俺の父が、大好きな幼なじみの母親をレイプして捕まった。 それから俺は・・・後編(高校編)
よろしくお願いします。
前編・中学編の感想、高評価、ブックマークありがとうございます。
これも楽しんでいただければと思います。
4月2日、元町高校をアポ無く訪問した。
対応してくれた教頭に、今までの経緯を正直に打ち明け、
寧々、賢、井上伸一と別のクラスにしてくれるようにお願いした。
それから、祖母が体調を崩して働けなくなっていたので家の窮状を訴え、
アルバイトをさせて欲しいと頼んだ。
★★★
入学式当日。
不安を覚えながらクラス編制を見たら、教頭に直訴した甲斐あってか、
俺の8組にはあの3人はいなかった。
初めて教室に入って、「おはよう。」って笑顔で挨拶すると、
初対面のみんなが「おはよう。」って笑顔で挨拶を返してくれた。
久しぶりに同級生と普通の会話を交して感激してしまった。
だけど、すぐに賢がやってきて、意地悪な笑顔を浮かべながら俺を指さした。
「みんな、この椎名直樹ってヤツなんだけど、
父親がレイプ犯で刑務所に入っているんだぜ。
コイツも頭がおかしい、ヤバいヤツで、
暴力は振るうし、カッターナイフを振り回して、脅したりするからな。
特に女の子は気をつけろよ。」
みんなの注目を一身に浴びてしまった。
俺に対する好奇心は無くなって、嫌悪と警戒心を感じた。
なにを言っても無駄だと諦めてしまい、反論はしなかった。
それからは誰も俺に声をかけてくれなかった。当然だよな。
他に友達になりたいと思うヤツはいっぱいいるんだから。
★★★
入学して2週間経過して、登校すると机に落書きがされていた。
きったない字で。
「レイプ野郎」「死ね」「来るな」「変態」「殺人犯」・・・
途方に暮れた表情を作って軽くこすってみたけど
油性マジックで書かれているようで全く消えなかった。
進学校だから大丈夫かなって思っていたけど、やっぱり一緒だった。
感情が理性を超えてしまうバカはどこにでもやっぱりいるんだ。
自分だけが絶対の正義と信じるバカが。
ため息をついてから辺りを見回すと、みんながこちらを注目していた。
そのうち、男子2人がニヤニヤしていた。いつも騒がしいヤツらだ。
近づいて行くと、その男子2人はニヤニヤしながら立ち上がった。
「なんか用か?」
油断しきっているソイツをいきなりぶん殴った。
そしてバランスを崩して倒れたソイツを蹴りまくった。
「止めてくれ!俺じゃない!止めてくれ!」
慌てて止めようとしてきたもう1人は1発殴ると大人しくなったので、
倒れている奴を再度、蹴りまくった。
「俺じゃない!止めてくれ!悪かった!」
その言葉にではなく、疲れたので蹴るのを止めた。
「お前ら二人、俺の机、綺麗にしておけ。」
さっきまでニヤニヤしていた男子2人は怯えた表情で立ち上がり、
小走りで教室を出て行った。
静まり返った教室を見回すと、怯えたヤツらと敵対心溢れるヤツらと二種類いた。
「誰がやったか知らないけどさ、そんなの関係ないからね。
レイプ犯の子どもだからってみんなして俺をイジメているんだからさ、同罪だよね?
やるなら覚悟しておけよ。」
一人ずつ睨み付けると、みんな目をそらしていた。
男子2人が必死に俺の机を磨いている途中に、先生がやってきて、
俺たち3人は事情聴取され、俺だけ3日間の自宅謹慎となった。
それからは祟り神のように扱われた。
近寄らない、触らない、声掛けない、やむを得ず関わり合うときは丁重にっていうヤツ。
それで充分。
★★★
あれから4度目のクリスマス・イブ。
夕方になって俺は1人、ハーバーランドのクリスマスツリーをぼーっと見ていた。
すごく綺麗で、その周りにいる人たちはみんな幸せそうだった。
うらやましかった。
高校に入って、何か変わるんじゃないかとやっぱり期待してしまったけど、
何一つ、変わらなかった。
友達どころか、挨拶を返してくれる同級生すらいなかった。
俺の方から、もっともっと同級生に歩み寄るべきだったのかな?
