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18years  作者: 田中タロウ
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第1部 第8話

「廣野」家の玄関、というかもはや一つのホール、に足を踏み入れると、

さすがに冷や汗をかいた。


そこにはたくさんの人がいた。


携帯片手に忙しく動き回っている人や、ソファーでくつろいでる人、

なにやら小声で話し合っている人・・・


一見して、ヤクザと分かるのもいる。

だが、俺が怖かったのは、「ごく普通の人間」に見える人がほとんどだったということだ。


いかにもヤクザ、って感じのヤクザは怖くない。

いや、怖いけど警戒できる分、怖さは半減する。


でも、全くヤクザに見えないヤクザ、というのは本当の意味で怖い。

街で会っても分からない。

分からないまま普通に接していて、後で「実はヤクザでした」なんてことが、

本当は一番怖いんだ。


知らず知らずのうちに恨みを買っているかもしれないから。


その代表例が俺の斜め前を歩く、コータさんとか言う奴だ。


タクシーを降りる時、よくよくこのコータさんを見てみると、

スーツの襟にバッジが付いていた。

ヒマワリを思わせる花の中心に天秤が描かれた、誰でも知っているあのバッジだ。


なんなんだ、こいつは。



靴を脱いで、更にコータさんの後をついて行く。

別に「ついて来い」と言われたわけじゃないが、

ついて行かざるを得ない雰囲気がかもし出されている。


一休さんが掃除に困りそうなくらい長い廊下を進む。

もうここまできたら「どうにでもなれ」という心境だ。


そうだ、明日はサナとデートの約束だ。

果たして俺は無事に帰ることができるのだろうか・・・

ふと、冷静になってみたりする。


と、コータさんが足を止めると、ようやく口を開いた。


「ここで待て。・・・ってなんか勝手に連れてきたけどよかったのかな・・・」


おいおい。

勝手に連れてこられた身にもなれ。


コータさんは一人、襖の向こうに姿を消した。

が、数秒後、すごい勢いで同じ襖が開いた。


「組長!」


俺の後ろを歩いていた坊主とピアスが、深々とお辞儀をする。


しかし俺の耳には二人の言葉も何も聞こえなかった。


食い入るように目の前の人物を見つめる。

目の前の人物も俺を見つめる。


周りも水を打ったように静かに俺達二人を見つめる。




そうか、後20年くらいしたら、俺はこんな顔になるんだな。




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