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一つ、お尋ねしてよろしいですか?  作者: アキヨシ
第一章 我が家のごたごた編
15/35

15.異世界転生者あるある?

 

 上下水道完備に、蛇口からは水とお湯が出る仕組み。

 水洗トイレと浄化槽。

 魔導通信機は映像と音声を。

 魔導車は電気自動車の如く二酸化炭素を排出しない。

 後、細かな所では冷蔵庫、冷凍庫、冷暖房機、洗濯機にドライヤーなど。

 これらは地球の人が知識と技術を提供したとしか思えない代物だわ。


 もしかしたら食事の方も色々無双した人がいるのかもしれないわね。

 ふわふわとした白いパンに、各種調味料を駆使した美味しい料理の数々。

 スィーツだって極端に甘くなく、日本で食べていた同じようなお菓子もたくさんあるのよねぇ。


 ああ、そういえば鉄道がないみたい。

 ただねぇ、あれって国を挙げての公共事業にしないと無理だわよね。国の中心から端まで線路を引くだけでも大変。

 各領地の領主との話し合い、どこを通すか下調べ、山があったらトンネルを掘り……わたしが思い付くだけでも問題山積みだわ。


 これじゃあ、道を整備して大型の魔導車を走らせる方が簡単だと、先人も思ったのかもしれないわねぇ。

 もっとも、鉄道を導入しようなんて事になっても、わたしは一切の知識も技術も持ってないし。


「なるほどそうか」


 ん? 思い巡らしていた事に、おじいちゃんから返事が返って来たわ。


「口に出ていたぞ?」


「あら。これは失礼しました。でも、そういう訳で、お役に立てる事はないと思います」


 頷いているおじいちゃんは、特に残念そうでもない?

 叔父ワンコの方がちょっとがっかりしているみたいだわ。いや、期待されてもねぇ。


「政治的なものや、思想なんかはどうだ?」


 急に高尚な方面へ話題を振って来たおじいちゃん。えー、そう言われてもぉ。


「わたしは一般人、庶民でしたので、政治の難しい話は出来ませんよ?」


「大体でいい」


 そんなに聞きたいもの?