色んな噂を流されているみたいだけど、「レイプ犯の子ども」って言う、
動かない事実があるから、否定してもしょうがないって諦めていたけど。
「親の罪は子どもに引き継がれない。」って正論を叫び続ければよかったのかな・・・
早く、遠くの大学に行ってこの街を出て行きたいわ・・・
そろそろ帰ろうかと思っていたら、寧々と賢が笑顔で、手を繋いで現れた。
逃げだそうとしたけれど、2人に見つかってしまった。
俺を見て寧々は眉をひそめたけれど、賢はイヤらしい笑みを浮かべた。
そして、寧々をぐっと抱き寄せ、強引にキスをした。
周りに人がたくさんいるからか、寧々は最初嫌がっていたけれど、
すぐにうっとりとした表情となってぎゅっと抱き合っていた。
寧々のことなんてもう好きでもなんでもないけど、うちのめされてしまった。
★★★
高校2年になった。
クラスのヤツらに毎日笑顔で、「おはよう。」って言ってるけど、
だれも挨拶をしてくれることはなかった。
寧々、賢、井上伸一、1年の時ぶちのめしたヤツらとは別のクラスだったけど、
選択科目の世界史でだけ、寧々、賢、井上伸一と同じクラスになってしまった。
警戒していたんだけど、「レイプ犯の子ども」とか何とか悪口を言っていたくらいで、
実害はなかったので放っておいた。
★★★
10月になって、高校で初めて友達が出来た。
およそ4年半ぶりで、初めてスマホに友達を登録したよ。涙!
これまでは母、祖母、バイト先の店長の3者だけ。
あれ?なんで、スマホなんて持っているんだろ?
高校に入って初めての友達の名は柳田実幸。
背が高く、髪はセミロング、丸いメガネの奥は優しい瞳、目元には泣きぼくろ、
肌は白く、笑顔がとっても優しい人だ。
バイト先で、実幸の妹が同級生に万引きのえん罪をかけられそうになったのを
防いだことで実幸にお礼としてファミレスで晩ご飯を奢ってもらうことになった。
正直、何かのトラップかと滅茶苦茶疑っていた。
だけど、初めて同級生にファミレスに誘われ、
また陰のない笑顔で誘われたから断る事なんてできなかった。
店に入ってすぐに、実幸にお礼を言われ嬉しくなって、「レイプ犯の子ども」ってことを
知っているか聞くことが怖くなってしまった。
食べ終わっても、しばらくグズグズしてから、ようやく勇気を出して
「レイプ犯の子ども」は事実だよって伝えたんだけど、
「親の罪は子どもに関係ないよね。」って優しく微笑まれた。
その言葉、その雰囲気に、そのファミレスにはたくさんのお客さんがいたのに、
号泣してしまった。
ずっと、聞きたかった言葉だった。
だけど、誰も言ってくれない言葉だった。
罵詈雑言にずっと耐えてきた涙腺が、実幸の優しい一言であっけなく崩壊していた。
実幸は慌てて俺の隣にきて、優しく背中を撫でてくれた。
それでも家に帰ったら、信じたら、信じすぎたら駄目だと思った。
もう、近寄らないようにしようって。
それなのに、また実幸に誘われると、すぐに肯いていた。
その優しさに容易く魅了されていたんだ。
実幸と学校の外で、2度目に会った時、初めて具体的に聞いたんだけど、
俺の噂は各種色々取りそろえられていて、
「レイプ犯の子ども」、「ロリコン」、「下着泥棒」、「寧々のストーカー」、「熟女好き」、
「ゲイ」、「露出狂」、「はあはあ言ってるキモ男」、「通り魔」などがあるって教えられた。
そんな俺と2度も二人っきりで会ってくれたんだと、凄く嬉しかった。
それから毎週のようにお出かけしていて、実幸の好意を感じるんだけど、
お互い告白とかはしていなかった。
その関係が壊れるのが怖かったんだ。
★★★
11月になって、実幸と学校の中庭で、初めて一緒に弁当を食べた。
