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1_45 大伴


「なるほど・・・最初からこれが狙いだったか」

二階堂の着用する、FHSフライングハリアースーツを見ると膝のナンバーは2となっている。

「なんということだ・・・こいつ、最初から俺たちの装備品目当てか・・・なんて奴なんだ。まさかこいつは帝国軍人たる資格が・・・」

3番が呆れた声を出す。

「普通に考えればそうだ、この城塞を抜け出すには俺たちのスーツを奪い取るのが一番いい」

大伴はしきりに感心していた。

装備している左腕のガントレットコンソールを操作し、二階堂が装着していると思われるFHSの無線機に向けて

コンタクトを取る。

「聞こえるか二階堂?馬鹿な真似はやめておけ。そのFHSは我が日本帝国空軍の敵国領地掌握用の強襲兵装だ。

座学がおよそ80時間、基礎訓練に約100時間、適性検査及び試験合格後の実技・実地訓練に約200時間。

それでようやく自分の意図する操縦が可能になり軍事作戦に戦力として投入できる」

大伴に続きハリアー5も警告する。

「今まともに浮かんでいるのはほぼ奇跡だ。俺たちのように空を滑空できるなどまず思わないことだ、二階堂。

まあこのまま自滅して終わるのは目に見えているがな」

ハリアー5は目を細めて蔑むように言った。

そこにはお前のような奴が使えるわけがないという意思表示がしっかりと込められているのが誰が聞いても明らかだった。

だが二階堂はそのまま滑空しながら大伴達を只睨みつけている。

そしてゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・いいんだよ、これで。ただでさえふざけたクソ・・・もう・・・どうにでもなれってんだ・・・なぁ・・・?」

半ば錯乱気味にブツブツ呟く二階堂を大伴は怪訝に思い始める。

「・・・何を言ってる?」

「団長、気をつけろ。こういう時はむやみに近づかない方がいい」

「そんなもん誰だってわかってるハリアー5。3、そこから狙えるか?」

ロングレンジ砲を装備する3に狙撃するよう大伴がジェスチャーを交えて呼びかける。

「大丈夫だ、とりあえずは死なない程度に両足を狙う。生きてりゃ半身不随でもかまわんだろ?」

少し間をおいて大伴は了承する。

「・・・了解だ」

ハリアー3がレンジ砲に付いている電子スコープを除いたとき、二階堂のFHSのアフターバーナーが奇怪な動きをしているのに

気が付いた。

「なんだ?」

「なあ・・・これでいいんだよな・・・頼むぜ・・・・クソみなみやまぁぁぁあぁぁああ!!!!」

”任せておけ!”

二階堂のアフターバーナーが一気に噴射し、はるか上空に目掛け飛翔した。

「な、なんだと?!あり得ない、今まで一度たりとも使ったことのない人間が一直線に飛翔など・・・」

「どういうことだ・・・」

「うろたえるな、近接戦闘に移行する。各機散開しつつ追尾しろ」

「クソッ・・・了解だ」

上昇する二階堂を追いかけて残り3人のハリアー団の両脚アフターバーナーが火柱を上げて飛翔する。

「二階堂っ、くらえっ!」

ギリギリまで距離を詰めたハリアー3のバルカンが火を噴く。

すると、突然二階堂のアフターバーナーが停止した。

「なんだとっ?!」

そして失速したかと思うと身を巧みにひねらせて7と交錯する様にすれ違うように空中回転し、7の背後を取った。

「そんなまさか?!」

「高度技術?ありえん!」

大伴や5が叫んだその瞬間、7のランドセルに無数の穴が開いて火を噴いた。

「ぐぁぁぁぁっぁぁあああ!!!」

無線越しに聞こえる7の断末魔と共に爆発、閃光が走った。

「なぜだ、なぜここまで動ける?!」

5が疑問と共にふととも辺りに装備している超小型ホーミングミサイルを二発発射する。

「くそおおおおおおおおおお!」

二階堂は闇雲に乱射し、ミサイルを何とか撃墜する。

(なんだアイツ?!射撃と飛行のレベルがまるで違う・・・まるで別の・・・)

ハリアー5が二階堂の怪訝な行動に混乱する。

だが思考するうちにやがて大伴がそのトリックに気が付いた。

「・・・そうか、そういうことか。ハリアー5挟み込むぞ、隊長には悪いが生死問わず仕留める」

「大伴団長・・・!?」

「いま二階堂のFHSの操縦をしているのは南山だ。

あいつは基礎訓練といくつかの実地訓練を受けている、大方衛星経由で遠隔操作しているのだろう」

ハリアー5がそれを聞いて目の色を変える。

「・・・二階堂め!大伴め!あいつらはやはり帝国軍人の”風下”にもおけぬ屑中のクズ!

恥知らずとはまさにこのこと、許さん!」

大伴が吠えるとともに加速し、持てる兵装の全弾発射態系をとった。

ハリアー5もそれに続く。

そして上空の二階堂にたどり着いた二人は二階堂に向かって叫んだ。

「「 死ね二階堂! 」」

二人の総火力が二階堂を襲う。

それは二階堂を貫き、弾けさせ、爆ぜた。

爆発とともに激しく黒煙を上げ、轟音が鳴り響く。


上空に広がる黒煙が薄れつつなるころ、それは鳴った。

ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!

「ミサイルアラート?!」

「どこからだ?!」

大伴が驚愕の表情を浮かべながらパイロットヘルメットに表示されるアラートのHUDを追う。

「北西監視塔?!」

視線を向けた時にはすでに遅く、

半壊する北西監視塔で生き残っているミサイル発射台にいつの間にか鎮座していた二階堂は

そのトリガーを引いた。

轟音を発し、飛翔する対空ミサイルはハリアー5と大伴に向かって一直線に加速した。

「なぜだ二階堂?!」

「・・・そうかデコイ・・・こいつ最初からこれが目的で2を、すべては南山---」

そう言い終わる間もなく、二人はミサイルの直撃を受け爆ぜた。

爆発し、墜ちゆく大伴にひとまず胸をなでおろしながら二階堂は半壊している北西監視塔を急いで離れて

この基地最大の建造物へと足を急がせた。

無線から今の二階堂にとって耳障りな声が聞こえる。


”・・・ふふ、貸しだな、二階堂?”

「”返した”の間違えだろう?しかもこの程度じゃ返したうちにも入らんからな!!」

”まあそう腐るな。いそげ、その先に医務室がある建物に入れる”

南山のあっけらかんとした態度に腹を立てながらも二階堂は基地最大の建造物の搬入口へと千鳥足で向かった。


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