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1_42 大伴


二階堂の眼前に浮遊する7人のハリアー団。

その中央、赤いフライトヘルメットを被った兵が拡声器を通したような声で二階堂に呼びかける。

「・・・ほう、最初見た時はくたびれた屑の若造にしか見えなかったが中々観察力記憶力共に優れている。

流石は我が帝国軍属になっていただけの事はある」

「そんなものはもうこの世には存在しない。俺は元自衛官だ」

「愚かなり二階堂。貴様を見ていると日本の没落が身に染みるわ」

赤いフライトヘルメットのゴーグル越しから眼帯と鋭い目つきが二階堂を凝視する。

(こいつは二人いた眼帯の兵士の内の一人、大伴のはず・・・つるんでいた奴はどいつだ?

ここにはいないのか)

二階堂は半ばあきらめかけていたがやはり内に秘める生存本能なのか、少しでも活路を見出そうと

していた。

「フン、貴様をここで葬るのは容易い。だが”事情”が”事情”だけに生け捕るしかあるまい」

「”事情”・・・南山か、出来ることなら俺も聞きたいぜ?なあ南山?何故俺は生きている?いったいお前には何があるんだ」

無線をオンにしつつも明後日の方へ向かって捨て台詞のように問いかける、が

南山から応答はなかった。

そこに。

”二階堂さん、そのまま聞いてください。9時半の方向、ライトを取り付けている監視塔が見えますか?”

省吾が二階堂へコンタクトを取る。

二階堂は周りに悟られぬよう、短く強い息を省吾に聞こえる様に噴いた。

ハリアー団の二人が降下しつつ二階堂に向かってくる。

”そこは裏側から鉄格子で登れるようです。監視塔には機関砲が備え付けてあるようです、それを使って何とか・・・”

(馬鹿を言うんじゃない省吾、ウバメを始めこいつらは銃らしい銃は全く効かない。兵も含めてだ。どうすることも――)

そう思った矢先、事の成り行きを見守っていたイーノが久しぶりに声を発する。

”二階堂サン、ハリアー団を狙ってはどうですカ?奴らを狙えば・・・”

(だから兵も含めて弾は・・・いや待て、兵やウバメは効かない、だがらこそ)

その時、リストバンドがカシャカシャとカードを繰る音を立て始める。

(クソ、こんな時にっ!!!)

ハリアー団は目前まで迫る。

そのときカードが定まり、すぐさまそれを見た。


NO.7 THE CHARIOT (戦車) 正位置


見たと同時に二階堂は監視塔に向かって駆けだした。

「何っ!!!」

ハリアー団は一瞬どよめいた。

一見すると既にボロボロの二階堂のどこにそんな体力が残されているのか。

最早は知る事すらままならない様子にもかかわらず二階堂は再び駆けた。

ウバメの軍勢がいる中へ物怖じすることも無く。

するとなぜか、ウバメ達の中を面白いように二階堂は抜けて行く。

「は、は、はっははははっははは!面白いぞ二階堂。駆けろ駆けろ!」

「オオオオオオオオオオオォ!!!」

二階堂は駆けた。

ウバメの脇をすり抜け、かすめるだけで衝撃波が走るほどのフックやストレートを巧みに避けながら、

縦横無尽に駆け、監視塔へ一直線に駆けた。

ハリアー団の数名も二階堂を上空から追いかける。

だがウバメ達が邪魔で思うように射撃ができない。

「チッ!これだからこいつらの管理はちゃんとしろと・・・」

兵の一人が悪態をつく。

そうしている間にも二階堂は監視塔へたどり着き側面に備え付けられているタラップを凄まじい速度で駆け上がる。

「はっ!はっ!はっ!」

まもなく目的地にたどり着いた二階堂は目の前に飛び込んできた代物に思わず顔をニヤつかせる。

「やった、D51機関砲だ!」

D51機関砲と呼ばれたそれは1メートル近くある全長にライフル弾のベルト弾倉が繋がって無数の弾幕を展開することが出来る

主に車両やヘリなどの小型航空機の対空・対地用マシンガンである。

二階堂はすぐさま床に繋がっているステーから固定ロックを解除してD51をステーから取り外すと両手に持って

監視塔の衝立に身を隠した。

「・・・ほう、二階堂。貴様は先程文屋の禿げ野郎をぶっ殺したらしいがこの俺にも勝負を挑もうというのだな、そうなんだな」

「・・・・・・」

(来るなら来いよこのボケ野郎が!!)

二階堂は答えずとも心の中は戦意に満ち溢れていた。

「・・・いいだろう。おいお前たち、二階堂の勝負に乗ってやれ」

「本気ですか団長?」

兵の一人が困惑した表情で尋ねる。

「最近は訓練ばかりで弛み気味だ。ここいらで実戦経験を積むのもよかろう、解ってると思うが

二階堂に鉛球を食らうようでは貴様らはハリアー団失格だ。心するがいい!」

その大伴のセリフと共にハリアー団の面々は面食らったように息を飲んだ。

「良いだろう二階堂。貴様の勝負に乗ってやる!ハリアー団、迎撃フォーメーション、コンタクト!

あくまで戦闘不能にしてやればいい。ハリアー団の徽章が飾り出ないことを証明して見せろ!」

各ハリアー隊のジェットエンジンが勢いよく火柱を上げる。


「了解しました、大伴中尉!ハリアー2、エンゲージ!」

「やるぞ!ハリアー4、エンゲージ!」

「くそ二階堂!ハリアー3、エンゲージ!」

「・・・ハリアー5、エンゲージ!」

「行くぞ、ハリアー6、エンゲージ!」

「はぁ、ハリアー7、エンゲージ!」

「・・・ハリアー1、大伴、エンゲージ!」


「オオオオオオオオオォ!!!こいやハエどもが!!!」


こうして、二階堂とハリアー団の戦いの火ぶたが切って落とされた。


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