この高校の敷地内で、初めて幸せを感じたよ。
その次の日、井上伸一から呼び出しを受けた。
井上は身長185センチくらい、イヤミな性格で、俺を率先して貶めているヤツだ。
井上は実幸に片思いをしていたんだ。
俺と良い感じになっている実幸に、焦って告白してフラれ、
その場で俺を罵倒しつくすもんだから、実幸も井上を罵倒してしまったそうだ。
それを聞いてまた、胸が熱くなってしまった。
俺も実幸を守るんだと固く誓った。
体育館の裏で待ち構えていた井上は怒り狂っていた。
「おい、レイプ野郎。」
その気持ちは分からんではないけど、八つ当たりもいいとこだよ。
「俺はレイプなんてしていない。」
「ぶっ殺してやる!」
すぐにキレた井上のパンチを額で受け止めたら、
目から火花が散って、たたらを踏んでしまった。
「あああぁ!」
拳を痛がる井上のふくらはぎに、態勢を立て直してローキックをぶちかますと、
井上は悲鳴を上げて転がり、大げさに痛がっていた。
追撃で何発か蹴りつけると、井上は叫んだ。
「悪かった!許してくれ!」
チョロい。
「・・・許して欲しいなら、ふさわしい態度や言葉があるだろ?」
井上をもう1発、全力で蹴ってから優しく伝えると、
井上は呻いてからのろのろと土下座した。
「今までイジメてすいませんでした。もうしません。許してください。」
「誰が、誰に、どんなことをしたのかな?具体的にね。」
井上によると、俺のネガティブキャンペーンをこの4年間、陰日向無く続けていたそうだ。
そのしつこさだけは、大したもんだよ。
当然、その一部始終を動画で撮っていたので大満足だった。
さあ、どうしてくれよう?
いつでもアップ出来るんだぞって、卒業するまで圧力をかけ続けてやるか!
★★★
世界史の授業が終わり、先生がいなくなるとすぐに賢が大きな声を出した。
「暴力を振るって脅かすって最低だな!」
賢、寧々、井上やその取り巻きが俺を睨み付けていた。
同じく、世界史をとっている実幸は俺を心配そうに見つめていた。
「先に井上に殴られたから、やり返しただけだよ。」
あきれたように手を大きく広げて答えると、怒り顔の賢が近寄って来た。
「井上を晒すための動画を撮ったそうだな。最低だな、お前。」
「デタラメで俺を貶め続けて、レイプ犯の息子って4年もイジメ続けるお前が最低だ!」
初めて俺がまともに反撃したので、賢は一瞬だけ戸惑ったけど、
猛烈に再反撃してきた。
「犯罪者の子どもなら責任はあるに決まっている!」
「じゃあ、犯罪者の子孫は未来永劫、犯罪者ってことか?
じゃあ、罪を償うってなんなんだ?お前、バカだろ?
100歩譲って、被害者が言うならまだ分かるけど、お前は全く関係ないだろ!」
ずっと、ずっと、ずっと、思っていたことを叩きつけた。
「俺は関係者だ!」
怒り狂った賢は絶叫した。
どういう意味だ?
教室にいるみんなの戸惑っている雰囲気が伝わってきた。
その雰囲気に慌てた賢は言葉を続けた。
「俺は寧々のカレシなんだから関係者だ!」
賢の思惑と違い、教室中の困惑がさらに深まっていた。
「えっと、寧々がレイプの被害者ってこと?」
誰かが呟くと、慌てて寧々が「違う、違う!」と絶叫した。
中学の同級生ですら、レイプの被害者が寧々の母親だって知らなかったのに。
ようやく失言に気づいた賢は落ち着かせようと寧々の背中を撫でた。
チャンスだ!
俺は冷静に、でも大きな声でみんなにアピールした。
「賢、お前、ホントに最低だな。
自分だけがそんなに可愛いのかよ。」
賢は悔しそうにしたものの、何にも言い返してこなかった。
勝った!
そう、思った。
「最低なのはお前だ!お前がいなかったら、お母さんはレイプされたりしなかった!
