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18years  作者: 田中タロウ
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第1部 第7話

あんた、誰ですか?俺をどこに連れて行く気ですか?


と、気軽にヤクザに聞けるほど、俺は度胸が無い。

(母さんなら聞きかねないが)


しかも5人乗りのタクシー。


助手席に「コータさん」。

後部座席の右端に坊主、真ん中に俺、左端に鼻ピアス。


あれ?

黒スーツは?


どうやらビールに濡れたまま、居酒屋に放置されたようだ。

ひでえな、コータさん。

ビール掛けたの俺だけど。



ともかく男の乗客4人(内、3人ヤクザ)のタクシーは、

色んな意味で濃かった。。。


俺はかろうじて居酒屋のエプロンを外して、シートに身を預けて真っ暗な外の景色を眺めた。


どこに連れて行かれるかわからないが、楽しい所じゃないことだけは分かる。




先ほど俺を見て驚いていたコータさんとかいうヤクザ(?)は、

今は押し黙り、じっと前を見ている。


どれくらい走っただろう。

タクシーはいつの間にか閑静な住宅街に入っていた。


まだ東京の地理に疎い俺だが、

高級住宅街であるだろうことは、その雰囲気でわかる。


ふと気づくとタクシーの左の窓に暗闇の中、土壁が見える。

その黒い土壁はずーっと先まで続いている。

首だけ振り向いて後ろをみると、後ろにもずーっと続いていた。


嫌な予感がする・・・



程なくしてタクシーがスピードを落とした。

そこにはもう土壁が無かったが、かわりに散弾銃でも防げそうな黒い鉄の門が姿を現した。


その門の前には門番らしきヤクザが5人。



「ありがとう」


さすがにビビッているタクシーの運ちゃんに、

コータさんは1万円札を数枚渡して、ツリも受け取らずにタクシーを降りた。


かっこいい・・・

いつか俺もこんなことやってみたい。

一生無理だろうが。


そんなことを考えている間に、俺もタクシーから押し出される。



う〜ん、ヤクザの総本家ってやつか?ここは。


なんで俺がここに連れてこられたんだ。

実はこの黒い門の奥はテレビ局で、「ドッキリでした〜」とかないかな。

ここは東京だもんな、なんでもありだよな。



そんな俺の淡い期待もむなしく、


「お帰りなさいませ!」


という門番達のコーラスと共に開いた黒い門の奥には、見事なまでの日本庭園が広がっていた。



かかと落とし、じゃなかった、しし落としだったか。

こんなもの生で初めてみた。

広い池の周りには灯篭が並ぶ。

木の名前はわからないけど、松と桜と紅葉(今は青いから楓か)だけは分かった。


すげー、ここでお花見も紅葉狩りもできるな。


こんな立派な眺めを前に、

維持費だけで、相当かかるだろう・・・なんことが最初に頭に浮かぶのは

貧乏人の悲しい性だろう。


そんな庭園を横目に石畳を進む。


そこには純和風の堂々たる3階建ての建物が。

そこで俺は初めてこの「家」の名前を知った。


でかい木製の表札には

「廣野」

と記されていた。

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