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18years  作者: 田中タロウ
6/109

第1部 第6話

黒いスーツに金のネックレス、一名。


金髪に耳と鼻にピアス、一名。


丸坊主にダボダボジャージ、一名。


計、3名様。

全員20代前半と言ったところか。


俺がビールシャワーをプレゼントしたのは、こともあろうに黒スーツだった。



「責任。どう取ってもらおうか?」


凄む黒スーツ。


後の2人はニヤニヤしながら煙草をふかしている。


他の客と店長と店員は固唾を飲んで成り行きを見守っている。

って、おい。店長。助けろ。


「このスーツ高いんだよなあ」

「はあ・・・クリーニング代をお支払い致します」


確かこういう風に対応しろと、マニュアルにあったような。


「ふざけんな!!!」


そうだろうな。



黒スーツは俺と同じくらいの身長。

体つきも結構がっしりしていて、まともに殴られたら痛いだろう。


でも、俺も空手には自信がある。

こんな奴に負ける気はしない。


問題は、「(ヤクザとは言え)お客に粗相した店員」と言う立場で大立ち回りをしていいのかどうか・・・


いや、ダメだよな。

落ち着け、俺。

謝り通すんだ。

クビになったら困る!




「おい、どうした」


トイレにでも行っていたのか、「4人目」が登場した。


お。なんかちょっとまともかも。


少し長いが、髪は真っ黒できちんと整えられている。

身長は170センチくらい、歳は30そこそこか。

深いブルーのスーツだが、黒スーツの奴と違って品がある。

ネクタイもきちんとしている。

キリっとした眼つきで、うん、なかなかのイケメンだ。


その他3人が一緒でなければ、エリートサラリーマンに見えるだろう。

どうもこいつがボスキャラらしい。


そう判断した俺は、黒スーツをすかさず無視し、エリートリーマンに向かって頭を下げた。


「私のミスで、こちらの方のお召し物を汚してしまいました。大変申し訳ありません」

「ふーん」


俺は顔を上げてなおも続ける。


「クリーニング代をお支払い致しますので・・・」

「!」


?なんだ??

エリートリーマンの顔が凍りつく。


「あの・・・」

「お前、岩城っていうのか?」


自分の胸元を見る。

指定のエプロンに手製のネームプレートがつけてあるのだ。


「はい、そうです」

「岩城・・・蓮?」

「はい」


と、答えてもう一度ネームプレートをみる。

あれ?

ネームプレートは苗字だけだぞ。


「蓮・・・」


エリートリーマンが青くなったり赤くなったりしている。


「コータさん、こいつのこと知ってるんですか?」


ピアスが不思議そうに訊ねる。

残りの二人も同じように不思議そうな表情だが、

一番腑に落ちない顔をしていたのは俺だろう。


誰だろう、こいつは?

ヤクザに知り合いなんているはずがない。

実は、やっぱりこいつはヤクザじゃないのか?


俺が一生懸命記憶のページをめくるのもお構いなしに、

「コータさん」と呼ばれたエリートリーマンは、

俺の腕を引っ張って、


「来い!!!」


と、店の外まで連れて行き、俺をタクシーに押し込んだ。



動き出したタクシーを店長達とお客達が呆然と見つめているのが、

チラっと見えた。


タクシーは瞬く間に夜の街を駆け抜けて行った・・・。




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