お前のせいだ!お前の親のせいだ!全部、お前らが悪いんだ!」
怒り狂った寧々が俺を指さし、罵倒し続け、俺は敗北感に蝕まれた。
★★★
12月の期末試験が終わった。
あれからも、何にも変わらなかった。
だけど、あれからも実幸は俺と関わってくれた。
笑顔を見せてくれてホントに嬉しかった。
それだけで幸せに感じ、実幸との未来を考え、希望が持てた。
寧々は相変わらず賢とべったりとしていて、俺を憎悪していることを露わにしていた。
そんな寧々を見て、賢は俺をあざ笑っていた。
そして、夜遅い22時に会おうって、賢に公園に呼び出された。
4年前、同じ日にあったレイプ事件の公園だ。
20分前について、ベンチの側で警戒しながら待っていた。
時間ぴったりに賢がニヤニヤ笑いながら歩いて来た。
「懐かしいだろ?寧々と3人でよく遊んだよな、この公園で。」
賢はリラックスしていて、暴力を振るうカンジではなかったので、
少し緊張が解けてきた。
「暗いからよく分からん。で、こんな時間になんの用?」
「面白いこと教えてあげようかなって。スマホだせよ。
録画、録音しなかったら、教えてあげるからさ。」
賢が穏やかに手を差し出してきたので、少し悩んだもののスマホを差し出した。
「あ~、やっぱり録音してるじゃねーか。
まあ、こんな夜遅くに呼び出されたら不安だよな。」
賢はニカッと笑って、録音を停止して、俺のスマホをベンチに置いた。
「知ってるか?あそこなんだぜ。」
賢はニヤニヤしながら、茂みの奥を指さした。
「・・・何が?」
「くふふ。寧々のオバサンがレイプされた所だよ!」
「な、なんでそんなこと知っているんだ?」
賢の笑みが俺をバカにするものから、もっともっと不吉なものに変わった。
「くふふふふふふふ。」
「なんでだよ!」
武器なんて持っていないし、ただ薄ら笑っているだけなのに、賢が怖くなってきた。
「俺はさあ、ちょうど4年前のこの時間、この公園で素振りをずっとしていたんだよ!」
「!!!事件を見ていたのか?なんで止めなかったんだよ!」
賢の目が暗く輝き、口角が上がっていくと不吉さがマックスとなった。
そんな賢が滅茶苦茶怖かった。
「くふふふふふふふ。ぎゃはははは!
お前はホントにバカだな!見てたんじゃねーよ!
俺がヤッたんだよ!
俺がレイプしてやったんだよ!
ベロベロに酔っ払って、肩を組んだ2人が千鳥足で通りかかってさ、
お前のバカ親父の足がもつれて、2人とも倒れたんだ。
後ろから金属バットで頭を撫でてやるとさ、2人とも気絶しちゃったんだよ!
オバサンのパンツが見えて、ムラムラしちゃってさ、
脱がしてぶち込んでやったら気持ちよくって、腰振りまくったらすぐにイッちまって!
あ~、カッコ悪い、黒歴史だ、ぎゃはははは!
目が覚めたら、お前の親父、一気に酔いも醒めたみたいで、
オバサンに謝るとすぐに逃げ出しやがって!バカだよな!
それで、自首しちゃったんだろ?ホントにバカだよな!ぎゃはははは!」
言葉は分かる。だけど、理解が出来なかった。全く。
「なんで・・・」
「なんでって?面白そうだから?
あのままだったら、寧々がお前のものになりそうだったから?
面白かったよ、お前らの家族が滅茶苦茶になってさ!
周りのヤツらがお前らをイジメまくってさ!
犯人は俺なのに、デカい顔で被害者を守ってさ!最高だよ!
寧々を手にいれるのに時間がかかったけど、その時間がまた楽しかったんだ、これが!
それに、あいつ、結構イヤらしいんだぜ、今度動画撮って見せてやるよ!
あと、俺がレイプしたせいで自分たち離婚までしたくせに、
寧々のオバサン、俺に寧々をよろしくって言うんだぜ!
お前らも、アイツらもホントにバカだよな!
楽しかったよ!あ~、最高!」
賢は自分の言葉に酔いしれ、舞台俳優のようなオーバーアクションを見せた。
「くそっ!なんで今頃?じゃあ、親父は無実なのか?」
「ぎゃはははは!お前の言うことなんか、誰も聞かないからだよ!
