ふざけやがって!!」

”ぶち込みたいなら動け!チャンスはまだ―――!”

言いかけた時に、隣の省吾が南山の手を叩きモニターを指した。

現場の二階堂も何か異質の空気を感じ取ったのか辺りを眺めながら怪訝な顔をする。

「なんだ・・・どうした?」

さっきまで騒いでいたウバメ達がその声を一斉に潜め、動きを止めた。

いきなりその場が水を打ったように静まり返る。

その時後ろの腕章を付けた軍人の一人が高らかに号令を掛けた。

「・・・静粛静粛!ちゅうもーく!全体中央通路空けいっ!二列縦隊にならえ!」

二階堂以外の全員が一斉にサーバールーム前の広く長い通路の脇へ二列で並び始める。

自制が効かないであろうウバメを始め、後ろの帝国軍人達も二階堂など目もくれず、

その脇をすり抜け列に加わってゆく。

「これは、どうしたんだ一体?」

ウバメや帝国軍人は瞬く間に整列をととのえた。

「ぜんたーーい!右向け~みぎぃいい!!!」

一斉に通路中央を向く。

「けいっ、れいっ!」ビシッィィィイイ!

その整った寸分乱れぬ敬礼に二階堂は思わず鳥肌が立った。

通路の真ん中に呆然と立ち尽くす二階堂と対になるような形で通路の奥に異様に背の高い兵が手を後ろに組んで

立っていた。

二階堂が目を細め、凝視する。

「・・・・・」

”誰でしょうか?状況を見るに相当階級が高いのでは”

省吾がモニターを拡大し、何とか奥のシルエットを確認しようとする。

だが南山はおおよその検討が付いているようでモニターから目を離すと片手でこめかみを押さえて言った。

”六火仙で残っているのはアイツだけだ・・・なんてこったこんな時に・・・”

コッコッコッコッコッコッ・・・

ゆっくりと、だがしっかりとした足取りでその長身の帝国軍人は皆が敬礼する中を通り二階堂の元へと向かってゆく。

近づくにつれその長身の体を包む特徴的なマントが目に飛び込んだ。

相手が視認できる距離まで来たところで歩みを止めた。

その両脇を金色のウバメがポーズをとりながら固める。

その軍人の顔を見ればその立派な陸軍帽の奥は大きなサングラスと口だけのガスマスクを付けていた。

「・・・このサングラスが気になりますか?これはGHQマッカーサー元帥の愛用していたモノを譲り受けたものですよ」

まるで氷のように冷たい声が辺りに響く。

「・・・嘘だろ?本物だっていうのか?」

「もちろんですとも、ご本人から頂いたのですから。まあ何本かお持ちしていたようですが・・・」

目の前の帝国軍人は落ち着いた様子で二階堂の質問に答えた。

その時列にいた帝国軍人の一人が二階堂に急ぎ寄ってきたかと思うと

信じられないような力で頭を押さえねじ伏せ、這いつくばらせる。

「ぐはっ!!」

「貴様っ頭が高い!副隊長を前に敬礼もせんとはっ!何たる無礼!何たる非礼!」

「やめなさい、非礼なのはあなたですよ。二階堂さんは”まだ”帝国軍人では無いのですから」

その場が凍てつくようなその声に思わずその兵は身震いし、敬礼をした。

「こっこれはその、た、大変失礼いたしましたぁぁあああ!」

兵は二階堂を無理やり立たせると逃げるように列へと引き換えしていった。


「我が隊の兵が大変失礼いたしましたね。

改めて・・・わたくしは大日本帝国陸軍鍵際師団第一大隊所属・六歌仙隊副隊長、喜撰きせんと申します。

階級の徽章が二階堂さんの陸上自衛隊と少し違うのでご説明しますと、私は中佐になります」

二階堂がそれを聞いて驚いた様子で目を丸くする。

「・・・中佐だって?お前らのボス、古今少佐よりも上の階級じゃないか」

「ええ、少々訳アリでしてね・・・私は主に皆さんの支援に回っているのですよ。お見知りおきを」

二階堂は話半分にそのまま少し黙り込んだ。

南山の情報が無線からくるのを待っているのである。

だがそんなことは百も承知なのか、喜撰はやさしく声をかけた。

「・・・南山さんから無線でアドバイスが来るのを待っているのですね?その必要はありませんよ、私は南山さんの友人でもあるのです。

ねえ南山さん?」

「なんだと南山っ?!本当か?」

二階堂の詰問に少し間をおいて。

”・・・二階堂、俺は―――”

そのとき、プツッっという音と共に無線が切れた。

「?!どうした南山っ、応答しろ!」

「申し訳ありませんが少し無線をオフラインにさせて頂きました。でも心配なさらないでください、すぐに元に戻しますので。

どうでしょう二階堂さん、少し一緒に歩きませんか?ご案内差し上げたいところがあるのですよ」

「お前・・・正気なのか?」

二階堂は腰のナイフを手に牽制した。

その挙動を目で追いながら何ら動ずることもなく虎視眈々と述べる。

「お控えください・・・まあその点のご説明も含めて一旦休戦いたしましょう」

喜撰はなんら態度を変えることもなく冷たい声で言った。

「・・・何かあったら・・・すぐに俺は”殺す”か”逃げる”からな」

鼻からとても敵わないとわかっている二階堂はあえて逃げると付け加える。

「ふふっやはり面白い方ですね、流石今まで死闘を潜り抜けただけはあります。ではいきましょう」

喜撰は敬礼したままの一同など気にも留めずに二階堂を促し、奥へと歩みだした。



しばらく二人無言で歩いた先に大きな漆黒の闇に包まれた中、先が見えないほどの長い一筋のエスカレーターが見えはじめた。

「これに乗りましょう」

「・・・・・」

二人してエスカレーターの階段に一段開けるような形で乗る。

「・・・警戒なさっているのですね、今までの事を考えれば無理もありません」

「・・・・・・・・・・・お前、何者なんだ?」

暫く沈黙したのちゆっくりと喜撰の声が響く。


「私は、古今少佐の敵です」

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