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1_73 在原


ボォオオオオオオオオ!

汽笛が辺りに鳴り響く。

”それ”を眼前で目の当たりにした七三スーツの男は手に持っていた端末を地面に落とした。

ここは地獄と判断した七三は取り急ぎ部下にSUVを回させ我先にと逃げ出したのだが

鳴り響く地響きと地震に慌てて車を停め、社外に出てその光景を目撃したのである。

”・・・・・・・!!・・・・!!”

地面に落ちた端末からは野太い男の怒鳴り声がノイズ交じりに聞こえるがもはや耳に届くことは無かった。

「ふざけやがって・・・・ふざけやがって・・・・コノヤロ・・・・」

ブツブツ呟く。

七三は連なる山々の一つ、鉄の城塞を背に対峙する二隻の”戦艦”に向かって力の限り叫んだ。

「ぷざけるなコノヤローーーーーーーー!!」

七三の心の叫びが届いたのかどうかは解らないが、その陸を悠然と進む戦艦は一斉掃射を開始し、

その流れ弾が七三のSUVに直撃した。


「120㎜主砲、装填完了宜し!!」

「照準良し・・・てぇーーーー!」

在原の陸上小型駆逐戦艦902甲の中央二連120㎜砲がけたたましい轟音と共に火を噴いた。

「続いて薬師丸(対艦ミサイル)、和歌1番2番砲台(対地ミサイル群)水平発射!」

「薬師丸、和歌1番2番、てぇーーーー!!」

その凶弾群は二階堂の902乙に向かって一直線に伸びるが、僅かに艦首をかすめる程度で

直撃には至らなかった。

「くそうっ・・・やはり簡単にはいかんかっ!!」

「敵艦、イージスシステムが作動しておりこちらの照準に狂いが生じております」

在原は砲手担当者に激を飛ばす。

「さっさと早く補正をしろ!無駄弾を撃つとは何事か!・・・とは言え、相手は我大日本帝国陸軍

きっての戦艦・・・その機動力、その雄姿・・惚れ惚れするな・・・」

在原は二階堂の操る902乙が写るモニターを釘いるように見つめ、感嘆の声を上げた。

「それはそうと・・・別動班はどうなっている!!」

「はっ!現在サーバールームへ急行しておりますが、もとより我城塞のセーフルームを兼ねているため

突入に難航しております。現在ソフトウェア面からのアプローチを・・・」

在原は連絡員の肩を強引に抱き、耳元で叫んだ。

「急がせろ!それとだ・・・俺は外来語・・・特に英語が大嫌いだ・・・解ってるよなぁ?」

在原の連絡員の肩に置いた手が食い込む。

「ぐぇえええええ!も、もちろんです在原艦長!アメ公もロ助もチャンコロも美しい我母国語にはかないません!

あくまで便宜上のものです!」

「だよなぁ?!解ってる、うん、解ってるなぁ・・・ならとっとと急がせろ!!」

「は、ははぁっ!」

連絡員が無線で別同班に野次を飛ばす。

「二階堂め・・・できることなら902乙の被害は最小限で押さえたい、なんとしてもあの破廉恥を止めなければ」

在原はそう言って持っていた指揮棒を軽くへし折った。


「生きた心地がしない・・・あの艦砲至上主義が・・・」

”昭和の時代はな・・・主砲こそ最上、なんせミサイルも電子兵器もない時代だからな”

二階堂は遠隔とは言えリアルタイムでVR越しに見る相手の艦砲射撃に恐れおののくばかりだった。

「だがこの目と鼻の先ではあの火力は馬鹿にならん、直撃すればお陀仏だ。まあ、こっちは痛くも痒くもないが

撤退できていない隊員が大勢いる。それにしてもだ、ウバメ連中はマジで何なんだ?!

こちらがキャタピラで薙ぎ払おうがむくっと起き上がるぞっ」

二階堂の疑問に省吾は先程のモニターをプレイバックする。

”必ずしもノーダメージだという訳ではないようです。

現に足を引きずっている連中や動きのおかしい奴、おかしな挙動をし始める奴らなどもいます”

「結局あの”針”しか一番良い致命傷は与えられんというわけだ」

その時今まで鳴り響いていたアラームとは違ったアラームが鳴り響いた。

「何事?!」

”ウバメどもだ、距離がこちらの防衛ラインを超えている!!こちらに一直線に群れを成して向かってくるぞ。

おい省吾、セントリーシステムだ。弾幕を張って足止めしろ”

”撃ってますよさっきから、でもあいつら撃たれてもひるんだり転がり回るだけだし者によっちゃキャッキャはしゃいでるだけですよ”

”18㎜機関砲だぞ?!それでひるむ程度なのか?”

