4.目が覚めたら待っていたのは号泣とお説教でした
夢うつつ、ずっと誰かに手を握られていた気がする。
目を覚ましたら、実際手を握られていた。
「ベティ!!」
母が大泣きしながら手を握っていた。
後ろにはおばあちゃんの顔も見える。
あー、おばあちゃんも涙目だわー。
あらら、何で泣いているんだろう。
んーと、えーと、何がどうしたんだっけ?
なんて考えている内に、またうとうとと睡魔がやって来て寝てたんだと思う。
次に目を覚ますと、おじいちゃんが居て、やっぱり涙目。
その次はお兄ちゃんで、やっぱり泣きながら手を握っていたわ。
あ、これ、回復魔法を掛けてるのね。
ふと意識が浮上する度に違う顔ぶれで、その誰もが心配そうな顔をしていた。
なにか聞きたいんだけど頭がぼぉっとして、すぐうとうとしてしまう。
そんな事が何回かあった後、強引に起こされた。
「駄目よ、まだ眠らないで! せめてスープだけでも飲んで!」
母が無理やりわたしの口にスプーンを突っ込んできたのには驚いたわ。
具のないスープの次は、優しい味の麦がゆが少し。
うとうとと微睡んでは目覚めた拍子に、無理やり何かを口に入れられ、抱き上げられてご不浄とか、生活魔法の洗浄とか掛けられている。
そして母と兄と、時々叔父ワンコが回復魔法を掛けてくれていた。
こうして献身的な介護を受け、ようやくはっきりと目を覚ましたのが、『俺tueeee!!王子』から威圧を受けて倒れてから、なんと一週間が過ぎていたのよ!
あらあらあらぁ?
あ、第一王子のあだ名ね、『クソ王子』というよりも“厨二病”の『俺tueeee!!王子』の方が自分的に笑えるのでそっちにシフトしたわよ。ふんっ!
今日は、王宮付き医務官の診察を受けてるの。
ウチと契約しているお医者さんもいるんだけど、王家の配慮によるものだってよ。
お医者さんの手配の他に、王家からは謝罪とお見舞い云々のお手紙が来ていたそう。
おじいちゃんは直で王様に会い、慰謝料とかの話もしてきたとか。
ただ、残念ながら、婚約者候補の件は保留にされたって。
なによ保留って。現状維持って事ぉ!?
わたしは王子様の玩具じゃないんですけどぉ!
「ずいぶん良くなっていますよ。回復魔法使い三人が、毎日少しづつ回復させていっているおかげでしょう」
どうやらわたしは、『魔力器官』に酷い損傷を受けていたそうだ。
圧倒的な魔力差のある相手から威圧を強く掛けられ、それに対抗しようとしたのがいけなかったみたい。
限界を超えてフル稼働して、オーバーヒートしたって感じ?
この体内にある『魔力器官』という臓器は、大変繊細なんだって。
損傷したからって回復魔法で一気に治すと、元通りに魔法を使えなくなったり、使えても以前の半分ほどの魔力しか扱えなくなったりと、弊害が大きいそうだ。
だから、魔力の相性の良い相手から、少しづつ回復魔法で修復するのが一番良いという。
相性の良い、というのは身内って事で、母と兄と叔父三人が交代で回復魔法を掛けてくれてた訳ね。
この診察してくれているお医者さんも回復魔法の使い手だけど、診るだけで魔法は使わない。赤の他人だから。
それだけデリケートな器官なんだってよー。
魔力を持つ人間は、常に体内に魔力を巡らせているらしい。
わたしがずっと眠っていたのは、その魔力を作る器官が傷を受けて十分な魔力が行き渡らないから、体を眠らせて回復を待つという、本能的なものなんだってさ。
「わたしが完全に治ったと判断する時まで、絶対に! 絶対に魔法を使ってはいけませんよ!!」
すごい念を押して帰って行った中年のお医者さん。
そしてこの件では、おじいちゃんからも厳重注意を受けた。
「少し治って来ると、つい魔法を使いたくなるし、実際使った奴がいてな?
治りかけの器官の傷を悪化させて、そいつは二度と魔法が使えなくなってしまったんだ。
そんな風になりたくないだろう? だから言う事を聞いて、絶対に魔法を使うなよ!」
おじいちゃんが強面を更に凶悪にして言い聞かせて来たから、ただひたすら首を縦に振った。
折角全属性の魔法が使える筈なのに、もし使えなくなったら泣くに泣けないわよぉ!
それからまた一週間後、徐々に起きていられる時間が長くなって来た頃、なんとキリアン卿のお見舞いを受けたの。
あらあら、母に会うついでのお見舞いかしら。
「いや、ベアトリス嬢のお見舞いだよ。それと、当時の状況説明と、後は……お説教、かな」
「え?」
「第一王子殿下のような、ずば抜けて魔力量が多い相手には、真っ向から立ち向かってはいけないよ」
これまで一話4,000文字前後で更新して来たんですが、他の方の投稿を見てみると、大体2,000文字以内なんですよね。
一話が軽く読める分量なのかなぁと、今回から少し文字数少なめの更新を試して行こうと思います。
この話で約1,800文字です。少なっ!
たまたま、ここがちょうど良い区切りだったんですよ。




