紙飛行機バトラーズ、フライハイ!
世界で最も加熱している競技「紙飛行機バトル」
その大会を紙飛行機バトラーズと呼ぶ。
そこでは技術と戦略、知力、体力が試される。
使用できるのは紙。
一対一の対決で滞空時間の長いほうが勝利となるシンプルなものだ。
己の紙飛行機を使い相手の飛行機を叩き落とすこともルール上可能となっている。
紙飛行機バトラーズの歴史は長く、今年で40周年を迎えていた。
そして今日は紙飛行機バトラーズ日本代表決勝戦だ。
ここで勝てば世界大会決勝戦へ駒を進めることができる。
ドームの観客席は熱気に包まれていた。
青コーナーの神谷研は、手の汗を拭い、紙飛行機「ブルーバード」を握りしめた。
対する赤コーナー来馬瑠花は、愛紙飛行機「ペガスス号」を静かに構え、空を見つめる。
瑠花は滞空時間を競うだけでなく、他選手の飛行機を狙い撃つ戦いに長けていた。
「あなたのブルーバード、大会最速記録で撃ち落としてあげる」
「それはどうかな。俺のブルーバードは名前の通り鳥のように空を舞えるんだ」
研は挑発に乗らず、不敵に笑ってみせた。
「それでは、紙飛行機バトラーズ日本選手権決勝戦、始め!」
審判が旗を振り上げ、研と瑠花は号令と同時に紙飛行機を放った。
ブルーバードは軽やかに宙を舞い上昇していく。
ペガスス号はブルーバードを撃ち落とさんと直進する。
「いけ、落とすのよペガスス号!」
「ブルーバードの装甲は負けない! 父さん直伝の折り方をしたんだ!」
角で突くように飛び込んでくるペガスス号を避けてブルーバードは上昇していく。
「フッ。さすが25回目の世界大会から5回連続優勝した伝説の紙飛行機バトラー神谷昇の息子。でも所詮親の七光りよ!」
ペガスス号は会場に流れてくる風を利用して旋回し、尖先をブルーバードに向ける。
ブルーバードの羽は折り目が頑強でびくともしなかった。
「なんてこと……! 私のペガスス号が!」
ペガスス号はそのまま垂直に下降して地面に墜落した。
「ブルーバードの勝利! 第76回日本大会優勝者は神谷研選手だああああ!」
審判が青い旗を挙げ、ドームに歓声が響き渡る。
研はゆっくり降りてきたブルーバードを抱えて、労う。
「さすが俺の相棒!」
瑠花は悔しそうにしながらも、研に右手を差し出した。
「やるじゃない……来年こそ絶対私が勝つから」
「いいや、来年も俺が勝つぜ!」
研も笑顔を浮かべ、握手をかわした。
こうして日本選手権は幕を閉じた。
研の戦いはこれからも続く。
目指すは世界大会優勝だ。