モニターを見ると確かにそれは目標には当たるものの”破壊”には至らず、致命傷など程遠いものだった。

「・・・おいイーノ、こちらの武装を教えてくれ。この艦にはどれぐらい武装が搭載されている?」

”AA18㎜機関砲二基、薬師丸と呼ばれる対艦ミサイルが四基、後は・・・土竜爪・・・対地魚雷デスか?というものが数発、

それと手動操作限定のものが二門・・・向こうの在原の艦よりこちらの兵装は少ないですネ”

映し出される武装の数々を確認しながら最後の手動操作限定のものを見てあっけにとられる。

「これは・・・ふざけやがって、あいつが意気揚々打っていた120㎜主砲じゃないか。なぜマニュアル操作?

馬鹿じゃないのか」

”教えてやろう破廉恥二階堂・・・それは大日本帝国海軍の誇りゆえだ・・・”

突然無線に割って入ってきたのは敵艦の在原の声だった。

「お前・・・古今少佐の六火仙隊のひとり・・・在原か?」

”無線による挨拶を失礼する。お初にお目にかかるな二階堂、いかにも私は古今少佐の右腕・・・

我大日本帝国海軍きっての秘蔵っ子”キ・九〇二甲”を預かる艦長よ”

「在原・・・」

二階堂はVRに映るこちらに主砲を合わせたまま制止した九〇二甲を見た。

”貴様がこれほどの事を成し得たこと、敵ながらほめて遣わす。

仲間を思い、勇諫めよ地の果てまで・・・敬意に値する”

「馬鹿なことをいうんじゃない、お前らはこれまでだっ!北陸連隊がここに集結している、この惨状を見れば

直に国を挙げて師団が来るのも時間の問題だ、おとなしく投降しろ気狂いども!」

”投降?・・・ふふふふふ、ふははははっは、あーはっはっはっはっ!!!!”

在原の高笑いが無線越しに響き渡る。

在原だけではない、その在原周りの兵たちも一緒に笑っているようだった。

”二階堂よ・・・この無線はお前を送り込んだ南山も聞いているな?南山を出せ”

二階堂は軽く舌打ちすると無線に吐き捨てた。

「聞いたか南山?ご指名だぜ・・・指名料はサービスしといてやる」

そういうと二階堂は手元の無線操作をしてこちら側にしか繋がらない仲間の無線をオープンにした。

”・・・・在原”

”久しぶりだな、南山?てっきりお前がここに来るのかと思ったが・・・まあいい、でどうするんだお前?”

”・・・・・・・・”

南山はそれを聞いて無言になる。二階堂がふてぶてしく聞いた。

「どうするんだ諸悪の根源?俺をこの地獄から早く解放してくれるのか?

そして、お前がこの地獄の古巣へ戻ってくれるのか?」

舌打ちしながら南山に突っかかる。

”ツ---バ--は”

”・・・んー、なんだどうした。聞き取れん”

僅かに呟いた南山の言葉に在原は再度確認した。

”古今少佐は撃つといった、だからこそ―――”

”貴様ふざけるのも大概にしろよ!お前などここを出て言って正解だ!総員、作戦変更!目標を撃沈・・・”

在原が高らかに宣言しようとした時、かつて戦時中に流れたであろう不気味なサイレンが鳴り響いた。

「なんだっ?!」

二階堂が叫ぶ。

”オスプレイの大隊ですよっ、数年前に春日と千歳に整備されたばかりのオスプレイが多数接近中!

ヤバいですよっ二階堂さん、至急IFFを―――”

省吾がそう言った矢先、事態を飲み込んだ在原は冷酷な声で号令を掛けた。

”一等通信兵、古今少佐に至急連絡・・・ やばたにえん の許可を求む ”

”や、や、やばにえ―――。りぃ、りょうかいです。復唱します。やばたにえんの使用許可!やばたにえん使用許可を問う!”

辺りが、兵士が、騒然となる声が聞こえる。

「おいなんだ、やばたにえんってなんだ?南山、お前は解るんだろう?!なんなんだ?!」

訳の分からない二階堂が南山に問いただす。

”やばたにえん・・・”

南山は苦渋の声を上げる。

「おい聞いているのか南山!!やばたにえんってなんだ?!」

一呼吸置いた後、南山はひねり出すような声で言った。


”・・・・・・・・・非人道兵器、レーザー兵器だ”


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