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第17話 兄弟

拙い作品ですが、読んでいただけると幸いです。


 よろしくお願いします。

話によるとこうだ。恐田と神主は旧知の仲らしい。昔、恐田が神主に誰にも言えない悩みを相談した際、彼は的確にアドバイスをしてやったそうだ。当時、傷ついていた恐田は大いに感謝した。そのこともあり、いつしか恐田は神主に対し尊敬の念を抱くようになっていった。その感情はやがて憧れへと変わっていき、恐田は次第に神主の容姿を模倣するようになった。その結果が神主のモヒカンと同じヤンキーカテゴリーに属する天山カット(ネット参照)であり、他にはアートメイクも模倣した。憧れの対象の真似をする行為は皆誰しも過去を思い返せば一つや二つ出てくるものだ。あの恐田にもそんな時代があったということか。当時の恐田に憧れるのを止めましょうと言ってやりたかったが、今となってはもう遅い。

 で、その恐田と神主が知り合うきっかけとなったのが、5年前世間を賑わせた強盗放火連続殺人犯のニュースだ。丁度齢50を過ぎようかという頃の話だろう。犯人に容姿がそっくりだった恐田はマスコミや警察に追い回され、奴は心身共に疲弊しきっていた。そしてある日逃げるように近所の神社に駆け込んできたということだそうだ。そして奴はありがたいアドバイスをもらったのだ。絵馬に願掛けをなさいと。

 そして恐田は書いた。

【どうか世間からの誤解が晴れますように   

               恐田怖一】

それから一年余りの月日が流れた頃、恐田の疑いは晴れた。DNA鑑定の結果がシロだったことはワイドショーでもすぐに報じられ、既にその頃世間の恐田への興味は薄れていたこともあり、あっという間に恐田のことを噂する者はいなくなった。

 恐田は歓喜した。あの神社本当にご利益あるんだと感動し、神主を崇拝するようになっていったらしい。このことは恐田本人が神主に嬉しそうに話していたとのことから信憑性は高いようだ。

 その後、一度世の中からされた仕打ちを上手く自分の中で消化できなかった恐田は結果的に今回の犯行に及ぶ流れになったということか。フンが言っていた一番近所の神社を選んでお百度参りしたという情報も正確にはそうではなく、信頼していたからこそ野俱祖のぐそ神社を選んだということだろう。

 更に驚くべき情報も手に入った。信じたくないが恐田と神主は何と五分の盃を交わしていたのだ。それを聞いて彼が思わず兄弟……と呟いていたことも納得できた。

やはり神主は向こう側の人間ということか。向こう側というのは勿論、恐田側という意味だ。だとすると、どう切り崩していくべきか。……恐田のやっていることは悪だ。それは間違いないだろう。いくら恐田と旧知の仲といっても神主は恐田の悪事を知れば今後の付き合いを改めるかもしれない。改めるかも……しれない……。

 ここで一つの疑問が生まれた。そもそも神主は本当に恐田の悪事を知らなかったのだろうか? 神主のここまでの話しぶりだと恐田が能力者だということは知らなそうだった。ましてやその能力を利用し、僕にとてつもなく酷いことをしでかしたなど知るよしもない感じだ。だが、直接本人にそのことを質問して確かめたわけじゃない。しかし迂闊に訊くのもリスクがあるな……。

 僕は神主の方に目をやった。恐田のことを一通り話し終えた神主はソファの上で膝を抱えウンコ座りをしてくつろいでいる。

 「‼ ちょっと神主さん!不謹慎じゃないですか‼」

 その光景を目の当たりにし、カッとなった僕は思わず神主を怒鳴り付けた。

 「え? 不謹慎……どういうことだい?」

 アホの極みみたいな表情で神主が訊いてくる。僕は苛立ちながらも相手が理解できるよう具体的に指摘してやった。

 「いやだって……! 茶色いソファの上でウンコ座りって……それもう僕への当て付け以外考えられないじゃないですか!」

 「いや知らないよ! そもそもソファが茶色いのは君の家の都合だろう!」

 神主がプロゲーマー並みの反射速度で反論してきた。そして更に神主の応戦は続く。

 「どっちかといったら私に対する当て付けじゃないのか!? そのソファが茶色いのは! いきなり汚物を宅配便で送り付けた君のことだ。やりかねんよ!」

 「いや元々ありましたから! わざわざ神主さんが来ること見越して急遽用意したりしませんよ!」

 水掛け論の応酬が続きいよいよ嫌気がさしてきた僕はとうとうヤツのことを洗いざらいぶちまけた。

 「元はといえば貴方の兄弟が仕掛けてきたのが事の発端なんですよ!」

 「兄弟? 私は一人っ子だ!」

 「めんどくさいなあ! さっきウチの担任と昔、五分の盃を交わしたって自分で言ってたじゃないですか!」

 「だったら何だっていうんだ!?」

 「いやだから兄弟分ってことでしょ! オソレダブリドリは!」

 「はあ!? 何で彼と盃を交わしたら知らない鳥が急に兄弟になるんだ!? 訳が分からないよ!」

 勢いあまってオソレダブリドリという僕の心の中でひっそり付けていた奴のあだ名を初めて外部の者に公表してしまったがもういい。このまま突っ走ってしまおう。僕はそう決心した。

 「オソレダブリドリはトリ(・・)を名乗ってても霊長類ヒト科なんですよ‼」

 「何だそれ!? 本当にそんな珍しい生き物がいるのかい!?」

 「いますし、珍しくも何ともありませんよ! だってうちの学校に生息してますから!」

 そう言い終えると一瞬また西川きよしが顔を覗かせた。

 「凄いな君の学校‼ でもそんなのマスコミが放っておかないだろう!?」

 「放っておかないだろう(・・・)じゃなくて実際に放っておかなかったんですよ! 強盗放火連続殺人の疑いを掛けられましたからね!」

 それを聞いてか神主の額から汗が滴り落ちた。

 「君……それってもしや……!」

 長かった……。ここまで本当に長かった。ようやく核心に迫れるようだ。僕は間髪入れずとどめを刺しにいった。

 「そうです! 恐田怖一のことですよ! 奴があなたの神社で得た能力のせいで僕は糞漏らしの汚名を着せられてるんです! そして命の危機も……! あなたにウンコを送り付けたのも全てそれらが関係してるんですよ!」

 今の話を聞いて開いた口が塞がらなかった神主はしばらくしてから一言呟いた。

 「きょ……強大……!」

 その意味が僕はよく分からなかったが、きっと恐田の恐ろしさとかを表してるのだろうと勝手に解釈したのだった。

短編の連載形式です。不定期更新となります。


 この度はお読みいただき、ありがとうございました。

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