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都会に疲れた社畜はスローライフを望んでいる  作者: 結城暁


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四日目

 壊人は欠伸をしながら布団から起き出した。

 カーテンを開けると見えたのはどんよりした曇り空で、今にも雨が降り出しそうだ。

 雨が降る前に掃除を済ませてしまおう、と壊人は慌てて身支度を終える。

 朝食も筋トレも後回しに、昨夜のうちにまとめておいたゴミ袋を片手に玄関を開け、そして閉めた。

 壊人はゴミ袋を起き、ため息をついてスマホを取りに戻る。次からはどんな短時間の外出であろうとポケットにいれておくことにする。


「今日は蛇かよ、クソが……」


 玄関に捨てられていたのは蛇の死骸だった。しかも(マムシ)。ぶつ切りにされ玄関が血塗れ惨劇現場になっているので生死は疑うべくもない。

 スマホで証拠写真を撮ったのち、死骸を焼却炉へ捨てた壊人は物憂げな表情で手を合わせた。


「生きてたらマムシ酒にしたのに……」


 血糊のついた玄関も後回しにして、壊人は神社へと急いだ。

 つつがなく掃除を終え、ゴミを出し終えた壊人は空腹を訴えて鳴る腹を宥めながら家へ戻る。


「おはよう、浜さん」

「烏山さん、おはようございます」

「今日も早いね、もう掃除が終わったんだ。……なにか変わったことはなかったかね」


 昨日相談した村民からの「村から出て行け」発言を気にしてくれているのだろう。

 なんていい人なんだろう! と感動で滲む眼をごまかしごまかし、壊人は今朝撮ったばかりの証拠写真を見せた。


「実は今朝も玄関にゴミが置かれてて……」

「……朝から大変だったね、村民を集めて注意喚起をしておこう。もちろん君は参加しなくても大丈夫だから。午後は公民館に近寄らないでくれ、いいね?」

「はい。お手数をおかけします。

 あ、それと雨の日の掃除なんですけど……」


 雨の中で屋外の掃除をするのはさすがにご免だったので、できれば雨天中止にならないかな、と淡い期待を抱いていた壊人だったが、烏山に忘れてた、と鍵を渡された。


「本来なら初日に渡さなきゃいけなかったんだけど、このところ晴れが続いていたから忘れてたよ。雨の日はお社の中を掃除してもらうことになってるんだ。雑巾がけはしなくて大丈夫、軽くハタキをかけて箒で掃いてくれればいいから」

「わかりました」


 そう言ってもらってなんだが、時間は持て余すほどにあるしな、と壊人は雑巾がけもしよう、と決意して鍵を受け取る。そのうち家庭菜園でも始めようか、と雑草がまばらに生えているだけの庭を思い出す。

 今の壊人は移住してからまともに睡眠と食事を取れるようになり、太陽光を浴び、適度な運動もできるようになり、体中に気力が満ち満ちているのだ。

 これなら夏野菜のみならず春夏秋冬、一年中農作業ができるだろう。


「やはり!! 過重労働は!! クソ!!!!!」


 庭の雑草をきれいに取り終えた壊人は吠えた。その魂の咆哮に呼応したかのように空気が冷え、風が強まる。

 遠くの雷鳴に壊人は家の中へ戻った。家中の雨戸を出し終えたころ、ザアザアと雨戸を叩く雨の音が聞こえ始めた。


「もーちょっと早く降ってくれれば、玄関の掃除が楽だったんだけどなー。でも庭の手入れができたしなー」


 一人暮らしをしてから多くなった独り言をぶつぶつこぼしながら壊人は夕飯の鍋をつついた。一人鍋も慣れたものである。

 ふと鍋が好物の妹を思い出す。泣き虫で、引っ込み思案で、怖がりの妹には就職してからもずっと心配のかけ通しだった。


「今度、久しぶりに里帰りでもしようか……いやでもなあ……」


 その日は雨戸のおかげで風の音にも、雷の音にも、雨音にも、野生動物の声にも悩まされずに快適な睡眠ができ、夜は面倒臭がらずに雨戸を出そう、と翌日の壊人は雨戸のありがたみをしみじみと実感した。


 時は戻り、深夜の暗く静かな家の中では、壊人の寝息は暴風にかき消され少しも聞こえない。しかし、雨戸を引っ掻くかそけない音が時おり、奇妙なほど暗闇の中に響いていた。


「オイデ……オイデ……ヤシロニ……オイデ……」

評価、ブクマ、感想に誤字報告ありがとうございます。

とても嬉しいです。励みになります。

今後ともよろしくお願いいたします!

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