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突然の乱入者

 てっきり厄年のことを言われるのだと思ったのに、なぜ、今、お見合いをすることになるのだろう。実家に帰ってから結婚のことを言われたことはないのに。雷鳴坊と父親の間でどんな密約が交わされたのだろうか。

 自分を置いて進んだ話しに、美澄が戸惑いを示すと、雷鳴坊が優しげな笑みを浮かべた。

「急に言われても美澄さんも驚かれるだろう。うちの息子の太郎坊と見合いをしてはどうかと思ってね」

「厄年は……その」

「ふむ。美澄さんの厄年は強いが、それに耐えられる胆力が貴女にはあるから大丈夫だろう。まぁ強いから周りにばらまきがちというのもあるが」

「それはどうにかなりませんか?」

「うちの息子と見合いをすればいい」

 やっぱりそこに落ち着くのかと、美澄が肩を落とす。

 雷鳴坊の息子というのは自分の厄を引き取ってくれたりするのだろうか。それなら見合いする価値もある気がする。

 見合いなど今まで避けてきた。かといって、このドがつくレベルの田舎で独身男性を見つけるのも至難の業だ。

 結婚したくないわけではないし、人並みに憧れもある。

「どうかな? 美澄さん。太郎坊は私に似てイケメンですぞ」

「はぁ」

 やはり鼻は大きめなのだろうか。

 だがイケメンというのは気にかかる。

 弟の航平だって悪い顔ではないが、いかせん地元を出たことないからか、田舎臭さが抜けていない。

 東京に出たことがあるのなら、それなりに垢抜けているかもしれないし、話しも合うかもしれない。

 これは好物件なのではないだろうか。

 そこまで考えて美澄は、相手が天狗の息子だということを思い出した。

 天狗の息子は天狗。

 自分は妖怪の嫁になるのだろうか。

「あの……」

「なんですかな?」

「息子さんも、その、天狗なんですか?」

「まぁそうですな。だが、私の妻は人間なので、ハーフということになりますな!」

「ハーフ……」

 妖怪にもそういう呼び方は通じるらしい。

「お待たせしました」

 そうこうしているうちに美也がアイスコーヒーを3つ持ってきた。

 美澄の前に置き、雷鳴坊と父親の飲み干されたグラスを交換していく。そうして一礼して去ろうとした美也に、雷鳴坊が声をかけた。

「美也。何度も悪いが、太郎坊を呼んできてくれないか?」

「かしこまりました」

 そう言うとするすると美也の首が伸び、受付の奥へと入っていく。

 まだ見て二回目だけど慣れないなと美澄が思っていると、するすると美也の首が戻ってくるのと同時に、受付の奥からスーツに法被を着た一人の青年が出てきた。

「まさか、お見合いって今からですか!?」

 お見合いと言えばそれなりの格好をしてお互いの両親とやるものだと思っていたが、父親たちの中ではそういうわけでもないらしい。

 思わず叫んだ美澄に、2人の父親は笑い合う。

「こういうのは縁ですからな」

「どうせ会えるんだから、善は急げというだろ」

 それならもう少しまともな格好をしていたと嘆いてももう遅い。匂いだけでも消してきてよかったと切に思った。

 太郎坊の顔が見えるくらいに近づいたとき、大きな声がラウンジに響きわたった。


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