 そういえば、神の恩寵スキル関係の書物に、異世界の国の仕組みや政治体系の話がなかったかも。なんでだろ。


「そうですねぇ、まず、わたしが住んでいた日本では、身分制度がありません。全国民が平民って感じでしょうか」


「え!? それじゃあ、誰が国を統治するんだい?」


 おっと、いきなりワンコが食いついて来た。


「国民が代表者を選挙で選んで、その選ばれた人たちが政治を行います。衆議院と参議院に分かれていて、衆議院で可決した事案を参議院に送り、そこでも可決すれば決定です。

 あ、そうそう、その選ばれた政治家たちがまた投票して、国の代表、『首相』を決めます。

 首相と参議院議員、衆議院議員たちで国の舵取りをしている訳です。統治、ではないですね」


 天皇家の存在はちょっと特殊だから、何と説明すればいいのやら。いや? 大体でいいって言うんだから、これくらいでいいかな。


 ――と思ったのに、色々質問され、結局地方自治体の事や、人口や、国の理念というか憲法の事まで話しちゃったよ。

 貴族家の当主は為政者だもんね。気になるんだろうなぁ。


「王も貴族もいない世界か……」


 思わし気に呟くおじいちゃんに、追加情報を。


「いない訳ではありません。世界全体で見ると、大きな国では身分制度を廃止していますが、王と貴族が現存する国もまだあります。

 ただ、それらの国でも政治に介入してません。とある国の女王が、『君臨すれど統治せず』と宣言した事は有名でした。

 多くの国々が、君主制から民主制に変わりましたので」


「みんしゅせい?」


「はい。君主、まあ国王ですか、一番身分の高い者に権力があり、国を統治するのに対し、民主は民が主体の政治体系です。

 先ほど話した通り、国民が代表者を選出して国の運営の舵取りを任せるというものですね」


「婚姻も血統を重んじないという訳か」


「そうですね。日本でも昔は“血筋を継ぐ”という事に重きを置いていた時代もありました。“家名を継ぐ”という言い方でしたけど。

 最近は個人の意思を尊重するようになって、好きな者同士で結婚してますね。“継ぐべき家”というものが無くなってしまったからでしょうか。

 それでも“旧家”と呼ばれている家の血筋の方々は、存続させる事に重きを置いていると思います。でも、そういう家筋の方たちも平民ですけどね」


「血統重視の婚姻や身分制度を煩わしいと思うか?」


 おじいちゃんがこちらを窺うような目つきで訊く。

 うん? これってさっき聞いたような……。


()()()は面倒だなぁとは思いますが、否定しても仕方がありません。

 ()は君主制のガルディアス王国の貴族として産まれたのですから」


 そう答えると、ほっと息を吐くおじいちゃん。もしかして、ラウレシアさんの事を引きずってるのかな。てゆーか、そっちを確認したいわ。


「お祖父様、ラウレシア……伯母様? ですが、もしや……」


「いや、あれには御印はなかった」


 おじいちゃんに食い気味に言われちゃった。

 でもさぁ、わたしだって分かり難い所にあったじゃん。


「そもそも、ラウレシアは子供の頃はいたって普通の娘だったんだ。

 おかしな事を言い始めたのは、あの従僕を雇い入れてからだったと、後から思い付いたんだ」


 おかしな事ってねぇ。わたしは“変わった子供”認定だけど。


「その従僕がもしかしたら、と疑っているのですね?」


「そうだ。その方が辻褄が合う」


 おじいちゃんの説明ではこうだ。


 その彼は没落した貴族出身の平民。

 家が没落したのも、二代前の当主の時代、災害に見舞われ、復旧と復興の為に莫大な借金を背負ったせいだという。

 知り合いから紹介され、身辺に問題はないので通常通り雇用した。

 真面目に働くし、元貴族という事でマナーや教養もある。それで下働きから従僕へとすぐに昇格したそうだ。


 ラウレシアさんには専属侍女もメイドもいたけれど、剣術の稽古で訓練場に出入りするなら、従僕が一緒の方が都合がよく、それで彼を専属に付けたという。

 年齢が近いせいか馬が合うようですぐに打ち解けたのはいいけれど、妙に気安くなっていたので注意をした事が何度かあったそうだ。


 その内段々と、おじいちゃんやおばあちゃんの言う事に反発しだして、終いにはアンチ君主制みたいな事まで言い出したとか。うわぁ。

 従僕の彼が地球の人だったら、耳障りの良い自由を掲げていたら、感化されてしまうかもしれないわねぇ。


「ベティもそうだが、“神の恩寵”があると自ら告白する者はまずいないようだ。

 本人がそうだったか、あるいは誰かから聞いて感化していたかは、今はもう確認しようがない」


「そうですね」


「これかは関係があるかどうかは分からんが、最近、『身分制度を廃止し自由を』というスローガンを掲げる者がいるという噂がある」


「ああ、僕も聞いた事がありますよ。そういうスローガンを掲げた者たちが地下活動を行っている、なんて噂話でしたが」


 ええ、いきなり不穏!!

 “大志を抱け”なんて格言が向こうにはあるけどさぁ。


「こちらの国や周辺国に『言論の自由』を保証していたりは……はい、しませんね。君主制の国でそれを否定する言動は『反逆罪』になったりします?

 それに自由なんて、人それぞれに目指す自由がありそうですけど。とにかくちょっと軽薄な気がしますわ」


「“軽率”ではなく“軽薄”なのか」


 と、おじいちゃんが訊くので言わせて頂きます。

 悪役令嬢モノのラノベなんかで、異世界転生者のヒドインが「自由と平等」を履き違えて墓穴を掘って断罪されたのを思い出すなぁ。


「ええ、そのスローガン、どうも薄っぺらいように感じますの。

 国の政治体系を変えるという一大事なら、権力の中枢にいる者や専門家を交え慎重に議論を重ね、時間をかけて行うべきではないでしょうか。

 それを同好の士を集めて地下活動だなんて、どこのレジスタンスですか!?

 もし同じ転生者が行っているというのなら、捕まえて正座させて小一時間説教したいですわ!」


「ぐふっ、説教か。ふっ」


 そこ、なんで笑うのよ! ワンコも!


 とにかく、そういうのを言い出すのって、情熱のある若い連中じゃないのかしらね。

 おばちゃんは今の現状で、“より良く”を目指したいわぁ。


 ああ、でも、わたしが知らないだけで、平民がかなり虐げられているとしたら、「打倒王家! 打倒貴族! 身分制度の廃止を!」と革命を起こしたくなるのかもしれない。


 平民の現状を知らな過ぎたわ。外出しても貴族街だけだし、平民街にも行ってみたいって言ったら、警備面がどうとか色々宥められて未だに実現してないのよねー。

 仕方がないから、平民の使用人たちに話を聞く位しかなかったわ。


 あっ! そういえば肝心な事を伝えてないじゃない!


「そういえば大事な事を言ってませんでしたわ。

 地球ではそもそも『魔法』が使えません。魔力がないのです。

 世界を構成する基本が違うのですから、地球の事をそのまま当て嵌めるのには無理がある様に思いますの」


 目を瞠るおじいちゃんとワンコ。


「は?」


「魔力が、ない?」


「ええ。血統重視の婚姻は、高い魔力と属性を引き継がせたいからでしょう?

 魔法のない世界の転生者が『血統重視の結婚なんておかしい』、と言っても根底の意味合いが違うのですから、同意を得られるとは思えませんわ」


 ちょっとフリーズした二人。

 魔法が、魔力があるのが当たり前の世界の人には、それがない世界を想像出来ないのかも。


「地球は『科学技術』で発展した世界です。道具を動かすのは『電気』で、その『電気』を造るのは化石燃料を燃やしたり、風や水の力を利用したりします。

 つまり外部のエネルギーが必要になります。

 でも、『魔法』は人が内包している『魔力』があってこそ。

 外部エネルギーは魔石ですが、これも人が魔力を補充していますし、えっと、何と言えばいいのか……そう、“世界の理”が違うんです。

 ですからね、それを同一の理論に当て嵌めるのは暴論だと思うのです」


 “血統”というから貴族の問題だと勘違いされがちだけれど、実は平民にだって関係があるのよ。

 “血統”というより“魔力の質と量”の話で、平民でも魔力があるから、結婚するなら相手との“魔力の相性”が問題になる訳。


 結婚して契りを結ぶと、相手の魔力の影響を受けるのね。それなのに相性が悪かったら、酷い頭痛と吐き気に襲われ、体内を巡る魔力が安定せずに暴走する事もあるんだとか。怖いわよねぇ。


 夫婦の子供を産みたいなら、お互いの魔力量も大事ね。差があり過ぎると妊娠出来なかったり、下手すると母体に悪影響が出てしまうんだってよ。

 だから貴族の結婚はそれらの事を慎重に調べるのよ。それを“血統主義”って揶揄されてるんだと思うわぁ。


 あれぇ? 例の従僕、元貴族だよね。そういう事情、知らなかったのかなぁ。




事情説明ばっかり長々と続き、第一章が終わらない~( ̄Д ̄;

次のお話辺りで何とかまとめたい所です。

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