お前が騒いだって、無駄だからだよ!
証拠なんて、なんにもないからな!ぎゃはははは!
みんな、お前より俺を信じるんだよ!
ざまあみろ!俺をバカにしやがって!
調子に乗るんじゃねーぞ!
こんど、調子に乗ったら、メンバー集めてボコボコにしてやるからな!」
打ちのめされた俺を見て、賢は激情に酔いしれながら立ち去っていった。
★★★
3日後、世界史の授業が終わると、1人の女子が周りに声をかけた。
「ねえ、冬休みにこのメンバーで集まろうよ!」
「いいねえ。」
賢や寧々、井上やその他のメンバーも集まって、肯いていた。
「じゃあ、行きたい店のホームページ送るから見てね!」
みんなはスマホを取りだし、それをすぐに見に行っていた。
店のホームページなんかじゃなくって、あの3日前の賢の自白シーンが流れた。
あの日、賢との待ち合わせまで、時間がたっぷりとあったので、
ビデオカメラを買って、ずっと早い時間に公園に行って、
こっそりと設置していたんだ。
何食わぬ顔で、20分前に、もう一度公園に行ったんだ。
スマホが取り上げられるのは想定済みだよ。
まあ、てっきり大勢から袋だたきに遭うのかと思っていたけど。
これまで父を呪って、恨んで、嫌っていたことへの後悔で
滅茶苦茶打ちのめされたけど。
動画を見て賢は体をブルブルと震わせ、同じ言葉を呟いていた。
「なんで、なんで、なんで・・・」
寧々は髪の毛を手でぐしゃぐしゃにかきむしって、叫んだ。
「嘘でしょ、嘘よ、うそ、嘘、嘘、いや~!」
寧々の叫びに、賢は「違うんだ!」といいながら近づこうとしたんだけど、
「近寄らないで!」
寧々は近寄ってきた賢を突き飛ばした。
周りのみんなが賢を睨み付けていた。
寧々と井上伸一でさえも。
「違う!」
動揺した賢は絶叫して、教室から逃げだそうとしたので、立ち塞がってやった。
「てめえ!」
俺を見た賢の言葉は強かったけれど、怯えた様子は変わらなかった。
俺はニヤニヤしながら、スマホの画面を見せた。
「この動画はそのうち、警察に持って行ってやるからな。
あと、うちの両親は別々に、民事でお前を訴えるってさ。楽しみだな!」
「くそっ!」
「あとさ、住所、名前、生年月日を入れて見やすいように加工して、
ウェブにあげてやるからな。一生モンだぜ、やったな、お前!」
賢の顔が絶望に染まり、肩を落として俺を避けて逃げ出した。
★★★
あれから5度目のクリスマス・イブ。
俺は1人でハーバーランドのクリスマスツリーを見ながら、
この激動の3日間を思い出していた。
賢を嵌めた後、すぐにウェブにもアップした。
賢の行いのチラシを作って、賢と寧々の周辺の家にポスティングした。
賢が両親とともに、我が家へ謝罪に訪れた。
3人とも顔は青ざめ、動揺が隠しきれなかった。
当然、門前払いしたけれど。
これまでずっと俺を無視していた何人かの同級生が謝ってきた。
当然、表面上だけ受入れた。
学校生活は変わらなかったけど、俺が見る景色は明るくなっていた。
そして、一昨日の夜、また賢に呼び出された。
あの公園で、賢がたった1人、金属バットを持って、
イライラしながら待ち構えていた。
「あれ、メンバー集めるって言ってなかったっけ?
友達、いなくなっちゃったの?」
スマホで動画を撮りながら、からかってやると、
「殺してやる!」
たちまち沸騰した賢が金属バットを振り上げた。
俺が逃げだそうとすると、賢は金属バットをぶん投げてきたんだけど、
間一髪躱して走り出した。
しばらく走ってから待ち構えると、賢はゼエゼエ言いながら、
ポケットからカッターナイフを取りだした。
「おいおい、危なすぎるだろ?」
「クソが、殺してやる!」
カッターナイフを突き出してきたので、
ポケットに準備していた砂を手に取り、賢の顔にぶつけた。
砂が目に入って痛がり、動揺した賢を蹴り飛ばしてやった。
賢は倒れながらもカッターナイフを闇雲に振り回していたので、
回り込んで体を蹴って、蹴って、蹴りまくって闘志を失わせた後、
気絶するまで頭を蹴りまくってやった。
すぐに警察に通報して、賢を逮捕させたんだけど、
正当防衛を超えている、やり過ぎだって滅茶苦茶叱られた。
気分爽快で、全然、堪えなかったけど。
★★★
ハーバーランドのクリスマスツリーがいつもよりキラキラ輝いていた。
たぶん、気分の問題だけど。
たくさんの人がそれを見て、楽しそうに、幸せそうにしていた。
「直樹!」
呼びかけに振り向くと、固い笑顔を浮かべた寧々が近づいて来て、深々と頭を下げた。
「あの、ゴメンなさい。今まで酷いことをしてすいませんでした。」
「しょうがないよ。俺も含めて、みんな父が悪いって思い込んでいたからね。」
「あの・・・」
さらに寧々が話しだすと、違う声が俺を呼んだ。
「直樹!」
実幸が俺と寧々を見比べて不安そうな顔をしていた。
「実幸、来てくれてありがとう!アイツとは偶然に会っただけだよ。」
俺は笑顔を浮かべながら、すぐに実幸に駆け寄ると、
実幸はホッとして笑みを浮かべた。
「待って!」
焦った寧々の声が聞こえたけど、実幸より優先するものなんて、何もないから。
それに、寧々なんてどうでもいいし。
それまで、帰る間際に伝えようと思っていたけれど、今、伝えることにした。
少しでも早く実幸の不安や気がかりを払拭して、ずっと幸せな気持ちでいて欲しいから。
ああ、ドキドキする。
精一杯の笑顔を浮かべて、声を張った。
「実幸、こんな俺と友達になってくれてありがとう。
ずっとへこみ続けていた俺を励ましてくれてありがとう。
大好きです、俺と付き合ってくれませんか?」
周りの好奇の視線を思いっきり浴びていたけれど、
実幸は頬を染めて俺をまっすぐ見つめ続けてくれた。
「うん、喜んで!」
実幸の顔は滅茶苦茶真っ赤になったけど、嬉しそうな笑顔が広がった。
「やった!」
嬉しすぎて、思わず実幸を抱きしめてしまった。
「ちょっと!恥ずかしいよ!」
とか言いながらも実幸も俺を軽く抱きしめてくれた。
幸せがぐっと俺の体を満たした。
ずっとこのままいたいけど。
「ありがとう!」
何とか体を引き離してお礼を言うと、笑顔の実幸はスマホを取りだした。
「ねえ、クリスマスツリーをバックに写真撮ろうよ!」
実幸と肩を寄せ合って、何枚も自撮りすると実幸はすぐに見せてくれた。
どれもこれも満面の笑顔の二人が写っていた。
「俺って、こんなに笑うんだ。」
写っている自分の笑顔にびっくりして呟いてしまった。
「その笑顔、最近はよく見せてくれるようになったよ。
最初は超ぎこちない愛想笑いばっかりだったけど。
よく頑張ったね、エラい、エラい。」
実幸の目尻が下がって、ますます優しそうな顔になって、
俺の頭を優しくナデナデしてくれた。
くすぐったかった。嬉しかった。
「小学校の頃の写真は全部、こんな顔だったんだけどね。
こんな写真、超久しぶりだよ!ありがとう、全部、実幸のお陰だね。」
「ううん、私が直樹のホントの笑顔を見たいだけだよ。」
嬉しすぎて少し涙がこぼれてしまった。
「ありがとう!ヤバい、ディナーを予約しているんだ。行こうか!」
笑顔で手を差し伸べた。
「うん!どんなお店なの?」
実幸と手を繋いで、幸せすぎてフワフワしながら歩き出した。
読んでくれてありがとうございました。
面白ければ評価をお願いします。
あの人の自白は回転寿司での動画の公開とかで見られるおバカな自己顕示欲からアリかなと。
警察関係、その他も色々と適当なご都合主義ですね。
エンターテインメントとしてお楽しみください。
感想はとても嬉しいですが、なにとぞお手柔らかにお願いします